【連載】カシコン銀行経済レポート 2018年12月号

ArayZ No.85 2019年1月発行

ArayZ No.85 2019年1月発行「ガラスの天井」を打破するタイ人女性

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【連載】カシコン銀行経済レポート 2018年12月号

公開日 2019.01.22

タイ経済・月間レポート(2018年12月号)

輸出回復と消費拡大で10月のタイ経済は上向く

・2018年10月のタイ経済は前月と比べ改善しました。国内外の需要がけん引しました。民間消費は伸びが加速し、民間投資と輸出はプラス成長に戻りました。それに伴い、工業生産も拡大しました。しかしながら、外国人観光客数は僅かながら収縮しました。主に中国人観光客が減少しました。
・2018年11月の消費者物価の上昇率は、前年同月比0.94%上昇しました。17ヵ月連続で上昇したものの、3ヵ月連続で伸びが鈍化しました。非食品・飲料部門の伸びが4ヵ月連続で減速したことなどが響きました。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、同0.69%の上昇で、前月から伸びがやや減速しました。
・2019年のタイ経済は前年と比べ減速傾向にある見込みです。公共・民間投資は、19年のタイ経済の最も重要な原動力となると予想します。公共投資拡大および政府による民間投資の刺激措置により、投資家の信頼感が改善傾向に転じ、全体的な投資環境が改善すると予想します。
・一方で、輸出と民間消費は緩やかな拡大基調になると見込まれます。輸出は世界経済の減速傾向や米中貿易戦争により下ぶれ圧力に直面する見込みです。民間消費には依然として家計債務残高の重石や、農家の購買力未回復などの下押し圧力がかかる見通しです。
・カシコンリサーチセンターは、2019年のタイ経済成長率について、通常ケースで前年比4.0%増の見通しで、前年をやや下回ると予想しています。

2018年10月のタイ経済情報

タイ中央銀行が発表した2018年10月の重要な経済指標によると、タイ経済は前月に比べて上向きました。外国人旅行者数は減少したものの、前月に落ち込んだ輸出の回復と好調な民間消費に支えられて拡大しました。

10月の民間消費は前年同月比6・5%上昇しました。全ての支出カテゴリーで消費が増えています。支援材料は購買力が全体として上向いていることで、非農林水産業の主要分野における被雇用者の収入が拡大しました。農林水産業セクターの家計所得も拡大に転じました。

一方で、民間投資は前年同月比2・5%上昇しました。建材の販売、商用車の購入、国内の機械販売がそれぞれ12・6%、7・5%、3・0%上昇しました。

10月の輸出は、前年同月比8・4%伸びました。9月に発生した自然災害で影響を受けた日本向けの電子機器などの輸出が回復しました。また、米国による中国製品に対する追加関税の徴収が明確になったことを受け、同措置の発動を前にした中国向けの駆け込み輸出も生じました。品目別でも石油製品や農産品、機械の輸出が伸びました。

工業生産に関しては、前年同月比4・1%増となり、前月の減少から増加に転じました。自動車、食品、飲料、石油製品などの生産が伸びています。

観光業では、外国人観光客数が前年同月比0・5%減の271万人となりました。7月上旬に南部プーケットで中国人が多数亡くなるボートの転覆事故が起きた影響で、中国からの旅行者が減少しました。しかしながら、マレーシアを中心とした東南アジア諸国連合(アセアン)や日本、韓国、インドからの旅行者は伸びました。

2018年11月のタイのインフレ率

商務省が発表した2018年11月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比0・94%上昇しました。17ヵ月連続で上昇したものの、3ヵ月連続で伸びが鈍化しました。非食品・飲料部門の伸びが4ヵ月連続で減速したことなどが響きました。原油高でエネルギー関連価格が24ヵ月連続で上昇する一方、伸びが鈍化したことが非食品部門の減速につながりました。

品目別にみると、非食品・飲料部門が前年同月比0・87%上昇しました。運輸・通信のうち通信が同0・1%下落したほかはプラスでした。昨年9月に物品税制が改正されてから5%台で推移していたたばこ・酒の上昇率は、改正から一回りして伸びが同0・23%に大幅に減速しました。

食品・飲料部門は同1・04%増となりました。米・粉製品の上昇率が4・12%増となりました。果物・野菜は下落したものの、非アルコール飲料が同1・66%上昇するなどそのほかはプラスでした。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0・69%の上昇で、前月から伸びがやや減速しました。

2018 年12月の外為相場

円相場では、1米ドル=112~114円のレンジの中で方向感を模索している状況です。11月上旬の米中間選挙が終わりイベント通過による解放感が広がると、円相場は一時114円台まで上昇しました。しかし、その後は米中貿易摩擦や欧州の政治混迷などを受けて、ドル対円は112円台へ下落しました。ドル円相場は、米中間選挙後は2円に満たない狭い値幅で推移しています。

今後の円相場について、日銀の金融緩和は維持される可能性が高いため、円高の抑止力となります。そして、米国の利上げが来年も継続する可能性が高いことがドル高の要因となります。

2019年のタイ経済成長は公共・民間投資が主要な牽引役

2019年のタイ経済は18年と比べ減速傾向にある見込みです。公共・民間投資が、19年のタイ経済の最も重要な原動力となると予想します。一方で、輸出と民間消費は緩やかな拡大基調になると見込まれます。

タイ政府は、大型インフラ投資を将来の経済発展を支える基盤を築くため、および経済成長を押し上げる景気対策の一つとして推進しています。19年の主要な公共投資は、バンコク北郊のドンムアン空港、東郊のスワンナプーム空港、東部ラヨン県のウタパオ空港という3つの空港を結ぶ高速鉄道プロジェクトです。鉄道開発にともない、バンコク都内のエアポートレールリンク・マカサン駅前の土地24ヘクタールとシラチャー駅周辺の土地4ヘクタールを商業開発する計画もあります。そのほかには、鉄道の複線化やスワンナプーム国際空港の第2期拡張事業などの現在進行中のプロジェクトもあります。

その結果、カシコンリサーチセンターは、19年の公共投資が昨年と比べ大幅に増加し、通常ケースで前年比7・0%増になると予測します。

一方で、民間投資も公共投資拡大に追随して上向く見込みです。公共投資拡大および政府による民間投資の刺激措置により、投資家の信頼感が改善傾向に転じ、全体的な投資環境が改善すると予想します。カシコンリサーチセンターの予測では、19年の民間投資は通常ケースで前年比4・2%増になる見通しです。

民間消費には、依然として家計債務残高の重石や、農家の購買力未回復などの下押し圧力がかかる見込みです。しかしながら、タイ政府は、家庭向け消費を高めるため、低所得者向けの支援策や、農家向けの支援策など購買意欲の喚起を行う政策を引き続き実施する見込みです。よって、カシコンリサーチセンターは、19年の民間消費が前年をやや下回り、通常ケースで前年比3・6%増になると予測します。

19年は輸出拡大のテンポが減速する見込みです。世界経済の減速傾向や米中貿易戦争により外部要因の不確定性が増し、タイの輸出はさらなる下ぶれ圧力に直面すると見込まれます。

カシコンリサーチセンターは、19年のタイ輸出額が通常ケースで前年比4・5%増になると予測します。従ってカシコンリサーチセンターは、19年のタイ経済成長率は通常ケースで前年比4・0%増の見通しで、前年をやや下回ると予想しています

 

※本資料は情報提供を唯一の目的としており、ビジネスの判断材料とするものではありません。掲載されている分析・予測等は、資料制作時点のものであり、今後予告なしに変更されることがあります。また、予測の妥当性や正確性が保証されるものでもありませんし、商業ないし何らかの行動の為に採用することから発生した損害の責任を取れるものでもありません。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自でご判断ください。

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THAIBIZ編集部

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