
カテゴリー: 会計・法務
連載: 知らなきゃ損する!タイビジネス法務 - GVA / TNY法律事務所
公開日 2026.09.10
タイで事業を展開する日系企業にとって、定時株主総会(Annual General Meeting:AGM)は毎年実施すべき会社法上の重要な手続きである。財務諸表の承認や取締役の選任など、会社経営に関する事項を決定する場である一方、「いつまでに開催すればよいか」「どのような手続きが必要か」といった実務上の疑問を持つ担当者も少なくない。
タイ民商法では、株主総会は「定時株主総会(AGM)」と「臨時株主総会(EGM)」の2種類が定められている。本稿では、このうち毎年開催するAGMを中心に、日系企業が押さえておきたい実務上のポイントを紹介する。

AGMは会社設立後6ヶ月以内に最初の総会を開催し、その後は少なくとも12ヶ月に1回開催する必要がある。また、会計年度終了後4ヶ月以内にAGMを開催し、財務諸表の承認を受けなければならない。
決議は、内容に応じて「普通決議」と「特別決議」に分けられる。普通決議事項には、財務諸表の承認、利益処分(配当)の決定、取締役の選任・解任、取締役・会計監査人の報酬決定などがある。一方、定款変更、増資、減資、解散、合併など会社の根幹に関わる事項は特別決議事項とされる。定款で株主総会の決議事項を追加している場合は、その定めに従う。
株主総会を開催するためには、株主への招集通知も、法令に従って適切に行わなければならない。普通決議事項のみの場合は開催日の7日前まで、特別決議事項を含む場合は14日前までに、株主名簿に記載された全株主へ書留郵便により招集通知を送付する。
なお、2023年の民商法改正により新聞公告は原則不要となったが、無記名株式を発行する会社や、定款に新聞公告を行う旨の定めがある会社については、引き続き新聞公告が求められる。招集通知は法定期限内に送付する必要があるため、議案や必要書類を事前に確認し、余裕を持って準備を進めることが重要である。
AGMを含む株主総会では、株主本人が出席できない場合には、代理人による議決権行使も可能である。ただし、委任は書面で行い、委任状は株主総会開催時までに議長へ提出しなければならない。日系企業では、この制度が広く利用されている。
また、株主総会を有効に成立させるためには、法律で定められた定足数や決議要件を満たす必要がある。定足数は、会社資本の4分の1以上を有する2名以上の株主(代理人を含む)が出席することである。さらに、普通決議は出席株主の議決権の過半数、特別決議は出席株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要となるため、議案に応じた決議方法を事前に確認しておくことが重要である。
AGMは開催して終わりではない。例えば、取締役の変更を決議した場合は、14日以内にタイ商務省事業開発局(DBD)へ変更登記を申請する必要がある。また、AGM後14日以内に株主名簿の写しを登記官へ提出することも求められる。そのため、AGM当日だけでなく、開催後の手続きまで見据えて全体のスケジュールを管理することが重要である。
AGMは毎年行われる定例業務であるが、会社法上の重要な法的手続きでもある。毎年実施するからこそ、「前年と同じ対応で十分」と考えず、その年の議案や法令上の要件を確認しながら適切に運営することが、手続き上のミスを防ぎ、円滑な会社運営につながると考える。

TNY国際法律事務所
日本国弁護士・弁理士
永田 貴久 氏
京都工芸繊維大学物質工学科卒業、2006年より弁理士として永田国際特許事務所を共同経営。その後、大阪、東京にて弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所を設立し代表社員に就任。2016年にタイにてTNY Legal Co., Ltd.を共同代表として設立。TNYグループのマレーシア、ベトナム、メキシコ等の各オフィスの共同代表も務める。
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