
カテゴリー: 会計・法務, ASEAN・中国・インド
連載: ミャンマーの最新ビジネス法務 - TNY国際法律事務所
公開日 2026.01.06
2025年10月14日、ミャンマーの最低賃金設定国家委員会(以下「委員会」)は、労働者のための新たな「日額最低賃金」に対する追加手当を増額する旨の2025年1号通知を公布した。本通知は、従業員10名未満の中小企業および家族企業を適用対象外とする。
1日8時間労働に対する新たな最低日額賃金は、7,800チャットとなる。

上記最低日額賃金額は、基本賃金に加え、これまで段階的に導入されてきた追加手当を反映したものである。詳細は以下のとおりである。
基本賃金:2018年5月以降適用されている、日額4,800チャット(時給600チャット、8時間労働の前提)の最低賃金。
手当1:2023年10月1日より、従業員10名以上の事業主に対して、日額1,000チャットの追加手当が適用。
手当2:2024年8月1日より、同様に従業員10名以上の事業主に対して、さらに日額1,000チャットの追加手当が適用。
手当3:2025年10月1日より、従業員10名以上の事業主に対して、さらに日額1,000チャットの追加手当が適用。
上記金額を合計すると、最低日額賃金は7,800チャット(基本賃金4,800チャット+手当3,000チャット)となる。
本通知の背景としては、ミャンマーの通貨であるチャットの市場レートが公定レートと比較して安いままであり、輸入品を中心に物価が大幅に上昇したことに比して、賃金の上昇幅が低いことにある。それに加えて、総選挙を控えていることから、少しでも人気を上げるために実質的に最低賃金を引き上げる決定を行ったと解される。
現在(2025年12月4日時点)、公定レートは1USD=2,100チャットのままであるが、銀行オンライン取引レートは1USD=約3,500チャット、市場レート(両替所等)は約4,000チャットである。
本通知では、月給については明記されていないものの、実務上の解釈としては、本通知により最低月給は234,000チャットに引き上げられたこととなる。もっとも、当該金額は公定レートで計算すると約111USDであるが、市場レートで計算すると約58USDであり、アジアのみならず世界でも最も低い水準となる。
したがって、最低賃金で働く労働者にとっては生活が苦しい状況は変わらないと思われる。
本通知はあくまでも最低賃金の引き上げであり、全従業員に1,000チャットの追加手当を支払う内容ではないことから、月給が234,000チャットを超えている場合には、月給の引き上げが法律上強制されるわけではなく、あくまでも会社の裁量に基づき決定されると解される。
もっとも、事実上は従業員から昇給の要求が行われるケースも多いと思われ、会社としては、業績や既存の従業員の引き留めの必要性、生活状況等を考慮して決定する必要がある。

TNY国際法律事務所 (ミャンマー)
代表弁護士
堤 雄史 氏
会社設立、合弁契約書および雇用契約書などの各種契約書の作成、M&A、紛争解決、商標登記等のミャンマー法に関するサービスを提供している。世界13ヶ国に展開するTNY国際法律事務所グループの共同代表。
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