主導した事業が「稼ぎ頭」に ~戦略と行動の掛け算が生む圧倒的成果~

THAIBIZ No.156 2024年12月発行

THAIBIZ No.156 2024年12月発行深化する日タイの経済成長戦略

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主導した事業が「稼ぎ頭」に ~戦略と行動の掛け算が生む圧倒的成果~

公開日 2024.12.11

既存事業の海外展開の強化をミッションに来タイした、ミスミタイランドの江口知樹氏。手がけた事業は見事に軌道に乗り、ローカル顧客も増え、タイ拠点の売上を支える「稼ぎ頭」にまで成長した。圧倒的成果を出し続ける秘訣はどこにあるのか。在タイ歴7年目の江口氏に詳しく話を聞いた。

流通事業の海外強化をミッションに来タイ

Q. ミスミタイランドの事業概要と江口さんについて教えてください

株式会社ミスミグループ本社(以下、「ミスミ」)は1963年に創業し、部品の製造およびオンライン販売の事業を行っています。「時間戦略」をスローガンに掲げ、図面作成や見積依頼、納期などといった無駄を省くことによる価値ある時間の創出を目指しています。アジアには7つの拠点があり、1997年に設立したタイ拠点の社員数は約270人。日本人駐在員はピーク時には18人いましたが、ここ数年で現地化が進んだことにより、現在は4人まで減りました。

私は2013年にミスミに新卒入社して以来、ずっと海外勤務を希望していたことから、本社ではグローバルサプライチェーンの最適化など、海外法人の事業を支援する仕事を担ってきました。ミスミの事業は、自社製品を製造・販売するメーカー事業と、他社メーカーの製品を販売する流通事業「VONA(Variation & One-stop by New Alliance)」の大きく2つに分けられますが、ある日VONAの海外展開強化プロジェクトが立ち上がりました。真っ先に手を挙げ、念願の駐在切符を手に入れて2018年に来タイしました。

「自ら動いてもらうにはどうすればよいか」を考える

Q. タイでのビジネスについて、どのような印象をお持ちですか

日本と大きく異なると感じたのは、高いモバイル普及率です。タイの人々はオンライン滞在時間が非常に長いので、オンライン販売を手がけるミスミとしてその特徴を活かす方法を模索し続けています。

仕事の仕方という観点では、ローカル企業のオーナーや在タイ日系企業経営層など、意思決定できる立場の方々と接点を持ちやすい環境が特徴的だと思います。プライベートで培った人脈をビジネスに活かせる場面も多く、良い意味でオンとオフの区切りを明確にしないことが大切だと感じています。ローカルのサプライヤーとの関係構築においても、プライベートの時間を共に過ごすことを意識的に行ってきました。

Q. タイ人社員とのコミュニケーションで意識していることは

来タイ当時は20代後半だったので、自分より年上のタイ人部下とのコミュニケーションに悩まされる時期がありました。感情ではなくロジックで話をすることで相手が納得感を持って仕事をしてくれることに気が付いてからは、論理的な道筋を立てることを意識しています。

また、タイ人と一緒に働く中で、「自ら仕掛けて成果を出すことが働く喜びに繋がる」というモチベーションの高め方は万国共通なのだと認識しました。責任範囲を明確化した上で権限移譲し、成果が出るまでサポートするという仕組みづくりに注力しています。タイでの経験から「指示しないと動いてくれない」ではなく、「自ら動いてもらうにはどうすればよいか」を考えることが大切だと私自身も学びました。

駐在員として成果を出すには、ローカルとの協働が必須

Q. 流通事業強化プロジェクトについて詳しく教えてください改善のために取り組んでいることは

ミスミタイランドのオンライン販売サイトでは商品のバリエーションが限定的だったため、まずは日本の製品の輸出増加を計画していました。私は来タイ前の2017年頃から同計画に携わりはじめ、日本の輸出規制とタイの輸入規制を照らし合わせながら輸出戦略を立て、手順を設計し、ひたすら実行していく地道な作業を進めていました。ようやくタイで販売できる製品が一定数に達した頃、タイでの駐在がスタートしたのです。

タイ赴任後も、様々なチャレンジに直面しました。例えば、商品数が増えても、納期が長ければ顧客時間価値の向上には貢献できません。そのため本社倉庫での在庫管理に焦点を当て、流通事業の在庫戦略を立案。他部門での取り組みの成果もあり、現在では最短当日着荷という理想的な納期を実現することができています。

日本からの輸入品だけに頼らず商品の現地調達を増やすことで、価格の改善にも取り組んでいます。タイ人社員と一緒にローカルのサプライヤーを訪問するなどして調達先の増加に努めており、当初はなかなか相手にしてもらえなかったのですが、地道に関係性を構築した結果、今では全体の約半数を現地調達しています。

私だけではなく、タイ人社員の頑張りもあって、VONAはミスミタイランドの売上を支える重要な柱に成長することができました。

Q. 事業の強化が実現できた今、次なる挑戦は

2021年頃から、ミスミタイランドのマーケターの役割も担っており、VONAのプロモーションに力を入れています。コロナ禍でビジネスの潮流が変化し、売り手はオフライン営業からオンライン販売へのシフトニーズを持つようになった一方で、買い手もオンライン購入にハードルを感じにくくなりました。そのタイミングでオンライン広告を強化することで、実際に売上向上に繋げることができました。

また現在は、展示会などのオフラインマーケティングにも積極的にリソースを投入しています。定番の大型展示会だけでなく、地方で開催されている小規模展示会にも足を運びながら、新規顧客開拓に繋げる道筋を探っています。将来のお客様となり得る若手に認知いただくべく、大学で開かれるロボットコンテストに協賛するなどのアプローチも最近始めました。

戦略論をベースに、行動を積み重ねる

Q. 成果を出し続けられる秘訣は

ミスミが重要視している「戦略論」が土台にあります。高い目標を設定し、現実とのギャップを埋めるためのロジカルな戦略を立てて、それに沿って地道に行動を積み重ねていくことが、結局は一番の近道だと思っています。駐在前は「駐在員=数字の管理」といったイメージが強かったのですが、実際にはそうではありません。ローカルの人たちと関係性を築きながら、共に行動を重ね事業を作っていくことが、駐在員として成果を出すためには何より不可欠なのだと実感しています。


江口 知樹
Director Marketing and VONA
MISUMI(THAILAND)CO., LTD.

2013年、株式会社ミスミグループ本社に新卒入社。海外企画ユニットにて海外法人の経営企画業務を担った後、構造体事業部にてグローバルサプライチェーン最適化の支援などに従事。2018年5月より現職。

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THAIBIZ編集部

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