マレーシア・プロトンがタイでEV投資へ、中国鄭州市の現状

マレーシア・プロトンがタイでEV投資へ、中国鄭州市の現状

公開日 2023.10.17

タイのセター首相11日、自身の「X(旧ツイッター)」で、中国の自動車大手、浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)の李書福会長と10日夜に面談したことを明らかにした。同社はマレーシアの国産車会社プロトンの大株主で、同会長によると、プロトンがタイ国内に電気自動車(EV)工場の開設に関心を示しているという。一方、セター首相は、タイ政府はEV生産への投資を支援していることを表明し、ジーリーに対しさらなる交渉を行うよう要請した。セター首相はマレーシアを初めて訪問し、11日に同国のアンワル首相と会談、両国が貿易・投資、農業・食品、観光、安全保障の4分野で協力を強化することで合意した。このうち投資分野では、アンワル首相が、EV企業がタイへの投資を検討するだろうと伝えたという。


英エコノミスト誌9月30日号は「中国の経済停滞を象徴する都市」と題する金融経済面の記事で、台湾系の富士康科技集団(フォックスコン)が受託するアイフォーンの世界最大の工場がある河南省鄭州市の現状を伝えている。副題は「鄭州の経験は地方の問題は解決困難であることを示唆している」だ。同記事は、1300万人の人口を抱える鄭州市は10年以上、巨大工場でアイフォーンを組み立てている従業員の居住地になってきたが、その寄宿舎の一部は空室になっていると話を始める。新型コロナウイルスのロックダウン期間中は1部屋に10人程度が数週間閉じ込められていたが、昨年10月に多くの労働者が逃げて、戻ってきていないという。

そして鄭州市は中国で最も問題のある都市の1つとなり、湖南省の1人当たり国内総生産(GDP)は全国平均の4分の1になってしまったという。そして、労働力不足、不動産価格の下落、金融機関の不安定さなど鄭州市の問題は、中国全土が直面する深刻な現状の典型例となり、その復興策の実験場にもなりつつある。そして最近の中国の経済データは、工業生産高、小売売上高などは上昇し、安定化し始めているものの、今年1~8月新築住宅の建築中の面積は7.1%減と減少が続いていると指摘。この状況が安定し始めたとしても、鄭州市の経験は中国が経済の沈滞から真に脱することがいかに難しいか、回復にどのぐらい時間がかかるかを示しているとの認識を示している。


タイが中国と国交を樹立してから今年は48年目で、10月1日に中国の国慶節を迎えたことに合わせ、バンコク・ポスト2日付(3面)で在タイ中国大使館の韓志強大使のインタビュー記事を掲載している。3日にバンコクの大型商業施設で発生した14歳の少年による銃乱射事件の前だったため、この事件への言及はなく、社交辞令が大半だが、興味深いパートもあるので、ここで改めて紹介しておく。まず、中国は10年連続でタイの最大の貿易相手国であり、タイの農産物の主要輸出先、タイへの主要投資国でもあり、タイ旅行者数も多いと指摘。セター首相の訪中も控えているなどと前置きする。

そして韓大使は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路(BRI)」について「最も人気のある国際公共財、そして最大の国際協力プラットフォームになった。150カ国以上の国、30以上の国際機関と200以上の共同文書に調印した」と自画自賛。そして、「タイはBRIの重要なポイントに位置し、重要な参加者であり受益者だ。中国・タイ鉄道はBRIの旗艦プロジェクトで、完成すればタイの鉄道インフラの条件を大幅に改善する」とアピールした。

一方、米国主導の「インド太平洋戦略」を懸念しているかとの質問に対し、「米国のインド太平洋戦略は実際に中国を封じ込めようとする政策ツールだ」と明言。「彼らがやっていることはこれらの地域と世界に深刻な懸念と警戒感を引き起こしている」と警告した。その上で、中国には「得道多助、失道寡助(道義にかなえば多くの支持が得られ,道義にもとれば多くの支持を失う)」という古い言葉があり、こうした歴史のトレンドに逆らうことはできず、「中国は独自に近代化を実現し、国を大いに再生する能力がある」と訴えた。

TJRI編集部

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