
カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
連載: ONE ASIA LAWYERS - ASIAビジネス法務
公開日 2025.12.03

カンボジアでは2025年7月から10月にかけて、外国企業の事業活動に影響を与える重要な法令が複数公布された。本稿では、日本企業が特に留意すべき法令について、企業実務の観点から要点を整理し概説する。
目次
2025年9月17日、労働職業訓練省は2026年度の縫製産業における最低賃金を定める省令第214号を公布した。
主要ポイント
縫製産業(繊維・縫製・製靴・旅行用品及び鞄産業)の最低賃金が、月額210米ドル(試用期間は208米ドル)に引き上げられる。2026年1月1日から適用される。
2025年8月8日、カンボジア政府は米国から輸入される商品の関税率を0%とする政令第139号および実施省令第632号を発出した。
主要ポイント
米国原産で米国からカンボジアに輸入される商品に対して関税率0%が適用される。ただし、中古品は対象外である。関税免除の適用を受けるためには、2025年8月8日以降に米国から出荷された商品である必要がある。
実務上の留意点
米国から部品や原材料を輸入している日系企業にとっては、調達コストの削減につながる可能性がある。ただし、適用要件として「米国原産」であることが求められるため、原産地証明書等の必要書類を事前に確認することが重要である。
2025年10月30日、税務総局はキャピタルゲイン税に関する省令第496号の施行延期を発表した(通達第34236号)。
主要ポイント
キャピタルゲイン税の施行は2026年1月1日まで延期された。
実務上の留意点
不動産や株式等の資産売却を検討している企業にとっては、税務計画を見直す時間的余裕が生まれた。ただし、2026年1月1日以降は課税対象となるため、売却のタイミングや税務上の影響を慎重に検討する必要がある。
2025年9月25日、商業省は商標登録システムの完全ペーパーレス化を発表した(告示第3210号)。
主要ポイント
2025年9月30日からペーパーレス商標登録システムの運用が開始された。これにより、商標登録手続きは完全に電子化され、商標登録に関するすべての書類が電子形式で発行されるようになった。
2025年10月14日、経済財務省は出産休暇前に一括支給される給与に対する給与税の申告・納付義務を明確化した(通達第14号)。
主要ポイント
従業員が出産休暇中に受け取る給与について、企業は月単位で給与税を記録・申告する必要がある。これらの給与は、出産休暇前に一括で支払われた場合でも、該当する月ごとに記録・申告する必要があり、支払月に給与税を合算して記録・申告してはならない。
2025年8月27日、投資法実施政令の附属書2を改正する政令第161号が公布された。
主要ポイント
再生可能エネルギーによる発電に係る投資活動が、適格投資プロジェクト(QIP)投資活動として追加され、法人税の免税期間、輸入関税の免除、付加価値税(VAT)の免除などの投資優遇措置を受けることが可能となった。
実務上の留意点
太陽光発電、風力発電、バイオマス発電等の事業を検討している日系企業にとっては、投資優遇措置を活用できる機会となる。ただし、QIPの認定を受けるためには、カンボジア開発評議会(CDC)への申請が必要であり、投資規模、雇用創出効果、技術移転等の要件を満たす必要がある。

パートナー弁護士(日本法)
日本・カンボジア
One Asia法律事務所/MAR & Associates出向中
村上 暢昭 氏
日本国内の法律事務所で3年半勤務後、カンボジアの法務コンサルティング会社JBL Mekong、その後カンボジアの法律事務所MAR & Associates Law Firmに出向。
日本での国際企業法務対応経験・不動産取引業顧問先対応経験を基に、カンボジア進出、戦略の策定、進出時のリーガルフォロー、紛争発生時の対応等および、カンボジアを含むASEANにおける不動産取引に関するスキームの策定、リーガルフォロー等を担当。また海外在住邦人相続協会を立ち上げ、同協会の共同代表として、海外での相続案件に関する対応も行う。
One Asia Lawyers
One Asia Lawyers Groupは、東南アジア・インドの法律に関するアドバイスを、アジア各国のネットワークを基礎として、シームレスに、ワン・ストップで提供するために設立された法律事務所です。
Website : https://oneasia.legal

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