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カテゴリー: ニュース
公開日 2026.07.17
スイスのビジネススクール国際経営開発研究所(IMD)がこのほどまとめた2026年版世界競争力ランキングで、タイは70カ国・地域中26位だった。経済成長が目覚ましく、初めて調査対象となったベトナムは27位となり肉薄。タイは30年までのトップ20入りの方針を打ち出す中、この数年の順位の伸び悩みに産業界は危機感を抱き、人工知能(AI)時代に適応できる高技能人材の育成など、官民一体で諸課題を克服することが急務との声が強まった。
IMDの調査結果によると、タイの総合順位は70カ国・地域中26位。前年の30位から4ランク上昇したものの、この5年間では25~33位の間を上下しており、伸び悩み傾向が続いている。一方、初登場のベトナムは総合27位で、いきなりタイに1ランク差まで迫った。

強みの「経済状況」が低下
IMDは各国の競争力を「経済状況」「政府効率性」「事業効率性」「インフラ」の4分野で数値化し、順位を出している。タイの分野別動向では、経済状況が前年から2ランク低下し10位となった。25年の国内総生産(GDP)成長率が近隣国を下回ったほか、前年に急伸したサービス輸出が通常水準に戻ったことが響いた。
政府効率性は32位で横ばい。財政や税制は比較的高い評価を維持したが、透明性や汚職、法執行などが引き続き課題となった。
事業効率性は3ランク改善し21位となった。労働市場や金融が評価された一方、企業家の柔軟性やグローバル化への姿勢を示す「態度と価値観」は3ランク低下した。25年に発生した地政学的対立が企業心理に影響したとみられる。生産性についても、農業やサービス、労働など幅広い分野で低水準が続いている。
インフラは2ランク上がり45位に改善した。道路や通信などの基礎インフラは比較的強みがあるものの、技術インフラはAI関連指標の変更で7ランク低下した。健康・環境・教育も低順位が続く。
世界全体の総合順位ではシンガポールが首位に返り咲き、香港が2位、スイスが3位。日本は5ランク上昇の30位だった。東南アジアではシンガポールに続き、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシアの順となった。

「ベトナムに抜かれる」危機感
タイ経営者協会(TMA)は6月19日、IMDの調査結果を受けた分析を発表した。TMAのティーラナン・シーホン会長(給油所運営大手PTGエナジー会長)はタイとベトナムを比較し、タイはビジネス環境や資金調達、港湾・道路・鉄道・通信などのインフラに強みを持つ一方、研究開発や熟練労働力、政策の安定性・予見可能性、経済のダイナミズムではベトナムに後れを取っていると指摘。ベトナム人の向上意欲を評価した上で、「インフラは資金力で解決できる。ベトナムがインフラ投資を本格化すれば、簡単にタイを追い越してしまうだろう」とベトナムの潜在的競争力が脅威との考えを示した。
ティーラナン氏が特に改革を訴えるのが人材開発だ。教育の質の低さはタイで長年の課題だが、具体的な進展は見えていない。経済協力開発機構(OECD)が実施した学習到達度調査(PISA)では、直近の22年調査でタイは読解、数学、科学の全分野でベトナムを下回った。同氏は「タイの若い世代は科学技術を敬遠しがちだ。たとえ生産能力を拡大しても、将来的には担い手が不足する」として、科学をはじめとする基礎学力の底上げが必要だと強調した。

評価軸、AI重視にシフト
IMDは今回、指標の一部を見直し、デジタル関連からAI関連へ重点を移した。AIの導入度や人材育成、投資、法整備などが評価対象となり、競争力を測る軸が変化した。ティーラナン氏によると、タイ企業のAI導入率はまだ低く、十分なスコアを得られなかった。技能開発や官民連携(PPP)、投資恩典などの方針がまだ明確ではないことが要因だ。政府が設置した「国家AI委員会」も、直近は会合が開かれていないといい、国の全体的な戦略の欠如を指摘した。

「税制優遇策中心では不十分」
タイのアヌティン首相は22日、経済問題を協議する官民合同委員会で、30年までに競争力の上位20カ国・地域入りを目指すと宣言した。目玉政策の1つが、先端産業を対象に投資認可手続きを迅速化する「タイランド・ファストパス」の導入だ。事業運営の円滑さをアピールし、外資誘致を拡大する狙いがある。
しかし、TMAのティーラナン氏は「従来の税制優遇中心の施策では不十分」だと指摘する。高度技術分野では初期投資が大きく、利益が出るまで時間がかかるためだ。同氏は、投資家に向けて労働力確保や技術移転、補助金の交付、共同投資家の誘致などを一体で支援する機関が必要だと強調した。

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