
カテゴリー: 会計・法務
公開日 2023.09.09
当職担当の回ではタイの知的財産権法それぞれについて詳細に説明している。 前回はタイの商標出願の場面においての類否判断の審査と、最高裁判所の基準について説明した。今回は、商標の類否判断に関する最高裁判決事例を紹介する。いずれも、最終的に出願商標は登録可能と判断された事例である。
<裁判所の判断>
本願商標は、先行商標とほぼ同じアルファベット(S、S、A、B)で構成されており、発音もほぼ同じである。そのため、全体的な外観や発音から出願商標と先行商標は類似していると判断できる。さらに、指定商品は双方とも鉄鋼製品であり、この点も類似している。 しかし、本願商標の需要者は、商品に対する高い技術力と認識を有する専門家や技術者であり、また、販売経路も一般の店舗ではなく直販を中心としたものであることから、混同は生じにくい。したがって、出願商標は、類似指定商品を指定する先行商標と類似しているものの、公衆に対するする混同が生じないことから、登録を認めることとする。
<裁判所の判断>
全体的な外観や発音が類似していること(注:語尾のKとXはタイにおける発音上に同一である)、指定商品がともに第1類の工業製品である点において双方は関連している。 しかし、商品の需要者や使用実態の点から検討すると、需要者は専門家であると断できる。また、両商標の使用場面において、商品の販売チャネルは異なる。したがって、本願商標は、商品の出所について需要者を混乱させるものではない。
<裁判所の判断>
先行商標の重要な部分は「N(図形)」、「CITRON」、「Nemiroff」の各文字部分である。さらに、消費者が通常、先行商標を「シトロン」と発音しているという事実も裁判所に示されている。出願商標が先行商標と発音が似ている同じ単語からなるため(注:タイにおいては語尾に「GE」があってもなくても発音は変わらない)、両商標の発音は類似する。
しかし、先行商標はその他の複数の要素から構成されており、その結果、全体的な外観は出願商標とは明らかに異なっている。そのため、発音が類似し、指定商品も類似ではあるが、両商標には混同が生じるほどの類似性はない。
以上の通り、審査段階で拒絶となっても、様々な事情が考慮された結果、裁判段階で登録になる場合も存在する。
一見すれば類似とみられる先行商標があっても、最終的な登録可能性を判断するにあたっては、全体的な外観、発音、指定商品役務の関連性、需要者、販売チャネルなどのすべての面で先行商標との差異を検討しておくことが重要である。

TNY国際法律事務所
日本国弁護士・弁理士
永田 貴久
京都工芸繊維大学物質工学科卒業、2006年より弁理士として永田国際特許事務所を共同経営。その後、大阪、東京にて弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所を設立し代表社員に就任。16年にタイにてTNY Legal Co., Ltd.を共同代表として設立。TNYグループのマレーシア、イスラエル、メキシコ、エストニアの各オフィスの共同代表も務める。
Email : info@tny-legal.com
URL : http://www.tny-legal.com/

THAIBIZ編集部


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