強い危機感を持つ駐在員と現地に根付いた専門人材 変革チームで新規事業を切り拓く

THAIBIZ No.162 2025年6月発行

THAIBIZ No.162 2025年6月発行激動するタイ市場を走破せよ! 三菱自動車が挑む日本のHEV最前線

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    強い危機感を持つ駐在員と現地に根付いた専門人材 変革チームで新規事業を切り拓く

    公開日 2025.06.10 Sponsored

    昨今タイでは「後追い型の事業成長モデル」が通用しなくなりつつあるが、任期付きの駐在員にとっては、時間のかかる現地起点の変革はハードルが高い。

    そのような中、General Managerの沼田佳朗氏との出会いがきっかけで、Nagase (Thailand) Co., Ltd.(以下、「長瀬産業タイ」)に入社した松本匡広氏。現地採用人材として長期コミットが可能である上に、高度な化学専門知識を有する松本氏は、積極的な事業開発に向けて沼田氏と二人三脚での変革に着手した。

    聞き手: 一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS) バンコク事務所長 藤岡 亮介

    現地採用人材が腰を据えて挑戦することの意義

    長瀬産業タイの事業概要と、松本さんのこれまでの軌跡について

    沼田氏 化学系専門商社である長瀬産業株式会社(以下、「長瀬産業」)は「Delivering next.」をグループスローガンに、ケミカルや合成樹脂などの各分野において素材・部品の輸出入および国内販売を行っています。タイ現地法人である当社は、これまでロジスティクスを中心に日本企業のサプライチェーンをサポートすることで事業を拡大させてきました。

    注)所属企業名はインタビュー当時

    松本氏 私とタイの繋がりは、2011年に知り合いの教授が勤めるタイの大学に交換留学したことが起点です。当時起きた大洪水の直後、研究室仲間や軍人と一緒にを積み上げるボランティア活動に参加し、タイ人の精神性に感銘を受けたことで、博士課程修了後にタイの大学で研究を続ける道を選択しました。

    研究内容は高分子系バイオマテリアルでしたが、共同研究を通して出会ったタイ人の妻と家庭を持ったことで、民間への転職を考えました。最初はめっき薬品商社に勤めていましたが、2022年に沼田さんと出会ったことが転機となり、長瀬産業タイに現地採用で入社しました。

    注)所属企業名はインタビュー当時

    松本さんのような現地採用人材を採用した背景は

    沼田氏 当社を含め多くの在タイ日系企業はこれまで、日本本社が行う事業を追従する、いわゆる後追い型の事業成長モデルで発展してきました。しかし私は、タイにおいて日本企業が成熟期を迎える中で、この成長モデルはいつか限界が来ると感じていました。

    「本社のように、タイでもプロアクティブに事業開発を行わなくては」との危機感に駆られつつも「新規事業に必要な知見やノウハウを必ずしも有さない任期付きの駐在員が新しい道を切り拓くのは難しい」という壁に直面していた時、松本さんとの出会いがありました。

    化学系の専門知識があり、かつ任期のない人材が腰を据えて事業開発に挑むことで、その背中を見たタイ人メンバーが成長し、当社全体の底上げにも繋がると思っています。

    これまでの「日本での顧客、商材ありき」のビジネスモデルとは異なり、将来のニーズを見据えたマーケットインの事業開発は、これまで長瀬タイランドではできなかった新しい取り組みと言えます。いずれはタイ人自らが新規開拓し、変革人材となってくれることを期待しています。

    優秀なタイ人メンバーとともに、サステナブル素材を開拓

    変革の舞台としてのタイの特徴をどのように捉えているか

    沼田氏 タイは長瀬産業の海外事業において非常に重要な拠点で、売上規模では上海に次ぐ2番目、ASEAN域内ではトップです。比較的安定した本社の経営状況に加え、タイでもまだ新規に割けるリソースがあるため、変革に挑むにはベストな国だと考えています。

    これまで35年間にわたり、後追い型を続けてきた当社のような日系企業で働くタイ人は、成長モデルの崩壊に伴う危機感は、現時点では薄いと考えています。だからこそ今後は、新規事業を生み出し、そうした事業を通じて変革できる人材をいかに育てていけるかが、タイでの日系企業の存続にも関わる重要な要素だと思っています。

    具体的にどのような事業開発を推進しているか

    松本氏 今後のマーケットを見た時、「サステナブル」というキーワードは外せないと考えているため、そのキーワードに関係することは手広く行っています。具体的には、再生可能な原料からできたバイオケミカルやリサイクルを促進するアイテム、二酸化炭素の削減や吸着のための物質など、「サステナブル新素材・新技術」を収集し、お客様に紹介しています。展示会への参加や大学勤務時代のネットワークの活用など、世界中のあらゆるルートで情報を収集しています。

    タイのお客様は日系の駐在員の方々含め概ねサステナビリティには敏感で導入に前向きだと感じる一方で、今はまだ「コストに転嫁できない」と考えるマーケットとのギャップがあるようです。

    ただ、遅かれ早かれ「会社として」コスト増を受け入れてでも本気でサステナブルな取り組みに本腰を入れなければならない時が来るでしょう。そうした時に当社を第一想起いただけるよう、今は素材・技術の開拓をチームメンバーとともに進めています。

    タイ人メンバーと向き合う時に気を付けている点は

    松本氏 現在は吉本社長直下のチームで、私の他に2人のタイ人メンバーがいます。化学系のバックグラウンドを持つ優秀な人材で、かつ当社で長年営業職として活躍してきたメンバーです。今は私が主に目利きを担当し、彼らが営業という役割分担ですが、彼らに目利きした素材について説明する際、一緒に「面白い」と思ってもらえるように意識しています。

    例えば、前例のない機能を持つ画期的な素材については、その機能によって社会がどう変わる可能性があるのかに焦点を当てて訴求します。お客様の大きな利益になり、その分私たちも高い粗利が期待できる素材の場合には、利益を生み出すポテンシャルについて熱く語ります。

    なぜ「面白い」と思うのか、その理由は素材によってさまざまですが、そうした思いを互いに共有することが、彼ら自身が顧客に当事者意識を持ってその魅力を伝えることに繋がります。さらに中長期的には、彼ら自身が目利きをするようになった時にも活きると考えています。

    チームメンバー以外のタイ人からは、現時点で私の仕事が売上に貢献しているとは見られておらず、同じ現地採用という立場もあってか、厳しい目を向けられることもあります。そのため、任期がないとはいえ長期的な取り組みだけに注力せず、短期で成果が出る業務にも目を配らせ、長期・短期のバランスを考えて開発を推進しています。

    登竜門としてのタイを経て、次なる挑戦へ

    今春からインド拠点へ異動した沼田さんは、タイでの経験を踏まえ何を感じているか

    沼田氏 海外志向の若手は減少傾向にありますが、海外でのビジネス経験は、日本企業の将来に必ず役に立つと確信しています。私自身、本社勤務時代と比べてタイでは裁量権を持って仕事に臨めたため、ビジネスの面白さをより一層感じることができました。

    インドでは、既にタイでのマネジメント経験が活きていると実感しています。タイを経験していなければ判断できなかったであろう場面にも直面し、まさに「登竜門としてのタイ」の存在を肌で感じています。今後も日本やタイにおける長瀬産業のノウハウを持ち込みながら、インドでも変革に挑戦していきたいと思っています。

    THAIBIZ編集部

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