公開日 2022.11.01
ドイツ系の見本市運営大手メッセ・デュッセルドルフ(アジア)は10月5~7日、タイ・バンコクのバイテック国際展示場で、東南アジア最大規模となる総合インフラ展を主催した。今回は「国際ワイヤー&ケーブル・トレードフェア」「国際チューブ&パイプトレードフェア」「国際ファウンドリー(鋳物)トレードフェア&フォーラム(GIFA)」「国際冶金トレードフェア&フォーラム(METEC)」の4つの展示会の同時開催で、世界28カ国から200社以上が参加。参加企業の9割が外資系企業だった。
5日に行われたオープニングセレモニーでは、主催者のメッセ・デュッセルドルフ(アジア)のゲルノット・リングリング社長が登壇。「東南アジアの産業と経済成長を見ると、インフラ投資が経済価値を高める重要な誘因であることが分かる。現在、多くの国の政府や官民パートナーシップが多数のプロジェクトに投資している。例えば、(新型コロナウイルス収束に伴う)国境移動の再開後にすぐに利用できるよう、運輸、クリーンエネルギー、電気自動車(EV)車などさまざまなインフラ投資プロジェクトが実行されている」との認識を示した。
東南アジアを含むアジア地域の景気動向については「特に製造業、インフラ、建設などは回復傾向となっている」と指摘。国境移動の再開に伴い、2023年第4四半期までにさまざまな分野のインフラや建設投資が拡大し、建設資材、金属加工品、各種部品などの原材料に対する需要増加につながるだろうと述べた。その上で、多くの事業者は需要や経済の変化に対応するため、環境に優しいイノベーション、インテリジェントなシステム、データマネジメントなどのテクノロジー開発が必要だとの認識を示した。
リングリング氏はさらに、急速な経済発展を遂げている東南アジアでは、2030年までに都市化地域が全体の45%を占めるようになり、「インフラ整備や産業化に伴い、電線、ケーブル、パイプ、導管(Conduit)、鋳物(鋳造)産業は成長するだろう」と強調。タイでは、高速大容量規格「5G」技術の導入に伴い「電線・ケーブルの市場規模は現在550億バーツ以上になっている」と報告した。また、基本インフラである排水処理システム整備への投資拡大が要因となって、今後4年間の電線・ケーブル市場は年平均で6.1%成長するとの予測を明らかにした。
一方、同氏は東南アジアのパイプ市場の規模は、2028年までに248億ドルに拡大するだろうと予想。タイでは建設、自動車、機械、家電、包装の5つの産業でワイヤー、パイプ、ケーブルなどが使用されていると述べた。特に、タイの自動車産業は東南アジアで最も高い成長率を持つリーダーだと指摘。同氏はワイヤー、ケーブル、チューブ、導管、鋳物など製品別の市場見通しについて以下のように報告した。
(1)ワイヤー、ケーブル産業は地下・海底ケーブル、配電システムのアップグレード(スマートグリッド)、古い送電線のアップグレード(高張力化)、遠隔医療やテレビ会議などのインターネット技術などのへの投資増加により成長する見込み。2022年に1900億ドルだった市場規模は2028年にかけて、年平均で4.4%成長すると予想している。アジアの主要市場は中国、日本、インドで、 産業別では航空・宇宙産業、建設、石油・ガスなどエネルギー、IT・通信分野での需要が拡大する見通しだ。
(2)パイプ、チューブ、導管などのチューブ産業は石油・ガス産業、地下建設、液体輸送産業への投資拡大が寄与する。東南アジアを含む太平洋アジア地域は、石油・石油化学といった大規模産業向けチューブの主要市場であり、世界需要量17億トン超の44%を占めている。
(3)鋼鉄と鋳鋼(casting steel)産業では、金属鉱石の価格変動やインフレにもかかわらず、 コロナ収束に伴う国境移動の再開に伴い建設需要の回復で緩やかに成長すると予想される。また、省エネを目的とした建設資材の軽量化ニーズに伴い成長率は高まる見込み。
一方、タイファウンドリー(鋳物)工業会のピーラデート・ トンキットパイサン会長は「この産業は川上産業であり、80%はタイの自動車産業への供給で、その他は建設工事向けなどだ。また、日本や中国からのタイの鋳物産業への投資が復活しており、タイの部品製造業の成長チャンスが広がっている。鋳物産業は「インダストリー2.0」であり、タイ政府は現在「インダストリー4.0」に注力しているが、鋳物は基礎産業であるため持続的な発展は可能だと確信している」とアピールした。
TJRI編集部
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