

カテゴリー: 対談・インタビュー, 食品・小売・サービス
連載: タイ発変革人材の躍進
公開日 2025.08.08 Sponsored
タイでの経験を糧とし、日本や世界を舞台に活躍している人材は多い。タイで財閥パートナーと中古品リテールビジネスを立ち上げた、株式会社コメ兵ホールディングス(以下、「コメ兵HD」)の竹尾英郎氏もその一人だ。
同氏は4年間のタイ駐在期間を経て、現在はグループの海外事業を率いる立場にある。ゼロイチで実業を立ち上げた経験から見出した「勝ちパターン」や、現地で育んだネットワークは、同社の海外展開において欠かせないピースとなった。本連載インタビューの最終回では、「登竜門としてのタイ」から羽ばたく躍進ストーリーをお届けする。
聞き手: 一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS) バンコク事務所長 藤岡 亮介
本連載の流れ(予定)
2025年4月号
2. 変革人材インタビュー記事① 中村 亮太 氏 YN2-TECH(Thailand)Co., Ltd.
2025年5月号
3. 変革人材インタビュー記事② 南野 淳 氏 Cellulosic Biomass Technology Co., Ltd.
2025年6月号
4. 変革人材インタビュー記事③ 沼田 佳朗 氏 松本 匡広 氏 Nagase(Thailand)Co., Ltd.
2025年7月号
5. 変革人材インタビュー記事④ 柳本 貴生 氏 Teppen (Thailand) Co., Ltd.
2025年8月号
6. 変革人材インタビュー記事⑤(本稿) 竹尾 英郎 氏 株式会社 コメ兵ホールディングス
2025年9月号
7. タイにおける変革人材が有する特徴
変革人材を持続可能な形で生み出すための仕組み
注)所属会社名はインタビュー実施時点
目次


コメ兵HDは、中古品、新品の宝石や貴金属、時計やバッグなどの仕入れおよび販売を行っています。現在は2019年に一号店を開設したタイを含め7ヵ国に海外法人があります。
私は2000年に株式会社コメ兵(以下、「コメ兵」)へ入社し、2015年にコメ兵の第一号駐在員として香港に赴任しました。現地での事業立ち上げや、周辺国の事業のマネジメントを経験し、2019年からコメ兵のタイ進出に伴いタイに赴任。
現地財閥のサハ・グループと合弁で中古品リテールビジネスをゼロから創り上げ、その後、2023年4月に日本へ帰任し、現在は海外事業部長として海外グループ会社を統括する立場となり、最近では米国拠点を新たに立ち上げました。
香港に続く2ヵ国目の駐在だったため、当初は比較的楽観的に考えていましたが、100%独資で事業展開できた香港とは異なり、タイの財閥パートナーと深く連携しながら事業を立ち上げ推進することは、国の文化と社風という2つの違いを乗り越える必要があり、想像以上に大変でした。
まず、文化的には、タイ特有のグレンジャイ(遠慮や気遣い)文化が起因して、「きちんと共有済みだと認識していたことが、実は全く共有されていなかった」といった場面もあり、ミスコミュニケーションが頻発。日本の感覚で仕事をしてはいけないと学んだ瞬間でした。
さらに、サハ・グループのビジネスに対するシビアな判断や、物事の考え方、捉え方は、日本企業のそれとは大きく異なり、私自身のビジネスに対する考え方にも大きな影響を与えてくれたと思います。
そのような状況では、ビジョンや「何をするか(WHAT)」を一致させられても、「どうやるか(HOW)」の部分で意見が折り合わないことも多く、当時はタイでの中古品リテール市場が未成熟でビジネスの「型」が存在しなかったこともあり、一連のバリューチェーンが完成するまでは苦労が多かったです。
ただ、コミュニケーションを重視し、お互いの理解を深める中で、「どうやるか(HOW)」について双方の納得感が高まってくると、事業も飛躍的に成長し始めたため、今振り返るとこの経験は自分のキャリアにとっても重要なターニングポイントだったと思います。
タイでは中古品ビジネスの型はありませんでしたが、グローバルブランドが成長著しいアジア市場に積極的に投資した結果、中古品市場も着実に成長していたことや、ASEANでは日本よりも中古品に対する抵抗感が薄いといったプラス材料がありました。
こうした追い風が吹きつつある中で、日本企業であるコメ兵HDが中古品に対して品質チェックを行うことで、「Checked in Japan」、さらには「Checked by KOMEHYO」という価値を付与し、ビジネスで競争優位性を築けたことが、タイでの事業を軌道に乗せられた最大の要因だと思っています。
他方で、戦略を実行していく中で、あるべき論をとにかく追求するのではなく、手持ちのリソースを意識しながら現実的な行動計画に落とし込み、柔軟に変更していくことも強く意識しました。
特に成功の鍵となる重要な人材については、例え良い現地人材が獲得できたとしても、コメ兵HDの企業文化と日タイの文化的な差異を深く理解した上で行動してくれるようになるには、長い時間がかかると痛感しました。
そのため、創業期にサハ・グループから派遣された、日本語堪能で優秀なタイ人が、会社文化の浸透や両国文化の差異を乗り越えることに大きな役割を果たしてくれたことは本当に幸運でした。また、そうした良い人材に定着してもらうための組織作りも重要だと気づかされ、階層を重んじるタイ文化を尊重しながら、組織内のレポートラインを決めるなどの試行錯誤を行いました。
さらに、同じ境遇や立場の方々に自分から会いに行き教えを乞うなど、積極的に学びに行く姿勢を身に着けられたのもタイが舞台だったからだと思います。


今振り返ると、タイはその前に駐在した香港とは異なり、グローバル化の影響は大きく受けつつも、独自の歴史・文化も持ち併せており、ビジネスで成功するにはそうしたローカル要素にも適用する必要性がありました。
そのため、日本のオペレーションでわれわれが扱っているラグジュアリーグローバルブランドの商品を売るというプロダクトアウト的発想になりがちなビジネスモデルに、いかにマーケットインの発想を融合させるか、という深い視座を与えてくれたように思います。
そのためタイでの経験を通じ、私は「日本のオペレーションの質を現地で実現することが、海外市場で成功するための勝ちパターンではないか」という気づきを得るとともに、そうしたパターンを実現する過程での、国や組織間の違いを乗り越える方法や、良い現地人材をいかに獲得し、潜在能力を引き出していくかなど、重要なことを学ぶことができました。
これらは、タイ駐在中のシンガポール法人の立ち上げや、海外事業部長として欧米にも事業を横展開する際にも活用できました。加えて、タイで培った人脈は、ASEANを開拓していく上で非常に役に立ちました。
また、最近話題のトランプ2.0についても、グローバルで中古品の流通を最適化させる当社のビジネスも当然無縁ではいられません。しかしながら、「短期的な変化に惑わされず、長期を見据えて一歩ずつ目標に向かって進んでいけば良い」というタイで学んだ心構えに基づき、流通網の一層のローカル化を進めるなど、慌てずに対応していきたいと思っています。
これまで述べたような気づきや学び、出会いを得られる「登竜門としてのタイ」を次の世代にも体感してもらい、成長につなげてもらうために、今は若手の駐在1ヵ国目として戦略的にタイを選んでいます。私自身も、これからタイを含む海外経験を糧にさらに飛躍できるよう、尽力していきます。


THAIBIZ編集部





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