
カテゴリー: ビジネス・経済
連載: THAIBIZ NOW
公開日 2026.01.09
昨年11月、タイ最大級の工業団地・物流開発企業であるWHAグループは、バンコク市内にて日系メディア向けに特別セミナーを開催した。従来「中国企業の誘致」に注力してきた印象のあるWHAグループが、改めて日本企業誘致に戦略的価値を見出し、明確なメッセージとして発信することが狙いだ。地政学的リスクが高まる中、信頼性の高いパートナーとして日本への期待が高まっている。

同セミナーには、タイ投資委員会(BOI)ナリット長官のほか、在タイ日本国大使館の大鷹正人大使、日本貿易振興機構(ジェトロ)、国際協力機構(JICA)、株式会社国際協力銀行(JBIC)、日本政策金融公庫(JFC)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)など、日本政府系機関のトップが一堂に会し、日タイ経済連携の深化を象徴する場となった。
同セミナーではBOIのナリット長官から、2023年のタイへの投資申請件数が過去最高を記録したことが紹介された。日本・米国・中国・台湾・韓国など主要国からの申請が軒並み増加しており、タイへの外国直接投資(FDI)はかつてない活況を呈している。
2025年1〜9月期におけるBOI投資申請額は1兆3,745億バーツ(前年同期比+94%)、うち9,853億バーツ(+82%)が海外からの申請だ。
特にデジタルや半導体分野については、Amazon、Microsoft、Googleなどの世界的ハイパースケーラーによるデータセンター建設ラッシュが続いており、地場大手の国営タイ石油会社(PTT)とハナ・マイクロエレクトロニクスの合弁による半導体上流工程への進出など、半導体製造の裾野拡大も進行中である。
また、BOIが紹介した投資事例には、ローム、パナソニック、ソニー、東芝、フジクラ、ニデック、ミネベアミツミ、ダイキン、三菱電機、キヤノンなど、多数の日本企業の名前が挙がった。
過去3年間(2023〜2025年)の累計投資申請額で、日本は 2,047億バーツ(第4位)。上位は1位:シンガポール(8,647億バーツ)、2位:中国(4,921億バーツ)、3位:香港(3,610億バーツ)、5位:米国(1,265億バーツ)となっている。なお、シンガポール経由での申請の中には日本企業のグローバル子会社を通じたものも含まれることから、実質的な日本のプレゼンスはさらに高い可能性がある。
申請が多い日本企業の主要産業分野(過去5年)は1位:電気・電子機器(994億バーツ)、2位:石油化学・化学(703億バーツ)、3位:自動車・部品(686億バーツ)。さらに、国際ビジネスセンター(IBC)分野では、過去10年間の486件中180件以上が日本企業(約38.5%)であり、ダントツの首位(2位シンガポールは6.6%)となっている。
同セミナーでは、デジタル・人工知能(AI)、半導体、バイオ・循環型・グリーン(BCG)、脱炭素・資源循環、食品、医療、宇宙産業など、自動車以外の成長分野にも焦点が当てられた。
従来、日本企業は「人口規模」「GDP」「経済成長率」「賃金」などのマクロ経済指標を基に進出先を選定してきたが、今後は各国の「国家アジェンダ」や「重点産業分野」に基づく新たな評価軸が求められる。まさに、「量から質」への転換の時期に差しかかっているといえる。
今回は日本とタイが再び互いの可能性を信じて手を取り合う転機となった。THAIBIZは今後も、「タイにおける新たなビジネス機会」を深掘りし、日本語でわかりやすく発信していく。海外展開を検討する日本企業には、単なるコスト・人件費だけではない「産業軸」での戦略的な判断を期待したい。

Mediator Co., Ltd.
Chief Executive Officer
ガンタトーン・ワンナワス
在日経験通算10年。2004年埼玉大学工学部卒業後、在京タイ王国大使館工業部へ入館。タイ国の王室関係者や省庁関係者のアテンドや通訳を行い、タイ帰国後の2009年にメディエーターを設立。日本政府機関や日系企業のプロジェクトをコーディネート。日本人駐在員やタイ人従業員に向けて異文化をテーマとした講演・セミナーを実施(講演実績、延べ12,000人以上)。


米中対立の今、タイが選ばれる理由 〜WHAの新・共創戦略〜
対談・インタビュー ー 2026.01.09

タイ経済2026、構造転換の「停滞」を打破できるか 〜 ザ・スタンダード経済フォーラム2025年
特集 ー 2026.01.09

セキュリティ対策の基本「特権ID管理」を見直し、ASEAN拠点の経営を強化 〜日本国内シェアNo.1のPAMツールiDoperation、タイでも導入可能に〜
DX・AISponsered ー 2026.01.09

タイ、日本企業誘致へ再注力 – WHAグループが日本に向け、タイ投資戦略セミナーを開催
ビジネス・経済 ー 2026.01.09

2025年モーターエキスポに見る中国勢の最新動向
自動車・製造業 ー 2026.01.09

取引競争法(2)
会計・法務 ー 2026.01.09
SHARE