「バンチャックのSAF工場93%が完了」「タイ政府、健康経済に6,900億バーツ見込む」

「バンチャックのSAF工場93%が完了」「タイ政府、健康経済に6,900億バーツ見込む」

公開日 2025.03.11

3月5日付のバンコク・ポストによると、エネルギー大手のバンチャックは、今年第2四半期(4〜6月)に稼働予定のバンコク・プラカノン地区の工場で、生産量の60%を占める持続可能な航空燃料(SAF)を販売する準備を進めているという。

プラカノン地区のバンチャック製油所近くに建設中のSAF工場は、1日あたり100万リットルの生産能力を持ち、現在、建設の93%が完了している。この施設では、使用済みの食用油を原料とする。

なお、さまざまな予測をもとにしたメディアによると、航空業界がSAFを推進しているのは、従来のジェット燃料に比べて温室効果ガス(GHG)の排出量が最大80%少ないためだという。

バンチャックグループのチャイワット最高経営責任者(CEO)によると、同社はすでに生産量の60%に相当するSAFの販売契約を2社と締結しているという。

1社はシンガポールを拠点とするシェル・インターナショナル・イースタン・トレーディングで、認証を受けた使用済みの食用油を原料とするSAFを販売。もう1社は日本のコスモ石油で、2030年までに年間30万キロリットルのSAFを調達することで合意した。

2社はSAF、バイオエタノール、バイオナフサなどバンチャックが製造する製品を活用し、二酸化炭素(CO2)排出削減の方法を共同研究する予定。バンチャックとコスモ石油は、GHG排出削減を目指し、低炭素水素の利用・輸送についても共同研究を行う計画だ。

バンチャックは今年、500億バーツの投資計画を発表しており、石油掘削やナコーンラチャシーマー県のカリ鉱山の天然資源事業、ベトナムの風力発電などのグリーン電力事業のほか、石油精製や貿易事業、バイオベース事業に資金が充てられる予定だ。


3月4日付のネーションによると、タイ政府は健康経済を経済の重要な原動力とする取り組みを強化しており、保健省は、将来性の高い6つのビジネスセクターを開発する戦略的計画を発表した。この取り組みにより、国内総生産(GDP)の3.39%に当たる約6,900億バーツの経済効果が期待されている。

同省の戦略では、ハーブ医薬品や健康食、医療ツーリズムなどこれまでのタイのウェルネス産業に加え、医療機器製造を強化していくことも計画している。また、パーソナルヘルス・美容部門の拡大とともに、新たに先進治療用医薬品センターの設立も計画している。これらの戦略を支援するためにタイ政府は、新たに「健康経済事務局」を設置する。

タイ工業連盟(FTI)は、健康経済を次世代産業の重要な部分と位置づけ、医薬品、食品・飲料、医療機器、ハーブ製品、化粧品、食品サプリメント、バイオテクノロジーを含む健康・美容分野を発展させていくという。

保健省とFTIは、経済振興と規制上の課題に取り組むための共同運営委員会を設立。国際的に評価される優れた健康製品の普及、健康経済の競争力の維持を目指す。

ソムサック保健相は、「6,900億バーツという目標は主にタイマッサージのようなサービス産業が牽引するものだが、今後は製造業も勢いがつけば、大きく貢献することになるだろう」と述べ、成長を妨げている規制の見直しを約束した。

FTIのクリアンクライ会長は、「タイの健康製品産業の現在の価値は、GDPの10%を占める約1兆バーツで、そのうち輸入が5,370億バーツ、輸出が5,430億バーツである。この産業はタイのGDP成長率5%目標を達成するために重要な役割を果たすだろう」と展望を述べた。

なお、タイの健康経済の市場概要は次の通り。

<医薬品> 生産高830億バーツ、輸入1,900億バーツ、輸出28億バーツ
<ハーブ製品> 生産高830億バーツ
<医療機器> 生産高1,680億バーツ、輸入900億バーツ、輸出1,180億バーツ
<食品> 輸入1,900億バーツ、輸出3,200億バーツ
<食品サプリメント> 輸入77億バーツ、輸出9億7,400万バーツ
<化粧品> 生産高3,200億バーツ、輸入420億バーツ、輸出900億バーツ
<バイオテクノロジー> 生産高1,200億バーツ


3月3日、バンコク日本人商工会議所(JCC)、カシコン銀行、泰日協会(TJA)は共同で、「新たな貿易摩擦を前にしたタイ・日本協力の強化」をテーマにセミナーを開催した。同セミナーの基調講演に登壇したエカナット工業相は、「世界の貿易情勢が各国に影響を与えているが、タイは引き続き柔軟な政策を重視し、地政学的リスクを乗り越え、経済の発展を目指す。今後も日本との協力関係を強化していく」とアピールした。

キャプション:バンコク日本人商工会議所(JCC)、カシコン銀行、泰日協会(TJA)共催セミナー=3月3日、バンコク(写真:カシコン銀行提供)
バンコク日本人商工会議所(JCC)、カシコン銀行、泰日協会(TJA)共催セミナー=3月3日、バンコク(写真:カシコン銀行提供)

また、カシコン・リサーチ・センターのブリン・アドゥンワッタナ社長は「トランプ大統領の『アメリカ・ファースト』政策は、米国の利益を優先し、関税引き上げや貿易戦争を避けられない状況にしている。特に、半導体、医薬品、鉄鋼、防衛産業などの産業は、米国内での生産が義務付けられるようになるだろう。2024年時点で日本は対米貿易黒字国として7位、タイは11位に位置しており、両国が今後どのようにして世界のサプライチェーン内での地位を維持できるか、検討する必要がある」と指摘した。

カシコン銀行のピピット頭取は、「日本はタイの経済発展において中心的な役割を担っており、特に自動車産業と電子産業では、タイを地域の生産拠点にしている。世界の貿易の先行きが不透明な今、タイと日本は戦略的に提携する必要がある。特に、技術やサステナビリティ、製造業などの主要分野での協力を深めることで、国際的な競争力を高めることができる。そのためには、持続可能な未来に向けたビジョンを共有していくことが重要だ」と訴えた。

THAIBIZ編集部

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