公開日 2024.10.21
TJRI(タイ日投資リサーチ)は10月3日、日本企業とタイ企業の関係を強化し新たなビジネス創出のきっかけづくりを目指すTJRIビジネス・ネットワーキング第4回として、タイIoT協会(Thai IoT Association)と共催で日タイ企業交流会を開催した。同ネットワーキングでは、タイのモノのインターネット(IoT)の現状や課題、産業におけるIoTデバイスの可能性、日タイ協力・提携の可能性に関する講演とパネルディスカッションの後、交流会が行われた。
まず、タイIoT協会のスタット・クロンチョン会長が基調講演に登壇し、IoTとは「センサーやソフトウェア、データ交換のための接続性を通じて、物理デバイスの相互接続を可能にする技術だ」とした上で、「現在のIoTは製造業や物流などの分野で急速に導入が進んでおり、2022年にはタイで76億9,000万バーツの市場規模に達した。世界のIoTデバイスの台数は、2020年の117億台から飛躍的に増加し、2025年には309億台に達する見込みだ」と概観した。また、「この成長の背景には、技術の進歩やコストの低下、自動化に対する需要の増加などの要因があり、IoTは人工知能(AI)とともに開発され、特に農業・ヘルスケア産業を含むあらゆる産業で、効率性や利便性、安全性を向上させるだろう」と強調した。
続いて、タイIoT協会の学術ディレクターを務めるスラチャイ・トンケオ氏は、IoTの4層構造(デバイス、コネクティビティ、プラットフォーム、アプリケーション)について詳細を紹介し、IoTデバイスからのリアルタイムのデータ収集が予知保全を可能にしたなどの技術の進歩を説明した。その上で、「タイは新技術の導入に柔軟性はあるものの、IoT関連の高度人材の不足という課題に直面している」と指摘した。
電通総研(タイランド)のゼネラルマネージャーを務める玉井啓介氏は、「現在日本では、IoTの利点と実用的な応用がよりよく理解される段階に入っている」とする一方で、「IoTの導入率は低く、IoTを活用している企業は約20%に過ぎない」と指摘した。その理由として、「日本では労働人材の高齢化が進んでおり、従来の伝統的な仕事のやり方にこだわっているため、IoTの導入を遅らせている。さらに、多くの日本企業はデータプライバシーやサイバーセキュリティに対する懸念があり、変化に対して保守的である」と説明した。また、日タイ協力・提携の可能性について、「タイはIoTシステムを迅速に導入できるため、日本のノウハウと組み合わせて、スマート工場の導入やイノベーション創出などでの協力が可能だ」と見通しを示した。
その後のパネルディスカッションでは、海外産業人材育成協会(AOTS)バンコク事務所の西牧義人次長も加わり、「Lean Concept(ムダを排除するための継続的なカイゼンをしていくという考え方)による自動化」や「Lean Automation System Integrators(LASI)」など、AOTSがタイで主導するプロジェクトを紹介した。これらのプロジェクトでは、「特に中小企業に必要とされる業務効率を改善することを目的としている」とした上で、具体的には、「各産業において自動化は進んでいるものの、多額の投資が必要なため、中小企業にとって導入が難しいという課題がある。そのため、自動化の前に現状把握をし、製造工程の無駄分析と作業カイゼンをしながらコストを削減することが中小企業にとって優先だ」と訴えた。
玉井氏は、タイと日本でIoT高度人材の不足が深刻化していることを改めて強調し、「すでにIoT技術を利用していても、ITとOT(Operational Technology)の統合を理解できる人材はまだ不足している。このようなIT担当者と工場担当者の間の連携不足が非効率な作業をもたらし、組織における新技術の導入を妨げている。また、製造工程でのIoT導入を成功させるためには、IT担当者とOT担当者の知識を統合することが重要だ。共同ワークショップを行えば、お互いにより良い理解を深められるだろう。さらに、異なる業界の製造プロセスに関する知識や経験を交換するために、工場の担当者を他の工場見学に参加させることも、IoTの考え方や新規技術に対する理解を深めることができる」と見解を述べた。
THAIBIZ編集部
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