
最新記事やイベント情報はメールマガジンで毎日配信中
公開日 2025.11.05
10月27日付のタイ紙ターンセタキによると、米中が激しく競うレアアース(希土類)資源をめぐり、ASEANが新たな戦略主戦場として浮上しているという。中国が世界シェアの7割超を握る中、米国は10月26日、タイ・ベトナム・フィリピン・インドネシアの4ヶ国と新たな供給網構築に向けた協定を締結。なかでもタイは世界第6位の生産国として急成長し、注目を集めている。

中国はすでにマレーシアに1億ドル規模の製錬所建設を進めるなど、ASEAN内での影響力を強化。一方で、米国もタイとの協定により、加工や人材育成分野での協力を推進している。
2024年、タイのレアアース生産量は前年比260%以上増の1.3万トンと急伸している。ナコンラチャシーマーにあるネオ・マグネクエンチ社(カナダ)の工場ではBYDのEV製造との連携が進み、カンチャナブリーや南部でも製錬・採掘の動きが加速する。国を挙げた探鉱マップ作成や環境対応技術の研究も進行中だという。
同紙は今後の課題として、①人材・技術開発、②インフラ整備、③環境基準対応、④米中間の外交的バランスを挙げている。戦略と国際連携の進め方次第では、タイが世界のサプライチェーンの中核を担う可能性もあるとし、ASEANが経済の主導圏を握りつつある今、タイの立ち位置と選択が地政学や産業構造を左右すると展望している。
電気自動車(EV)の世界販売トップBYDが、タイのメディアに初めて単独で登場した。10月29日付のザ・スタンダートによると、同紙のYouTube番組「THE SECRET SAUCE」で、アジア太平洋地域販売部門の劉学亮ゼネラルマネジャーがインタビューに応じ、同社の「技術のスケーリング」と「現地化」を軸とした戦略を語った。
BYDは1994年に携帯電話用バッテリー工場として創業。現在は研究開発要員12万人超を抱える技術主導の自動車メーカーに成長している。中国政府の補助金については「特定企業への優遇ではなく、開かれた政策」と強調。米欧との貿易摩擦には「最大の被害者は消費者」とし、生産拠点の分散を進めていると明かした。また、「現地生産・現地販売」戦略の効率化を図るため、タイでの工場建設を進めているという。
実は同社のタイ進出は突然ではなく、10年以上前からEVタクシー101台をバンコクで試験運用し、実走データを蓄積してきたことも紹介されている。同社はその成果をもとに、東部経済回廊(EEC)内にEV工場を1年4ヶ月で完成させた。現地調達率は50%超、従業員の9割以上がタイ人で、すでにローカルに深く現地に根を下ろしている。
また、タイ人消費者の懸念として挙げられるEVの「中古価格下落」問題についても、大量生産によるコスト低減や、1万平方メートル超の部品センター設置などのアフターサービスで信頼構築を図っている。
同紙は最終的に、BYDはタイを「アジアのデトロイト」と位置づけ、自動車産業のサプライチェーン体制を高く評価していると紹介。その上で、BYDは単に自動車を販売するためにタイに来ただけではなく、工場、人材、そしてサプライチェーン構築を通じて、タイに深く根を下ろそうとしていると総括している。
10月27日付のバンコク・ポストによると、タイ政府は、急増するオンライン詐欺を国家的課題と位置づけ、規制強化や越境犯罪への対応を進めている。中でもタイ・ミャンマー・ラオス・カンボジア国境地帯は、パンデミック後に詐欺拠点の温床となっており、国連は「数十万人が強制労働させられている」と警告する。
タイは10月末、国連のサイバー犯罪防止条約への署名を予定。通信・IT省は詐欺拠点に対するサイバー戦を含めた法整備を進め、司法省は全国的な被害に対応する特別委員会を設置。国家放送通信委員会(NBTC)も、SIMボックスの登録制導入や国境での電波制限により、越境型の詐欺通信遮断を強化する。
2025年1〜4月の被害額は76億バーツで、成人の6割が何らかの詐欺被害を経験したとされる。被害の中心は投資詐欺やSMS・電話を通じた接触型詐欺で、1人あたりの平均被害額は約1万3,000バーツに上る。
こうした状況は観光業にも影を落としており、1〜10月の外国人旅行者数は前年比7.4%減、中国人は35%減、韓国人も18%減となった。
タイでは今、SNSやライブ配信を通じて、CEO自らが“顔”となり顧客とつながる「CEOブランディング」に注目が集まっているという。10月20日付のバンコク・ポストが伝えている。
PC販売「iHAVECPU」のピラドン・ヘムヤーコンCEOは、ライブ配信を軸に中古パーツ販売から事業を拡大。わずか4万バーツのスタートアップを30億バーツ企業に成長させた。2024年時点で配信は900回を超えており、「楽しく、ためになる、リアルであること」を軸にした発信スタイルで、価格競争ではなく、信頼と一体感による差別化を志向する。
フラッシュグループ創業者のコムサン・リーCEOは、新事業「マッド・ユニコーン」の立ち上げに合わせて初のライブ配信を実施。干しナツメ商品「Jujub」の紹介を通じて、顧客との接点づくりを始めている。
フリーランス向けのマッチングサービスを営む「Fastwork(ファストワーク)」のCKチョンCEOは、若年層の誤ったファイナンス意識に警鐘を鳴らし、SNSやポッドキャストを通じて投資やお金に関する情報発信を続けている。「有名になるためではなく、社会を変えるために始めた」と語る姿勢が支持を集める。
タイの暗号資産(仮想通貨)取引所運営最大手ビットカブ(Bitkub)のジラユット・サブシーソパーCEOは、創業当初から誰も理解していなかった“ブルーオーシャン”市場で、自らを通じて暗号資産の教育と普及に取り組んできた。「個人と企業のブランドは表裏一体」と語り、現在は高齢社会問題にも挑み、「タイを長寿社会のハブにする」という次なる使命を掲げている。
ただし同紙では、CEOの発信が企業の信頼やブランド価値を高める戦略として有効である一方、個人への依存が強くなりすぎればリスクにもなりうるとも示唆している。

THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック / タニダ・アリーガンラート / 和島美緒

「レアアース覇権争い、ASEANが新たな舞台に」「技術拡大と現地化で攻めるBYDのタイ戦略」
ニュース ー 2025.11.05

ミャンマーの民間警備サービス法(下)
会計・法務 ー 2025.11.04

「次の地震」備える投資拡大 ~ショーボンド合弁に引き合い急増~
ビジネス・経済 ー 2025.11.04

ハラル市場を狙うベトナム
ASEAN・中国・インド ー 2025.11.04

マヒドン大学発スタートアップMUI Roboticsがパートナー募集 ~匂いを“見える化”、製造・環境分野で日本企業との協業を模索~
スタートアップ ー 2025.10.30

直販で築いた現地経営力で潤滑油市場を切り拓く ~出光アポロタイランド 公荘雄一社長~
対談・インタビュー ー 2025.10.28
SHARE