タイの電動二輪車市場の概況

THAIBIZ No.150 2024年6月発行

THAIBIZ No.150 2024年6月発行味の素が向かう究極のバイオサイクル

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タイの電動二輪車市場の概況

公開日 2024.06.07

タイの電動二輪車の販売台数は、2023年には前年比120%増の2万2,000台に到達した。2023年から、国内生産の電動二輪車に対して、補助金が支給されたことが市場拡大につながっている。ただし、近隣諸国に比べると、まだ市場規模が小さく、充電・バッテリースワップのインフラ整備も進んでいない状況である。本稿ではタイの電動二輪の状況と普及の展望と課題についてとりまとめる。

近隣諸国との電動二輪車市場の比較

主要ASEANの二輪車市場であるタイ、ベトナム、インドネシアと、世界2位の二輪車市場であるインドの4ヵ国を比較する(図表1)。

ASEAN、インドの電動二輪車市場(2023年)
出所: AISI、JCC、Marklines等からNRI作成

電動二輪車市場で圧倒的に大きいのは、90万台を超えるインドである。インドではラストワンマイル物流サービス市場が活況化しており、ラストマイル物流を中心とするフリートユーザーが電動二輪にシフトしていることが市場成長に大きく貢献している。

ベトナムは、約30万台とASEANで最も市場が大きいが、その過半数は鉛バッテリーを使った安価なモペッドタイプである。インドネシアは6万2,000台であり、昨年から700万ルピア(約7万円)の補助金が支給されてから前年に比べて3倍以上に伸びている。国策として国内で産出されるニッケルを使ったリチウムバッテリーの量産化を目指しているために、ASEANのなかでは最も積極的に二輪車の電動化を進めていることが背景にある。

ただし、二輪車全体の市場は600万台と大きいことから、電動化比率はまだ1%程度である。

タイの電動二輪車市場

タイの電動二輪車の販売台数は2万2,000台であり、ASEAN諸国に比べると市場規模が小さい(図表2)。

タイの電動二輪車販売台数(2023年)
出所: バンコク日本商工会議所(JCC)

電動化比率は1.15%にとどまっている。JCCの資料によれば、充電方式は、自宅や外の充電器で充電するプラグイン式と、外のステーションでバッテリーを交換するスワップ式があるが、プラグイン式は1万9,000台、スワップ式は2,400台の構成になっている。スワップ式がまだ普及していないのは、ユーザーの大半は、個人ユーザーであり、移動距離が長くないために、自宅で充電しているためである。

タイで電動二輪車の普及が進んでいない要因の一つとして挙げられるのは、政策・規制の側面がある。タイでの電動二輪車は、EUのL2基準に準じており、
① 最高速度45km/h以上、
②モーター定格出力0.25kWh以上、
③45km/hを30分以上走行できること-
の3つの条件を満たさなければならない。そのために、ベトナムで主流の安価なモペッドタイプは普及していない。

二つ目の要因は、電動二輪が性能面でタイのユーザーのニーズを満たしていないことである。充電時間が8時間以上と長く、一回の充電による移動距離は50~60kmと制約が大きい。また、タイ人の二輪車ドライバーは、高速での走行を好むために、電動バイクのモーターではパワー不足であるという評価がバイクユーザーの間で広まった。タイの電動バイクブランドのWinnonieやSwap & Goは以前は60Vのリチウムバッテリーを搭載していたが、ドライバーの評判が悪く、より出力を高くするために、最近72Vのバッテリー搭載モデルに切り替えた。

三つ目の要因は、コストがまだ高いことである。電動二輪は安いモデルでは6~7万バーツで購入できるが、移動距離の制約を考えると、1万5,000バーツ以上する2個目のバッテリーを別に購入することが必要となり、一般の二輪車に対して割高となる。

四つ目の要因は、バッテリースワップを中心とした充電インフラが整っていないことである。バッテリースワップステーションはまだ300ヵ所にとどまっている。

政府の電動二輪車奨励策

政府は電動二輪の普及促進策を発表している。2022年に実施された包括的なEV奨励策であるThailand EV3.0では、15万バーツ以下の車両に対して、1万8,000バーツを支給した。ホンダも電動二輪車の補助金制度に関するMOUを政府と締結した。このような補助金の支給が2023年の販売増大につながった。

フリートでの普及の兆し

電動二輪車に乗るバンコクのGrabのドライバー(THAIBIZ編集部撮影)
電動二輪車に乗るバンコクのGrabのドライバー(THAIBIZ編集部撮影)

最近、バンコクの街角でGrab等のデリバリーのドライバーが乗っている電動二輪車をよく見かけるようになった。彼らが使っているのはスワップ式バッテリーであり、一日200km以上走るためにバッテリーを一日2~3回交換している。

ドライバーは自分でバイクをバイクメーカーからレンタルしている。筆者がドライバーに聞き取ったところ、一日のレンタル料が140~150バーツに対して、内燃機関式であると燃費代が200バーツ以上するために、十分に元が取れるとのことである。また、バッテリーは交換していることから、バッテリーの劣化による交換費用を気にする必要もない。

このように、フリートユーザーでは電動二輪の普及の可能性が高い。従って、EVメーカーがデリバリー会社と提携して、有利な条件でドライバーにレンタルするような取り組みを始めている。例えば、EVメーカーのEtranがShopee Food(フードデリバリー)、アユタヤ銀行と提携し、Shopee Foodのライダーに特別レンタル価格でバイクを供給している。

今後スワップ式バッテリーの基準の標準化が進み、バッテリーの互換性が高まれば、より普及が早まることが期待される。

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NRI Consulting & Solutions (Thailand)Co., Ltd.
Principal

山本 肇 氏

シンクタンクの研究員として従事した後、2004年からチュラロンコン大学サシン経営大学院(MBA)に留学。CSM Automotiveバンコクオフィスのダイレクターを経て、2013年から現職。

野村総合研究所タイ

ASEANに関する市場調査・戦略立案に始まり、実行支援までを一気通貫でサポート(製造業だけでなく、エネルギー・不動産・ヘルスケア・消費財等の幅広い産業に対応)

《業務内容》
経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション

TEL: 02-611-2951
Email:nrith-info@nri.co.jp
399, Interchange 21, Unit 23-04, 23F, Sukhumvit Rd., Klongtoey Nua,
Wattana, Bangkok 10110

Website : https://www.nri.com/

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