グループ内の連携強化で、変化に強い組織作りを ~旭化成プラスチックスタイランド小池尚生社長インタビュー

グループ内の連携強化で、変化に強い組織作りを ~旭化成プラスチックスタイランド小池尚生社長インタビュー

公開日 2024.06.04

旭化成株式会社は現在、アジア、北米、ヨーロッパなど世界各国に拠点を持つグローバルカンパニーだ。1999年に100%子会社として創業した旭化成プラスチックスタイランドは、機能樹脂の着色・コンパウンド事業を主に展開している。EVシフトなど大きなゲームチェンジが見られるタイで、同社が成長を続けるために意識的に行っている取り組みとは。小池尚生社長に話を聞いた。

(インタビューは5月8日、聞き手:mediator ガンタトーンCEOとTHAIBIZ編集部)

mediator ガンタトーンCEO(左)と旭化成プラスチックスタイランドの小池尚生社長(右)
mediator ガンタトーンCEO(左)と旭化成プラスチックスタイランドの小池尚生社長(右)

樹脂の原料からコンパウンドまで一貫した生産体制

Q. 旭化成株式会社の事業とグローバル拠点について

小池社長:展開事業は大きく分けて「マテリアル領域」、「住宅領域」および「ヘルスケア領域」の3つに分けることができます。住宅領域では、建設請負事業や不動産関連事業などの住宅事業と、軽量気泡コンクリート(ALC)などを取り扱う建材事業を展開しています。ヘルスケア領域では、医薬事業、医療事業、クリティカルケア事業に取り組んでいます。

マテリアル領域は「環境ソリューション事業」、「ライフイノベーション事業」、そして弊社の事業にも当てはまる「モビリティ&インダストリアル事業」の3事業を展開しています。

アジア、北米、ヨーロッパ、南米など世界20ヵ国以上に拠点を持っており、タイ国内だけでも弊社含め7社があります。地域によって展開事業は様々ですが、タイの7社は主にマテリアル領域の「モビリティ&インダストリアル事業」と「ライフイノベーション事業」にあたる事業を行っています。

Q. 旭化成プラスチックス(タイランド)の事業内容について

小池社長:創業当初は樹脂の着色事業が中心でしたが、徐々にコンパウンド事業を拡大し、現在は強度と耐熱性に優れた機能樹脂(エンジニアリングプラスチック)の生産に携わっています。具体的には、高耐熱で自動車のエンジン周りの部分に使用されるポリアミド(PA)樹脂「LEONA™」、自動車部品や摺動部品に用いられるポリアセタール(POM)樹脂「TENAC™」、OA機器やバッテリー部品などに使用される変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)樹脂「XYRON™」の3製品を生産販売しています。

変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)樹脂「XYRON™」
変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)樹脂「XYRON™」

「コンパウンド」という用語は一般の方には馴染みがないかもしれませんが、例えば原料である樹脂にガラス繊維などの充填剤を混ぜると強度が増しますし、難燃剤などの添加剤を入れることで難燃性が向上します。このような樹脂の加工をコンパウンドと呼んでいます。弊社は加熱溶融した樹脂に、様々な充填剤、添加剤や着色剤を押出機で混錬し、ペレット状にした製品を作っています。この後、お客様の工場で再度加熱溶融成形し、エンジン周りなどの部品になるのです。耐熱性があり強度が高く、かつ比重が軽いので、例えば金属部品の一部を弊社樹脂を使用したプラスチック部品に代替することで、自動車やバイクの軽量化に繋げることができます。

また、特に「XYRON™」は優れた電気特性と低吸水性があるため、EVや太陽光発電でも使用されることが多いです。これまで日本で大手自動車メーカーのお客様に供給していた高品質の製品を、タイでも同一品質で安定的に生産し、お客様に提供しています。

Q. 他社に負けない強みは

小池社長:一つ目は、原料から製品コンパウンドまで一貫して自社生産が可能な点です。コンパウンドのみを行う会社は他にもありますが、チェーン全体を一連でカバーしている会社は数少ないと思います。

次に、お客様の開発初期段階から一緒に協業を行い、その中の一つとして、お客様のニーズに合わせて最適な形状をシミュレーションして提案する「CAE」と呼ばれるサービスも提供していることです。例えば「既存の金属製品の代替品を作りたい」といったニーズをお持ちのお客様に、材料選定、材料設計だけでなく、「このような形状であればプラスチックで代替可能です」と流動解析を含めた提案をさせていただいています。

旭化成プラスチックスタイランドの工場エントランス

多拠点ネットワークを強みに、連携の仕組みづくりを

Q. タイではEVブームもありゲームチェンジの潮流が見られるが

小池社長:おっしゃる通りで、今後どのように事業を広げていくかが課題でもあります。現状維持では進化しないので、地場会社との協業や他拠点との連携など、新しい試みにも躊躇せず取り組んでいます。

例えば最近では、シンガポールに本社を置くメーカー「技研サカタシンガポール」傘下のGiken Mobilityの電動バイク「Iso UnNO-X」に、旭化成のXYRON™とLEONA™が採用されました。具体的には、バッテリーケースに絶縁性と難燃性に優れたXYRON™を、モーターケースにLEONA™が使用されたのです。直接協業しているのは旭化成プラスチックスシンガポール(APS)ですが、もともとのきっかけは弊社でもあり、拠点を超えた連携が生み出した成果でもあると言えます。

Q. 他拠点との連携に力を入れている理由は

小池社長:従来の「日本本社からの指示に基づき、言われたことだけをやる」という現地法人の在り方は変わってきています。ローカルスタッフを含め、自分たちで最善の方法を模索し改善を続けることが、組織の成長において大切なことです。

そのためには、他拠点でのやりかたを知ることや、横の繋がりを通して学び合うことが欠かせないと考えています。私が2022年に着任した後、複数拠点のローカルスタッフ同士の交流の重要性を訴え、グループのアセアン統括会社旭化成アジアパシフィックを中心に、人事担当者同士の連絡会を設けました。これを皮切りに、タイ国内のグループ会社の連携を進め、少しずつローカルスタッフ同士で連携ができるようになってきました。

タイ国内だけではありません。2023年には、中国拠点の社員が弊社を視察し、ローカルスタッフ同士で情報交換の機会を設けました。中国拠点にある新しい設備は弊社の設備とどう異なるのか。その違いにより、人の配置にはどういった変化が生じるのか。このような観点からのディスカッションも活発に行われ、ローカルスタッフの学ぶ意欲を改めて実感することとなったのです。今後もこのような横の繋がりを創出することで、新しいアイデアや共創機会が生まれることを期待しています。

Q. 社員の教育という観点で、他に取り組んでいることは

小池社長:2017年~2018年頃、実は離職率が今よりも非常に高く、工場での生産と供給状況も不安定な時期がありました。そこで私の前任が従業員と一緒に、弊社が大切にするマネージメントフィロソフィーを考案し、「Safety(安全)」「Improvement(改善)」「Caring(会社を愛する)」等の6要素(6 belief)を社内向けに提唱。私の着任後もこのフィロソフィーを土台にしつつ、社員にエピソードトークとして語ってもらう等の取り組みを継続しています。その結果、現在は離職率が大幅に改善され、一時は採用活動に大半のリソースを割かなければならなかった人事担当者も評価制度やエンゲージメント向上に向けた取り組み等に着手できるようになりました。離職率の低下は、製品の品質や安全性の担保にも繋がり、お客様への安定的な供給が可能となりました。

私は「ローカルスタッフが主体的に組織や製品の改善に向けて提案できる組織」を目指しています。「種の起源」のように、環境変化に適応することの重要性や、予測できない未来のために、今、多くのアイデアを提案・実行する「Connecting the dots」などの話題を意識的に社内に発信しています。最近ではローカルスタッフが自発的に地域のCSR活動に参加することも増え、徐々に彼らの意識の変化を感じています。

旭化成プラスチックスタイランドの小池尚生社長インタビュー01

変化に強い組織作りを目指し、次なる付加価値創出へ

Q. 今後の展望について

小池社長:既存事業に加えて、カーボンニュートラル促進の気運に伴い、EVや電動バイク、太陽光発電などに弊社製品をご提案させていただくことも増えています。また、マテリアルリサイクル事業として、PIR(製造過程で発生した廃棄物から成るリサイクル原料)やPCR(市場で消費後の廃棄物からなるリサイクル原料)を用いた製品や取り組みも、お客様に提案させていただいています。時代や市場の変化に応じて、次なる付加価値をどう生み出せるかが常に課題ですが、業務効率化、人材育成、新規事業の創出など、様々なステークホルダーと協力しながら常に改革を続けることで、「変化に対しても強い組織」を作っていきたいと考えています。

THAIBIZ編集部

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