カテゴリー: 会計・法務
公開日 2015.01.30
通常のビジネスにおいては支出額が収入額を経常的に上回ることは想定されませんが、設備投資や大量の材料仕入を行った際には、一時的に支出額が収入額を超えることがあります。
この場合、月次のVAT申告において仕入VATが売上VATを上回るため、納税金額がマイナス(過払い)になってしまいます。その際、VAT登録業者は過払いとなった金額を還付申請するか、(税額控除として)翌月以降に繰り越して将来の売上VATから控除するかを選択することができます。
還付に関しては申告月から3年以内に還付申告を行わなければなりませんが、繰り越しに関しては期間に制限は設けられていません。
還付申請した場合には、税務調査が行われます。その場合、法人税などの他項目も調査の対象となり、新たな税務上の問題を引き起こすリスクがあるので、将来的に売上VATから控除できる見込みのある設備投資や大量の材料仕入による過払いに対しては、税額控除として翌月以降に繰り越すのが一般的です。
タイ国内での販売や輸入取引についてはVATは7%が課税(2015年1月1日現在)されますが、一方、輸出取引については0%課税となります。これはタイのVATが日本の消費税と同様に「消費地課税主義」を採用しているため、国外で消費される輸出取引については免税となるためです。
よって、輸出企業においては経常的に仕入VATが売上VATを上回ることになり、過払い金額を仕入控除として翌月以降に繰り越した場合でも、将来的に売上VATと控除できる見込みはありませんので、還付申請を実施する必要があります。
在タイ日系輸出企業の大多数は製造業であり、タイにおける平均的な日系製造業の純利益率が7%程度と言われていますので、売上の全てがタイ国外への輸出となる在タイの輸出製造業者の場合は純利益とほぼ同額のVAT還付を受けることができます。輸出比率の高い企業にとって、このVAT還付手続きはまさに事業の存続を左右するほどの非常に重要な手続といえるでしょう。
還付を実施しようとする際に輸出企業に立ちはだかるのが税務調査です。日本と比較して税務調査官の裁量権限の強いタイの税務調査は企業の悩みの種になっており、一切の追徴税額を課されることなく終了することは非常に困難となっています。
また、昨年の10月にはタイローカルの企業が、ほかの会社と共謀して、偽のタックスインボイスを発行することで20億バーツにもおよぶVAT還付金を歳入局から騙し取った事件がおきており、VAT還付に伴う歳入局の調査はさらに厳しくなっている状況です。
VAT還付はビジネスが成立する上での絶対条件であるのに、何らかの原因により還付がなされないままの状況となっている。このようなVATの未還付問題に直面する在タイの日系企業は後を絶ちません。
この輸出企業におけるVAT未還付問題と同様の税金の未還付問題は源泉所得税でも起こります。繰り越しのできるVATほど還付の金額は大きく膨らみませんが、対象となる業種の範囲が広いため、VATの還付以上に源泉所得税の還付に苦慮する多くの日系企業があります。
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THAIBIZ編集部
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