ArayZ No.99 2020年3月発行タイ個人情報保護法
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公開日 2020.03.05
顧客の要望に応じながら大量生産を行う「マス・カスタマイゼーション」による仕様の増加や、「ソフトウェア化」の更なる進展などにより、製造工程における品質の検証・検査項目はますます増加傾向にあります。
これらに対応するため、自動車製造・組立工場では品質に関連する生産実績データや、作業実績データ、あるいは設備データなどを詳細に幅広く収集できるよう、生産管理システムや工程管理システムにIoTを統合した拡張・再構築が行われています。
しかしながら、「大量のデータ」や「高度なツール」を前にして、次のような課題に直面するケースが見受けられます。
1 何から手を付けるべきなのか
2 どのようなスキルが必要なのか
3 社内で担当者の育成が可能か
4 製造現場の知識・経験をどう人工知能(AI)に教えればよいか
5 どのように業務改革に繋げるか
変革に向けた取り組みを実際に推進していくためには、データとツールだけではなく、製造品質管理の業務を理解しながら、これらのデータを活用・分析するスキルや段階的に成果を生み出していくための方法論、さらには製造部門のみならず、サービスや設計部門などの周辺部門と協力体制を構築するためのプロジェクト管理など、様々なスキルを統合的に活用していく必要があります。
従来は、既存の生産計画に利用する工場管理指標と生産実績の結果をチェックし、現場知見を踏まえながら、問題ごとに都度、原因特定と対策実施を繰り返していました。
IoTを活用した工場マネジメントでは4M(人・設備・材料・方法)の観点から、既存データのデータモデリングを実施。収集・蓄積したデータの網羅的分析を行い、得られた示唆をもとに次の3点を繰り返しながら、工場マネジメントを進化させることができます。
– 設計への製造条件のフィードバック
– 事前予知による実行の制御
– 真因の解析による対策実施
現在の日本の製造業では、IoT活用による品質向上、コストダウンさえ実現できておらず、サイバー空間に実際の環境を再現する「Digital Twin」実現などほど遠いのが実情です。日本の製造業のレベル向上には、まずはIoT活用が喫緊の課題と言え、以下の4段階のステップを考慮に入れた現実的アプローチの採用が成功の秘訣です。
レベル1:QCD(品質・コスト・納期)の結果の見える化
レベル2:QCD+4Mによる原因の見える化
レベル3:QCDの予知・予測
レベル4:Digital Twinによる企業内最適化
ドイツは現在、IoT活用からAI活用への移行期(レベル2からレベル3)にありますが、日本は企業資源計画(ERP)にデータの収集・分析・見える化を行うためのビジネスインテリジェンス(BI)ツールを導入したレベル1の段階に留まっています。
レベル2に進むためには、デジタル活用による新業務トライが急務です。ただ、最初からIoTやAIを導入するのではなく、まずは手持ちのデータから問題特定・原因把握を行い、そこから見えてきた課題に応じてIoTやAIを順次活用し、より詳細なデータを収集・分析、高度化を図ります。
このアプローチにより、効果と結びついたデータ活用が実現され、活動の意義がスタッフ間で共有されやすく、納得感のある取り組みとなります。
IoTを活用したデータ分析に留まらず、工程間の品質データや製品出荷後の市場品質データまでを視野に入れ、モノづくりプロセス全体のデータ活用による課題解決を目指します。
地に足のついたアプローチと現場改善に留まらない広い視野で捉えることで、マネジメントレベルまで活動に巻き込み、企業価値を高める取り組みとして強力な推進力を得ることができるでしょう。
渋澤 将之
Partner
大学卒業後、複数のコンサルティングファームにおいて製造業向けにSCM領域の業務標準化、基幹システム導入支援等の経験を経て、2011年にPwCコンサルティング合同会社入社。以来、自動車・製造業界担当チームの一員として、日本および東南アジアにフォーカスして調達業務改革やデジタルマーケティング、工場IoTなど各種プロジェクトを推進。20年4月よりPwC Thailandに赴任。
E-mail : [email protected]
PricewaterhouseCoopers Legal & Tax Consultants Ltd.
15th Floor Bangkok City Tower, 179/74-80 South Sathorn Road, Bangkok 10120, Thailand
Tel: 0 2344 1000
免責事項: 本稿は、一般的な情報の提供を目的としたもので、専門コンサルティング・アドバイスとしてご利用頂くことを目的としたものではありません。情報の内容は法令・経済情勢等の変化により変更されることがありますのでご了承下さい。
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THAIBIZ編集部
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