2022年上半期、激動の国際商品相場 〜 高騰、急落の裏に投機マネーの存在

2022年上半期、激動の国際商品相場 〜 高騰、急落の裏に投機マネーの存在

公開日 2022.07.19

英誌エコノミスト7月9日号は金融経済面で最近の石油や金属、小麦など商品相場の下落について論じている。タイトルは「Helter Skelter(大混乱)~商品相場の下落はリセッション(景気後退)を反映しているのか」だ。同記事はまず「ロジスティクス障害や悪天候などですでにひっ迫していた原料供給の流れをロシア・ウクライナ戦争が悪化させ、価格を高騰させた。北海ブレント原油先物相場は3月に1バレル=128ドルを付けた。・・・銅価格は1トン=1万845ドルと過去最高値を更新。小麦、トウモロコシ、大豆価格は2桁の%の上昇となった。これらが消費者物価を押し上げ、各国中央銀行に利上げの口実を与えた」と今回の商品相場の高騰を振り返る。

それが過去数週間で風向きが変わり、原油価格は100ドル近辺まで下落、銅価格は8000ドルを割り込んだ。同記事は農産物価格はウクライナ戦争前の水準まで戻ったと指摘。こうした商品価格の下落の理由の一つは「景気後退に向かいつつある」ことで、金利上昇による住宅販売の減少、衣料品や家電、自動車の購入減などが金属需要の低迷につながっていると説明する。

ただ景気への懸念だけが商品価格を押し下げる要因ではないとし、専門家の見方として、「商品市場に逃避していた資金の多くは現物トレーダーではなく、金融(投機)筋だ」と指摘。JPモルガン・チェースによると、7月1日の週には約160億ドルが商品市場にから流出し、その額は年初来で1450億ドルに達したという。

また今年5月には米国の長期実質金利が2020年以来初めてプラスとなったことで、「利回りがない商品相場は投機筋にとって魅力がなくなった」との見方を示す。TJRIニューズレターの6月28日号で指摘した、商品価格における投機マネーの役割がやはり指摘されている。


石油・穀物絡みでもう1本。12日付バンコク・ポスト(ビジネス3面)によると、「タピオカ・エタノール協会」は燃料価格の高騰に苦しむドライバーなどを支援するために、エネルギー当局にキャッサバを原料とするエタノールの利用拡大を働き掛けているという。燃料用エタノールの原料は米国ではトウモロコシ、ブラジルではサトウキビだが、タイでのサトウキビ以外にもキャッサバも使われているようだ。同協会幹部によると、政府の振興策にもかかわらずタイでのエタノール燃料需要は期待ほど高まらず、全ガソリン燃料に占めるエタノールを20%混合した「E20」と85%混合した「E85」の合計シェアは22%にとどまり、同市場ではまだ10%混合の「E10」が75%を占めているという。一方、エタノールを全く混合していない無鉛ガソリンはわずか3%だ。エタノール混合燃料が実質ほとんどない日本と比較すると、97%がエタノール混合燃料だということに驚く。やはりタイではエタノール原料の農産物価格の安さと政府の振興策がバイオ燃料を普及させているようだ。


13日付バンコク・ポスト(3面)は、ラオス経由でタイと中国を結ぶタイ中国高速鉄道計画の最新情報を伝えている。同計画の第1フェーズの14契約のうち3契約の実行が遅れているが、タイ国鉄(SRT)筋によると、サックサイアム運輸相は事業を遅らせているすべての障害を解決するための期限を今月末に設定したという。バンコクと東北部ノンカイを結ぶ同計画の第1フェーズはバンコクからナコンラチャシマまでの全長253キロで工事の進捗率は12%で、年内には20%を目指すとしている。

TJRI編集部

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