石炭の根絶は困難、エタノールはバイオプラへ

石炭の根絶は困難、エタノールはバイオプラへ

公開日 2023.06.20

英エコノミスト誌6月10日号Leadersの1本は、「The struggle to kill King Coal」というタイトルで、石炭火力発電の最新動向を紹介している。副題は、「金融ツールだけで世界で最も汚い燃料を根絶することはできない」だ。同記事はまず、2021年11月に英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、世界各国首脳は石炭を歴史の『灰だまり』に処分することを高らかに宣言した。「各国政府は石炭火力発電所の建設をやめることを公約し、金融業界は炭鉱への資金提供を中止することを約束した。しかし、18カ月たっても、世界の最も汚い燃料は依然燃えている」と話を始める。

そして、「ロシアのウクライナ侵攻により化石燃料に殺到する動きが始まり、2022年の石炭消費量は過去最高水準に押し上げられた。エネルギーショックが後退しても、世界の石炭需要は今年も小幅増加する見込みだ。もし世界の気温上昇を1.5度までに抑制しようとするなら、今後10年で石炭生産量を3分の2以上削減しなければならないが、5分の1未満しか減らない見通しだ」と極めて厳しい認識を示している。

2021年時点での石炭消費削減への楽観論の根拠は、主に欧米の金融機関200社以上が炭鉱や石炭火力発電所への投資を抑制する方針を発表したことにあるという。そして、2050年までにネットゼロエミッション達成を公約している「ネットゼロ・バンキング・アライアンス」は化石燃料向けの資金提供削減を目指していたものの、石炭ブームにより多くの約束の実行が延期されるなど齟齬をきたし、結果として60の大手銀行が昨年、世界の大手石炭生産者に総額130億ドルを供与することになったという。さらに、こうした石炭産業への資金提供者になっているのは欧米の銀行だけではなく、中国やインドという石炭大国の銀行が新規炭鉱など石炭産業への資金提供に「良心の呵責」は何もなく、市場参入しているという。


6月14日付バンコク・ポスト(ビジネス3面)によると、タイ政府はエタノールを原料にして環境に優しいバイオプラスチック製造への利用を促進することを承認した。アヌチャ政府報道官が明らかにした。具体的にはバイオプラスチックペレットの原料となる「バイオエチレン」への免税措置を承認し、バイオプラスチック産業を支援する。現行法では、タイ国内で生産したエタノールは燃料とアルコール飲料生産のみに使用しなければならない。エタノールは現在、ガソホール生産するためベンゼンと混合されている。関係筋によると、今後、EVの普及が進むとエタノールの自動車燃料用利用が減少すると予想されており、エタノールはバイオプラスチックなどの産業用途に振り向けられる見通しだ。こうした動きはタイ政府のバイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデルを含む世界の環境保護のテーマに沿ったものだという。


6月17日付バンコク・ポスト(ビジネス1面)は、タイでも注目度が高まっている「持続可能な航空燃料(SAF)」を改めて取り上げている。タイの航空会社はSAF生産への政府支援を期待しているが、国際航空運送協会(IATA)のサステナビリティー担当上級副社長のマリー・オーウェンストムソン氏は、現在のSAFの生産量水準は、世界の航空向け需要と比べて微々たるものだとの認識を示した。IATAは、航空業界が2050年までの達成を目標としている二酸化炭素排出削減量の62%にSAFが貢献できると予測している。しかし、2022年のSAFの年間生産量はたった2400億トンと、世界のジェット燃料生産量の0.1%にすぎなかったという。また、SAFの価格は現在、ジェット燃料の3倍という。


6月17日付バンコク・ポスト(3面)によると、タイ運輸省陸運局のシリラット副局長は、今年1~5月の電気自動車(EV)の新規登録台数が前年同期比474.43%増の3万2450台になったことを明らかにした。運輸省と陸運局はバッテリーEVを所有する個人に対する年間道路税を1年間、80%割引くインセンティブ策を導入している。シリラット副局長は2025年11月10日までに陸運局に個人用BEVを登録した人がこの減税措置を受けられるとしている。

TJRI編集部

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