カテゴリー: 組織・人事
公開日 2024.07.17 Sponsered
企業のグローバル化に伴い、タイを含む海外拠点の人的資本がより一層重要視されるようになった日本企業。一方で、タイ拠点は採用難や人材定着率の低下に悩んでおり、課題は山積みだ。グローバル競争が激化し、対応が急務とされる中、今取るべき人事アプローチとは。経営戦略に基づいたリーダーシップ開発を専門とする株式会社マネジメントサービスセンター(以下、MSC)の取締役 福田俊夫氏は、「本社戦略に紐づいた人材開発が鍵であるため、私たちのような在日企業の存在をうまく活用してほしい」と読者に呼びかける。
目次
福田氏によれば、在タイ日本企業が取り組むべき第一歩は「現在の社員の能力を正しく把握すること」だ。一人一人の強みと未開発能力を把握した上で、本社の経営戦略に基づき適材適所を徹底することが急務だという。同氏は「特に優秀な人ほど辞めてしまう状態は企業にとって大きな損失だ。定着率を上げるためにも、早期にその人の能力を把握しキャリアをプランニングすることが大切だ」と、なるべく早い時点で潜在的なコアメンバーを見極めることの重要性を強調する。様々な能力を持つ人材を広く採用し、その中から将来性が見込まれる人材を特定し育成する体系的な仕組みを「アクセラレーション・プール」と呼ぶが、既に日本で実践されている同アプローチが、タイでも通用するとの見込みを福田氏は持っている。さらに同氏は、「最近のタイ人経営者の多くは、欧米式のリーダーシップを学び、最新のマネジメントスタイルで業績アップを実現している。優秀な若手タイ人ほど、こういった企業に流れている実態がある」と、待ったなしの状況であることを強調した。
「当然ながら、能力を把握するだけでは不十分だ」と同氏は続ける。本社の経営戦略を実現するために、その人をどのポストに配置すればよいのか、どの能力を開発すべきか、どのようにトレーニングすればよいのか、といった観点での検討と実践が欠かせない。単純に本社と海外といった拠点の括りでトレーニング内容を変えるケースも多いが、本来ならばグローバルで社員の能力マップを可視化した上で、経営戦略の実現手段としてのトレーニングを実施することが理想的なのだという。
MSCが提供するアセスメントでは、社員が架空のシミュレーションにおいて、とった行動をコンピテンシーで測り、彼らのコンピテンシーを可視化することで、経営戦略が実行される能力が現状でどのくらいあるかが判断される。その戦略実行に必要なコンピテンシーは、明確な昇格基準の設定にも活用ができるという。また、アセスメント結果をベースとしたトレーニングプログラムの提供も行っている。これらサービスの具体的活用方法として福田氏は、いくつかの事例を挙げた。世界各国に複数個所の拠点をもつA社は、共通アセスメントを多言語展開し、世界中の全社員に受けさせた。国籍や性別、年齢などは一切問わず、アセスメント結果をベースに「戦略の実現において必要なコアメンバー」と見なされた社員をキーポジションに選定した。また別のグローバルカンパニーB社では、複数回のM&Aでミックスされてしまった組織カルチャーを統一させる手段として、世界中の全拠点におけるマネジャーに共通のトレーニングプログラムを実施。戦略実現のために欠かせないカルチャーや行動習慣作りにも貢献したそうだ。「さらに先を行くC社の事例もある」と、同氏は続ける。C社では、本社の戦略が改訂されるタイミングで全拠点向けのトレーニング内容も一新しており、まさに「戦略に紐づいた人材開発」を実践しているという。
任期付きで赴任することの多い在タイ日本企業の駐在員が、戦略に紐づいた人材開発を実施したい場合には、どのような使い方が考えられるだろうか。福田氏は、「①来タイ直後にまずタイ人社員の能力を把握し、②アセスメントで組織全体の強みと弱みをマップ化し、③さらに本社戦略に基づき選抜された社員一人一人の能力開発に取り組み、昇格基準も設定する。この3ステップのみならば、3年ほどでできることだ。ここまで実施した上で後任に引き継ぐことができれば、持続可能性も見込める」と説明する。この場合、海外拠点の駐在員や人事担当者だけで取り組むのではなく、本社の掲げる最新の経営戦略を理解し把握した上で、本社と一体感を持って実行することが欠かせないという。
人事戦略の成功の鍵は「本社との一体感」にあるようだ。MSCはこの点においても、強みを持っている。これまで国内の大手企業を顧客としサービスを展開してきた同社は、「本社と海外拠点を繋ぐ架け橋的な役割も担うことができる」という。福田氏は「本社だけ、現地だけ、では一体感が生まれず成果が出ないため、海外拠点のニーズも把握した上で本社に対しても啓蒙していく。例えば在タイ駐在員が取り組みを実践するために必要なサポートについて、代わりに人材開発のプロとして私たちが本社に支援を提案することも可能だろう」と、本社との繋がりを持つ強みについて強調した。
社員の能力把握やトレーニングは、目先の売上向上が目的ではない。日本企業がグローバル競争に打ち勝つために、必要な「戦略」なのだ。福田氏は日本企業の海外拠点の現状について、「人材像の共通言語に互換性がない」と例える。本社の経営戦略と人事戦略は日本国内だけではなく海外拠点でも一体感のあるものが必要である。同氏は「互換性を生み出すためのツールが、アセスメントとトレーニングだ。これまで人材開発に課題感がありつつも対応できていなかった日本企業が、円安や人口減少を契機にようやく着手しようとしている。大きな転換時期だからこそ、新しい取り組みに慎重になり躊躇する気持ちも生まれるが、私たちはそんな企業の背中を押す存在となりたい」と、展望を語った。
福田氏は以前、アメリカ人上司から「いくら磨いても、石ころは石ころだ。ダイヤの原石を見つけて磨かなければ意味がない」と言われたそうだ。しかしアセスメントに出会って、「人は配置や能力開発によって、石にもなれるしダイヤにもなれる」と気が付き、実際にそれを証明してきたという。最後に同氏は「在タイ日本企業の全社員をダイヤの輝きに磨き上げるべく、これまでの経験と実績を総動員してサポートしたい」と、読者へのメッセージを述べた。
▼人材アセスメントについては、こちらのコラムでも詳しく解説しています。
「マネジメントの効率化とスキルの普及」をミッションに掲げ、1966年に日本で設立。経営戦略に基づいたリーダーシップ開発を専門とし、法人向けの人材アセスメントとスキルトレーニングの提供を通じ顧客企業のリーダー発掘・育成を支援している。1973年に米国のDDI社(Development Dimensions International)とパートナーシップを結び、米国の人材アセスメント手法を初めて国内に取り入れ展開させる。約50年間にわたり世界90ヵ国以上に、様々な人材開発プログラムを多言語展開。日本での取引実績は年間700社に上り、アセスメントは延べ約80万人、リーダーシップ・トレーニングは延べ約150万人に提供している。
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