ArayZ No.77 2018年5月発行知的財産 最新情報(後編)
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カテゴリー: 会計・法務
公開日 2018.05.21
ミャワディコンプレックス内に入ると、まず目に付く建物がカジノである。建物の中まで進むと、昼間から多くのタイ人・中国人とみられる人々がギャンブルに熱中していた。100バーツ紙幣のほか1000バーツ紙幣の束を片手に金銭のやり取りが頻繁になされており、比較的高額な賭博が行われている様子が窺えた。カジノ内の天井周辺にはエアコンが所狭しと設置されていたのがとても印象的であった。夜には大勢の客でごった返し、室内が猛烈に暑くなるからであろう。
カジノを出て中央広場まで歩いてみると、DutyFreeショップ、バー、コンビニ、カラオケなどのお店が並んでいる。奥まった位置にはホテルも完備されていた。注目すべきは、中央広場の川沿いに渡し船の乗り降り場があって、渡し船が頻繁に行き来していることである。ミャンマー人ドライバーによれば、カジノを楽しもうとタイ人・中国人がタイ側からミャンマー側へ自由に行き来しているほか、ミャンマー人がタイへの出稼ぎのために利用しているとのこと。確かにミャンマー側からタイ側へ越境しようとする渡航者の中には、これから出稼ぎに行くのだろう、未成年とも思えるミャンマー人の若者が交じっていた。もちろん、パスポートのような渡航証明を提示している様子もなく非合法な越境手段である。
双方の停まり場には軍用銃を所持した軍人が待機していた。国境警備軍(BGF:Border Guard Forces)と呼ばれる、もともと反政府武装組織であった人々だ。カレン民族同盟(KNU)と呼ばれる組織で、2012年にミャンマー政府との停戦協定に合意している。現在は、同政府から実効支配地域の暫定的自治が認められているとのこと。非合法な渡航を黙認していることから裏の顔がありそうである。
△カジノ店内の様子
△表向きはDiscount Shopの看板が掲げられている
中央広場よりもやや下流に進むと、貨物をタイ側からミャンマー側へ運んでいる様子が見られた。注意深く見てみると、人が冷蔵庫を頭上で支えながら運んでいる。メーソート・ミャワディ国境を合法的に通過するためには友好橋を利用する必要があるが、いくつか存在するこのような密輸ルートを利用すれば、正規よりも安価な関税を国境警備軍に対して支払うことで貨物を運搬することができるようである。またドライバーによれば、冷蔵庫や洗濯機のような家電製品、自転車や二輪車、自動車用部品などが頻繁に運ばれているとのこと。確かに現場で運搬されている様子を目撃した。そのほか、タイ側からミャンマー側へ大量の砂糖袋を運んでいる姿を確認したほか、ミャンマー側からはレアメタルなどの金属資源をタイ側へ運んでいる姿を確認することができた。
国境警備軍がメーソート・ミャワディ国境の沿岸を実行支配しているところ、密輸を黙認するところ、カジノやバーなどの施設を運営し、タイ人・中国人らの非合法な渡航を斡旋しているところをみると、こうした闇市場から得られる収益が彼らの活動資金源となっているのであろう。タイ側もミャンマー国境警備軍のこれら行為に対し手出しできていない様子である。
以上、メーソート・ミャワディの正規国境では、貨物を運ぶトラックが頻繁に行き来していることもあって、税関職員がわざわざ貨物を開梱して模倣品・海賊版が輸入・輸出されていないかまで監視している様子は見られなかった。また、正規の国境周辺の沿岸エリアでは密輸が横行していたことから、冒頭で述べた通り、「陸路を通じた国境では模倣品・海賊版を差し止めることが難しい」という現状を目の当たりにすることとなった。
一方で今回の収穫としては、タイ・ミャンマーともに国境から暫く進んだところで「税関によるチェックポイント」が複数設けられていることが分かり、同チェックポイントでの貨物検査を強化することで、今後の模倣品・海賊版の差し止め増につながるのではないかと感じた。
△タイ側からミャンマー側へ冷蔵庫を密輸している様子
△密輸された冷蔵庫や洗濯機
模倣品・海賊版が氾濫しているここタイで、知的財産の保護、活用が高まることを日系企業は期待していると思う。自社のブランド、デザイン、技術そして企業ノウハウを単に守るだけでなく、どのように積極的に活用していくべきか、実務の一助として頂きたい。
最後に繰り返しになるが、もしも「権利を取得したい」、「模倣品が出回っているようだ」などのアセアン知財に関連した問題が発生した場合には、早めに現地法律事務所のアドバイスを受けることをお勧めする。その際、法律事務所のコンタクト先が分からない、法律事務所に行く前に問題点の整理をしたい時は、ジェトロバンコク知的財産部を積極的に活用して欲しい。
△密輸された自転車など
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THAIBIZ編集部
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