最新記事やイベント情報はメールマガジンで毎日配信中
カテゴリー: ニュース
公開日 2026.07.24
月島ホールディングス傘下で、タイでプラント設計などを手がけるTSKエンジニアリング(タイランド)=TET=は、顧客の生産プロセスの開発や高度化を支援する研究開発(R&D)センターを開設した。同社は日系向けEPC(設計・調達・建設)事業を柱としてきたが、今後は月島グループが強みとする、ろ過や粉砕、攪拌(かくはん)などの単体機械事業も強化する方針。地場企業の開拓も進め、事業モデルの転換を図っていく。

新センターの名称は「月島ホールディングスASEAN R&Dセンター」。首都バンコク北郊パトゥムタニ県の研究施設「タイランド・サイエンス・パーク」内で今月1日に開設した。化学や食品、農業、バイオ燃料、バイオケミカル、次世代自動車関連材料などの分野を対象に、生産プロセスの開発や高度化を支援する。センター開設に伴う機械や設備への投資額は約9,000万円。
月島ホールディングスの川崎淳社長は開設の狙いについて、「ビジネスモデルを変えるためだ」と説明する。(「崎」の字は、正しくはつくりが「立」と「可」) これまでTETは日系企業向けのEPCを主力としてきた。ただ、タイ国内経済の変調や中国からの資機材の過剰流入などで、従来型のEPC事業を取り巻く環境は厳しさを増している。顧客の設備投資への姿勢も変化している。かつてのように巨大プラントを建設し、大量生産を前提とする大型投資は少なくなり、現在は数億円規模に収まるような設備投資が中心だ。事業や技術のサイクルが速まる中、投資回収に対する見方は短期化・厳格化しており、顧客は付加価値の高い新製品を選んで生産する方向に進んでいる。さらに足元では中東情勢の影響も顧客の投資判断を慎重にしている。
川崎氏は、こうした中で導いた結論が「『ものづくり』への原点回帰だった」と話す。日本国内で製造した単体機械を販売するだけでなく、ビジネスモデルの転換期として、現地でのニーズや仕様に沿った単体機械のプランニングやプロセス設計、機械製造が必要だと判断した。その施策の一環として、タイにR&D機能を設け、地場の顧客ニーズに沿った検証環境を整えた。

地場顧客層を開拓
新たなビジネスモデルでは、地場の顧客層も広げていく方針だ。TETはこれまで日系企業向けが中心だったが、今後は地場企業や東南アジア諸国連合(ASEAN)域内企業の開拓を強化する。センターが入居するタイランド・サイエンス・パークには多くの地場企業が拠点を構えており、接点拡大と認知向上が見込める立地だ。
川崎氏は、将来的な売り上げ構成はEPCと単体機械、日系と地場の「4象限」でバランスを取ることが望ましいと説明する。日本国内では単体機械の販売に加え、そこから生じる定期保守などが収益の大きな割合を占める。TETでも同様のビジネスモデルを構築し、需要変動が大きいEPCへの依存度を下げる狙いもある。

ろ過・粉砕・攪拌機械で顧客の試験支援
ASEAN R&Dセンターに導入した試験設備は、微粒子のろ過・洗浄に使う「BoCrossフィルタ」、粉体を微粉砕するサイクロンミル、乳化・分散・高速攪拌に使う攪拌機など。設備導入前の顧客が実機に近い条件で技術検証ができる。TETは顧客のラボ試験からパイロット試験、実証設備の設計・導入検討までを一貫して支援し、開発期間の短縮や設備投資判断の精度向上につなげる。
センターは当面、小規模に始める「スモールスタート」と位置付ける。将来的には、月島グループが千葉県八千代市に置く大規模なR&Dセンターと同等の機能を持たせたい考えで、顧客ニーズに合わせて機械設備を充実させていく方針だ。

微粉化・微粒子化に商機
月島グループの海外売上高比率は年によって変動するものの、足元では約1割。ASEAN地域は、韓国・台湾と並ぶ海外ビジネスの主戦場と位置付ける。ASEANでは、グループ全体で主力とする水環境事業も一部手がけるが、メインはEPCなどの産業事業だ。
TETの売上高は2018年に12億バーツ(約55億円)と過去最高を記録したが、その後は新型コロナウイルス禍で顧客の投資が停滞し、売り上げが急減した。主な顧客には接着剤や樹脂、ゴム、塗料など自動車関連産業向け製品のメーカーが多く、タイの自動車産業の停滞が業績に影響する。足元も好調とはいえない日系自動車産業だが、川崎氏は「一時的な落ち込みはあっても必ず揺り戻しがある」とし、引き続き底堅さがあるとの見方を示した。
今後のタイの成長分野としては、資源リサイクルや医薬、化粧品、バイオ、農業関連を見込む。攪拌機を手がけるグループ会社のプライミクスは化粧品業界向けが業容の約半分を占めることを例に、川崎氏は「所得が増えれば、美容や健康といった分野への需要が高まり、投資も増える」とし、微粉化や微粒子化に今後の商機があるとの見方を示した。

NNA ASIA
12カ国・地域から1日300本のアジア発のビジネスニュースを発信。累計100万本以上の圧倒的な情報量で日系企業のビジネス拡大に貢献します。
NNAの購読について詳細はこちら

日ASEANの経済成長戦略を加速する 〜官民連携の枠組み「DISG」、共同宣言を採択〜
ASEAN・中国・インドSponsered ー 2026.07.24

月島HD、タイにR&D拠点 ~EPC中心から転換、地場も開拓
ニュース ー 2026.07.24

タイ26位、伸び悩む競争力 〜AI時代の高度人材育成が急務
ニュース ー 2026.07.17

「マツダが74億バーツ投資、MHEV生産強化」「AI診断等が牽引、拡大する医療テック市場」
ニュース ー 2026.07.15

東急がアジア田園都市構想 〜インドシナも視野に模索
ニュース ー 2026.07.10

打倒・競合!カルビーの大構造改革
特集 ー 2026.07.10
SHARE