「確実にお届けする」使命のもと、付加価値ある物流サービスの提案へ

THAIBIZ No.171 2026年3月発行

THAIBIZ No.171 2026年3月発行タイの若者に“届ける”には? – サントリー流マーケ戦略

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「確実にお届けする」使命のもと、付加価値ある物流サービスの提案へ

公開日 2026.03.10

港湾の現場からキャリアをスタートし、現在はタイにおける総合物流の営業統括を担う三井倉庫タイランドの川上公太郎氏。「商品を期日までに目的地へ確実に届ける」という大きな使命のもと、さらなる付加価値の創出に向けて奮闘している。同氏に、タイならではの業務経験や、現在注力している取り組みについて話を聞いた。

コロナ禍にタイ赴任、総合営業として奮闘中

Q. 三井倉庫タイランドとご自身の役割について教えてください

三井倉庫は、日本国内外における倉庫・港湾運送の事業を展開し、各国の現地事情に適した最適な物流ソリューションを提供しています。三井倉庫タイランドは1988年に設立され、倉庫業務をはじめ、通関、海上・航空・陸上における国際輸送、さらに設備輸送までをワンストップで担っています。

当社は現在、約270名の従業員が在籍しており、うち日本人駐在員は4名のみ。現地スタッフを中心とした体制で主に日系企業のサプライチェーンを支えています。

私自身は2011年に三井倉庫へ入社しました。当社の事業は大きく倉庫事業と港湾運送事業に分類できます。私の場合、主に後者の港湾運送事業を中心にキャリアを積み、港湾の現場でコンテナを積む順序や場所を計画して指示を出す「フォアマン」という業務や、コンテナ船の営業を担当していました。

タイへ赴任したのは、コロナ禍のさなかの2021年4月でした。最初の2年はレムチャバン港で通関関連の営業に従事し、2023年4月からはバンコクに移り、現在は倉庫業を含めた営業活動全般を統括しています。

Q. タイならではの物流の特徴と貴社の強みは

タイの物流の大きな特徴は、「輸入・加工・輸出」が密接につながった産業構造にあります。原材料や部品を海外から輸入し、タイ国内で加工・組立を行い、その後完成品を輸出する。この一連の流れを前提とした物流ニーズが多いため、当社の業務も輸入・輸出・国内輸送のいずれかに偏ることなく、ほぼバランスよく発生しています。

タイでは通関業務を外注する物流会社が多い中、当社では設立当初から通関業務を外部に委託することなく、すべて自社スタッフで対応し、税関とも長年にわたる信頼関係を築いてきました。タイならではの物流を支えるうえで、当社のこの体制は大きな強みだと考えています。

最適な輸送手段やルートを柔軟に組み立てる現場力

Q. 来タイして直面した戸惑いと、それをどう乗り越えたか

タイの通関には、日本と比べて属人的な要素が色濃く、担当官によって判断が異なるケースが頻発します。HSコード(世界共通の貿易商品分類番号)の解釈が人によって異なる、事前説明や追加準備が求められる、などの場面もあります。電子化が進んでいる一方で、紙の書類の提出も依然として必要なため、二重の手間がかかる煩雑さもあります。

赴任した最初のうちこそ、日本との違いに戸惑いましたが、現在では「それがタイの当たり前」と受け止めた上で、先回りして準備できるようになりました。当社に在籍する、長年通関に携わってきた専門スタッフの豊富な知見を活かして税関と交渉し、さらに輸送全体を見据えた上で最適な対応を行っています。手続きの先にある倉庫業務や輸送工程まで見据えて提案できる点は総合物流会社の利点だと考えています。

Q. 日常業務で意識していることは

物流の現場では、「最短ルート=最適解」とは限りません。私たちが意識しているのは、お客様の計画や都合に合わせて最適な輸送手段やルートを柔軟に組み立てることです。

例えば海上輸送では、直行便だけでなく、途中で荷を積み替える「トランスシップ」便を提案して受け取り側の希望納期に合わせることもあります。

商品を出す側はすぐにでも出荷したいが、受け手側は少しバッファを持って、必要なときに受け取りたい。このようなケースでは、フリータイム(コンテナヤードにおける無料保管期間)やデマレージ(超過保管料)を考慮しながら、あえて少し日数のかかる輸送ルートを利用します。

案件ごとに日程や船会社を組み替え、両者の要求をピタリと組み合わせたときには達成感があります。地味ですが、こうした最適化の積み重ねが物流全体の安定につながっていくと思います。

Q. これまでに印象に残っている物流対応の事例を教えてください

最も印象に残っているのは、2021年に中国の上海空港がロックダウンされた時に行ったクロスボーダー輸送です。お客様の生産ラインが完全に止まってしまう事態を回避するため、われわれは「トラックによる4,300kmの陸路輸送」を提案しました。

結果的に、約30本のコンテナを5日間で無事にトラック輸送することができました。使命感を持ってお客様のサプライチェーンの維持に貢献でき、当社にとっての貴重な実績にもなりました。

制度活用と持続可能な物流提案の両輪で付加価値を

Q. 現在挑戦していることは

「商品を確実に届ける」という大使命を前提に、付加価値のあるサービスの提供を目指しています。例えば、当社がいま特に注力しているのが関税還付の活用支援です。これは、原料の輸入時に支払った関税を、加工後に製品を輸出することで後から還付申請できる仕組みで、タイの加工貿易にとっては非常に有効な制度です。

ただ、現実には多くの企業がこの制度を十分に活用できていません。タイ投資委員会(BOI)の恩典を受けている企業は、もともと輸入時に関税が免除されているため対象外ですが、その恩典期間が終了した後に還付制度を使わず関税を払い続けているケースが多くあります。また、制度自体を知っていても、手続きが煩雑なため申請を諦めている企業も少なくありません。

そこで当社では、「BIS29(タイ関税法第29条に基づく還付制度)」の専任チームを設けて、お客様の業種や取引内容に応じて制度適用の可否から申請プロセスの構築、必要書類の整備・提出までトータルでサポートできる体制を整えています。

輸入に使ったコンテナを、元の場所に戻さずその地点から輸出にも活用する「ラウンドユース」も強化していきたいテーマです。ラウンドユースはコスト削減や二酸化炭素(CO2)排出量の抑制にもつながる有効な手法であり、日本ではすでに一般的ですが、タイではまだ普及していません。それだけにポテンシャルがあると考えています。

 Q. 今後の展望について

突発的なトラブルにも対応する柔軟な輸送提案や、現場で培った判断力を総動員しながら付加価値のあるサービスを提供することで、お客様のサプライチェーンの改善に貢献したいと考えています。また、現在9割以上が日系のお客様ですが、今後はローカル企業も含め日系以外のお客様にもサービスを提供できる体制を整えていきます。 

こうした取り組みが、当社の所管面積の拡大や業績向上につながり、ひいてはタイにおける安定した物流基盤の構築にも寄与できると信じています。



川上 公太郎

General Manager
Mitsui-Soko(Thailand)Co., Ltd.

2011年に三井倉庫へ入社。主に港湾運送事業でキャリアを重ね、フォアマン業務やコンテナ船営業を経験。上海でのトレーニー期間を経て、2021年4月にタイへ赴任。現在はバンコクを拠点に、倉庫業を含む営業活動全般を統括。

執筆者:三田村 蕗子

>> 連載「在タイ日本人駐在員の挑戦」の記事一覧

THAIBIZ編集部
白井恵里子

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