カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2022.12.07
タイ工業連盟(FTI)傘下で、主にサプライチェーン効率化のための国際標準コード「GS1」のタイでの普及活動を担う「GS1 Thailand」は11月22日、バンコク国際貿易展示場(BITEC)で2022年度の年次総会を開催した。「消費者の安全と保護に貢献する次世代の小売ビジネス」をテーマとする同総会では、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせてビジネス諮問委員会(ABAC)が開催した「CEOサミット」の議長を務めたクリアンクライFTI会長がタイ経済の現状や同サミットでの取り組みを紹介する特別講演を行った。
クリアンクライ氏は「タイ経済の挑戦と次のステップ」という題の講演で、まず世界経済の現状について「景気後退の兆しがある。インフレ、気候変動、地政学的リスク、米国と中国間の貿易、テクノロジー、通貨をめぐる戦争が原因で世界経済は減速しつつある」と概観した。
続いて、国際通貨基金(IMF)の10月のリポートを引用し、米国、欧州連合(EU)などで景気後退の可能性が高まり、2021年には6.0%だった世界の経済成長率は2022年には3.2%に低下すると予測していると紹介した。一方、2021の成長率が1.5%だったタイは2022年が2.8%で、2023年は3.7%に上昇する見込みで、「タイは他の地域より経済回復ペースは早い。これは観光業が急速に回復している結果だ。また、(ドルなどに比べた)バーツ安が輸出や観光に好影響を与えている。一方で、タイの産業界はまだ別の課題に直面している。例えば、10月のインフレ率が5.98%(商務省発表)となり、エネルギーコスト、生産コストの上昇や、政策金利が1%に引き上げられ、今後も上昇傾向にある問題など、タイ経済にはまだ警戒要因がある」と述べた。
続いてクリアンクライ氏は11月16日~18日に開催された「APEC CEO SUMMIT 2022」で、民間産業界代表としてAPEC首脳会議に対し、アジア太平洋地域の経済を発展に向け次のような提言を行ったことを報告した。
(1)経済構造改革を加速するためのアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)議論の見直し
(2)サイバーセキュリティのためのデジタル・インフラ構築
(3)中小零細企業(MSME)の持続可能な事業力強化
(4)生産効率を高めるための持続可能性強化と新技術の導入、バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデルの採用
(5)景気回復を加速させるためのマクロ経済政策、金融財政政策を導入
クリアンクライ氏はまた、「企業はこれから、環境問題が深刻化する中で利益の最大化だけを考えるのではなく、世界の持続可能性を考えていかなければならない。これがAPEC CEO サミットの核心だ」と強調。気候変動が世界の主要課題となる中で、タイはサミットで「Bangkok, world of BCG model」を提案したが、これはタイを含むアジア太平洋地域の経済を包括的、持続的、体系的に発展させるための基盤を構築するのが目標だとし、「これは世界の環境問題の解決と同時に、タイのビジネスチャンスにもなる。BCGモデルを用いて、APEC首脳ととともに、持続可能な世界にするために努力していく」と訴えた。
一方、同氏はタイ工業連盟(FTI)会長として、小売業は顧客中心主義を貫くべきだと主張。現在、タイの小売業界では長い間、「1次元バーコード」を使用してきたが、商品識別コード(GTIN)の入力にしか対応できないため、今日の消費者や企業のニーズを満たしていないと指摘した上で、「バッチ/ロット番号」、シリアル番号、賞味期限、消費期限、包装日、重量、価格など、さまざまな情報を盛り込むことができるQRコードなどの「2次元バーコード」を導入するべきだと提言した。
TJRI編集部
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