カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2022.10.18
アジアの大手展示会運営会社インフォーマ・マーケッツは9月21日から4日間、バンコク都心にあるクィーンシリキット国際会議場(QSNCC)でタイ・ホテル協会、タイ・レストラン協会、タイ・バリスタ協会など食品、ホスピタリティー業界の業界団体多数との共催の大型展示会「フード&ホスピタリティー・タイランド」を開催した。展示会には東京都中小企業振興公社が運営する日本企業のブース出展もあった。今回は同時開催されたタイ・ホテル協会(THA)の月例会合の様子を中心に紹介する。
インフォーマ・マーケッツによると、この展示会は従来、「フード&ホテル・タイランド」という名称で28年以上続いてきた伝統あるイベントで、今回は、食品、観光、ホテルだけでなく、スパ、病院、小売、ロジスティクスなどホスピタリティー関連産業を幅広く対象とする展示会にグレードアップして行われた。日本やイタリアなどの海外からの出展もあった。
開会に際してTHAのマリサ会長は、今年下半期にはタイに多数の観光客が戻ってくるとともに、ホテル業界も回復が予想され、今年の観光産業は大きな回復の始まりの年になるだろうとのコメントを寄せた。また、タイ・レストラン協会(TRA)のタニワン会長は、「レストラン業界は、観光産業の他の業界よりは新型コロナウイルス流行の影響は少なかったと思われる。タイ政府が観光客をより多く受け入れるために国を解放したことで消費は増えていくだろう」との見通しを示した。
21日にQSNCCで同時開催された、タイ・ホテル協会(THA)の月例会合ではまず、ホテル運営プラットフォームであるゲストライン社のターリン・セッティー氏が、最近の観光産業に関するさまざまなデータに基づき最新情勢を分析。
「2005年から2021年までの統計を見ると、外国からタイを訪問する観光客の数は年々増加し、ピーク時の2019年には3900万人が訪問した。 しかし、新型コロナウイルス流行後の外国からの旅行者数は2020年には670万人、2021年には50万人以下に激減した。一方、今年はすでに500万人が戻り始め、年末には1000万人の観光客が来訪すると見込まれているが、まだピークを大幅に下回っている。(コロナ前に)タイを訪れる観光客の約3割が中国人で、中国がまだ開国していない現状では、タイ旅行者数がピーク水準まで戻るのは難しいだろう。一方、供給面ではホテルの客室数が大幅に増えている。例えばバンコクのホテル客室数は、2010年の8万2000室から、今は20万室まで増加した」と述べた。結局、「需要(観光客数)がまだ少ない一方で、供給(ホテル客室数)が過剰という状況であり、市場は混乱状態だ」との認識を示した。
続いて、タイ・ホテル協会(THA)のマリサ会長はホテル業界の状況や協会の活動について報告。THAは、タイ中央銀行と共同で、ホテル事業者の課題に関する調査を実施したが、ホテル運営会社が主に懸念しているのは、①タイのインフレ率の上昇 ②予想以上に少ない外国人観光客 ③労働力不足-などの問題だと指摘。また調査では、4つ星以上のホテルの収入が通常の50%以上まで戻すなど先行して回復していることが分かったという。その上で同会長は、ホテル業界の活性化を支援するために、さまざまな機関と連携しており、特に人手不足問題、土地税の控除、ホテルでの酒類販売規制の免除など、ホテル産業の回復が早まるようTHAは取り組んでいると強調。「THAはこれらの困難な課題を解決し、1~2年後には確実に復興できると信じている。この難局を乗り越えるために、すべての企業家と一緒に立ち向かっていく」と訴えた。
その後、THA年次総会では、「バンコク観光とホテル業界のビジョン」と題してバンコク都のチャチャート知事による特別講演が行われた。同氏は、バンコク都庁がバンコク観光の一つの原動力になるとアピールし、次のような5つのトピックを説明した。
(1)コロナ後の備え
現在、コロナの新規感染者数は、バンコク都が管理できる数になった。病床稼働率は23.74%にとどまっており、ワクチン接種率は2回接種が100%以上、3回接種が70%以上(2022年9月14日現在)だ。医療体制も整備され、バンコクは観光客の受け入れ準備態勢は万全だ。
(2)バンコク都の強み
バンコクの物価は安い。マーサーの2022年度生活コスト指数で、世界227カ国の都市中106位だ。総合的な旅行インフラを持っている。240年の歴史があり、多様性を受け入れる多文化社会もある。また、16万室以上のホテルがあり、平均宿泊料金はわずか約2000バーツで、これらがバンコク旅行の特徴となっている。
(3)バンコク都庁の政策の方向性
バンコクは観光地としては世界一だが、住みやすい都市ランキング98位だ。つまり住民は不満だが観光客は満足しているということ。バンコク都庁は、バンコクを魅力的な都市にする支援政策を通じて、世界の住みやすい都市トップが50位入りを目指す計画を持っている。人々の旅行、勤務、投資を増やすことに貢献する。
(4)観光分野での推進プロジェクト
バンコク都庁はチャトチャック市場を世界的な観光地に押し上げ、多国籍企業を呼び込み、世界市場に向け「メード・イン・バンコク」の製品を作る。さらに公共の場での音楽パフォーマンスや映画上映などバンコクのフェスティバルを世界のカレンダーに入るようにするというアイデアもある。ナイトクラブやパブなどの娯楽施設の閉店時間については、一部地域では午前4時まで延長する案を支持する。夜間の観光促進が狙いで、深夜は気温も下がり、交通量も少なくなるのが夜間観光のメリットだ。だた、娯楽施設の閉店時間の延長には政府の承認が必要であり、地域住民や旅行者など関係者間の利害のバランスを取ることも重要だ。
(5)バンコク都庁の改善ポイント
バンコク都庁は職業訓練など多くの分野で改善すべき課題がある。例えば、コロナから回復した後の労働力不足の問題では、労働力を拡充するとともに、観光客をだますガイド、割高な値段を吹っ掛けるなどの問題を解決する必要性がある。その上で、ホテルビジネスは830億バーツ以上の経済価値を生み出しており、2020年には400万人の雇用もあり、とても重要だ。バンコク都庁は、観光ビジネスの回復のために、観光ビジネスかかわるすべての人を支援することに最善を尽くす。
TJRI編集部
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