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カテゴリー: 組織・人事
公開日 2017.03.30

弊社では、数年に渡ってタイの日系企業様の人材育成のサポートをしてきました。もはや「現地化」という言葉は死語ではないかと思うほど、日本人からタイ人スタッフへの権限委譲やナレッジ移管が、各社において、より目の前の取り組み事項として具体的になってきた変化を感じます。
経営にとって人材育成は、時間とお金のかかる大きな投資です。当然、会社としては「積極的に学んでもらい、投資対効果を上げたい」と考えるわけですが、なかなか狙った効果を生めていないケースも散見されます。そこで本記事では、タイで感じる人材育成の課題について考察します。

図表は、「学習の定着率」を表したものです。上部にある「講義」「読む」などは「受動的な学習方法」と言われ、学んだことの多くは忘れてしまうそうです。タイの研修では、テキストを配って先生が講義してオシマイ、という風景を見かけることが少なくありません。タイ人が言うところによれば、タイの学校教育のやり方が大きく影響している、ということなのですが、成果が求められる企業の人材開発においては、こうしたやり方はもっと進化していく必要があります。
反対に、最も定着率が良い方法は「人に教える」ことです。研修を行ったら、それをチームに持ち帰って後輩の指導をさせる、といった「業務との接続」が最も大事です。そのような能動的な学習プロセスを作っていくと、研修が研修で終わらず「現場で学びが起きる(≒OJT)」組織になっていきます。

会社の仕事はチームプレイですから、個々の人材力以上に組織力が重要になります。
例えばサッカーチームにいくら優秀なプレイヤーがいても、パスが繋がらなかったり、戦術の理解が一致していないとゴールまでボールが運ばれません。会社の仕事も、優秀な人が組織の中で埋没していたり、問題のある上司の下にいる高評価人材が辞めてしまったり、といったことが起きていないでしょうか。
こうした関係性の改善を図ることを「組織開発」と呼びます。誰かを研修に送るといった「個」の視点でだけでなく、より全体の関係性を見た施策を打つことです。チームの相互理解を図るコミュニケーションや、理念や方針を伝える活動などがそれにあたりますが、適切なデザインをして実施すれば、侮れない効果が出ます。
弊社では社員合宿を支援することがあるのですが、日本人とタイ人が腹を割って話したことで、組織内の風通しが良くなり、連携が急に良くなったというリアルな話もあります。それくらい、人間の気持ちはパフォーマンスに影響するのです。
最後に、そうした関係性のボトルネックになっているのが我々日本人であることが非常に多い、ということも否めません。ここはタイですし、我々が働くのはタイの組織です。その中で良い関係づくりに自分は貢献できているか?と常に自問する視点を持ちたいものです。

中村勝裕
上智大学外国語学部卒後、ネスレ日本入社。その後、リンクアドモチベーションで組織変革コンサルタントとして数多くのプロジェクトに従事した後、GLOBIS ASIA PASIFICでは東南アジア各地における企業人材育成などを担当。2014年、Asian Identity Co. Ltdを設立。日タイ混成チームで、日系企業の人材開発、組織活性化を支援するコンサルティングを行っている。

-Our AI Facilitator Line-ups-

中村勝裕

Ekajit Chamsai

Kritinee Pongtanalert, PHD

曾和利光
Asian Identity Co., Ltd.
Major Tower Thonglor Fl.10, 141 Soi Thonglor 10, Sukhumvit Road, Klong Tan Nuea, Wattaba, Bangkok 10110

THAIBIZ編集部

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