在タイ企業の「電気コスト対策」に転換点 〜太陽光のBOI恩典終了、今見直すべきこととは

最新記事やイベント情報はメールマガジンで毎日配信中

在タイ企業の「電気コスト対策」に転換点 〜太陽光のBOI恩典終了、今見直すべきこととは

公開日 2026.09.28 Sponsored

タイでは、電気コスト対策を取り巻く環境が変わりつつある。工場への太陽光発電の導入が広がるなか、タイ投資委員会(BOI)は2025年7月、既存工場などによる太陽光発電設備の設置を対象とした投資恩典を終了。一方、政府は2050年のネットゼロを掲げ、蓄電池(BESS)やCCUS(二酸化炭素の回収・利用・貯留)など、次の脱炭素投資を後押しする方向へと動いている。

こうした変化のなか、企業はこれまでのエネルギー投資や省エネへの取り組みをどう考えていくべきか。タイの政策と現場、それぞれの視点から今後の方向性を聞いた。

Interviewee’s Profile

アンストーン・ワスサン 氏
東部経済回廊事務局(EECO)
バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済推進部部長

2019年にEECOへ参画後、バイオ産業分野の調査・政策立案に携わる。現在はBCG投資戦略の策定、投資家への支援・誘致を担当。


松尾 茂則 氏
株式会社エネテク
O&M事業本部 本部長

エネテクグループのO&M事業および技術戦略を統括。一般社団法人日本太陽光発電検査技術協会の常務理事も務め、PV検査技術講習会等国内自治体主催のセミナーで講師を務める。


野口 貴司 氏
株式会社エネテクメンテナンスサービス
代表取締役社長

太陽光発電所向けO&Mサービス『ソラパト』の事業拡大を推進。現在はO&M事業を統括し、専門メディア『メガソーラービジネス』への寄稿協力等を通じ、O&Mの普及に取り組む。

太陽光のBOI恩典は、なぜ終了したのか

BOIは2025年7月、既存工場などによる太陽光発電設備の設置を対象とした投資恩典を終了している。その背景について、東部経済回廊事務局(EECO)のアンストーン・ワスサン部長は「太陽光発電の普及が進んだことが大きい」と説明する。

「タイでは企業の省エネへの関心は非常に高く、太陽光発電は導入しやすい再生可能エネルギーだ。新規投資でも太陽光を計画に組み込むことが一般的になっている」。同氏によれば、太陽光の普及を背景に、政策支援の対象はBESSやCCUSなど、新たな脱炭素投資へと広がりつつある。企業側も、新たな設備を導入するだけでなく、すでに行った投資をどう活かしていくかを考える段階に来ている。

10万枚の点検で見えた、導入後の課題

では、すでに導入した太陽光発電設備は、その効果を十分に発揮できているのか。太陽光発電設備のO&Mや省エネを支援するエネテクの松尾茂則氏は、タイではパネルの洗浄や目視確認は行われていても、発電性能まで確認する点検はまだ十分に広がっていないと指摘する。

エネテク O&M事業本部 本部長の松尾茂則氏

同社がタイで稼働から10年以上の太陽光パネル約10万枚(約30MW)を点検したところ、約5,000枚で不具合を確認した。なかには外観上は問題がなくても、内部配線の断線などで発電量が大きく低下しているケースもあったという。

「一部に不具合があっても設備全体では発電を続けるため、気づきにくい。定期的に状態を確認し、本来の発電性能を維持することが重要だ」。太陽光の導入が広がった今、設置後の設備をどう管理していくか。運用・保守(O&M)の重要性も高まっている。

「もう省エネ余地はない」は本当か

一方、タイの日系製造業では、太陽光発電の導入に加え、高効率設備やLEDなどへの投資も進み、「省エネはある程度やり切った」と感じる企業も少なくない。エネテクの野口貴司氏は、既存設備にもまだ削減余地があると指摘する。

例えば、年間を通じて使用される空調だ。「タイでは空調が電力消費の大きな割合を占める。設備をすべて入れ替えなくても、既存設備の運用や性能を見直すことで、まだ省エネできる余地はある」。

同社では、既存の業務用空調に後付けできる省エネ機器「α-HT」などを提供。導入環境によっては、10〜30%の消費電力削減につながった事例もあるという。

エネテクメンテナンスサービス 代表取締役社長の野口貴司氏

省エネを脱炭素戦略につなげる

こうした省エネの余地を見直す上で無視できないのが、政策やタイ市場環境の変化だ。

タイ政府は国家貢献目標「NDC 3.0」で、2035年までに温室効果ガス排出量を2019年比47%削減し、2050年のネットゼロを目指している※2。気候変動法の制定に向けた議論が進むほか、再生可能エネルギーの利用拡大を盛り込んだ新たな電源開発計画(PDP 2026)も、9月に草案が公表された。

アンストーン氏は「海外市場では欧州連合(EU)の炭素国境調整措置(CBAM)など環境基準も厳しくなっている。企業も法律に従うだけでなく、市場での優位性を得るために取り組んでいくことになる」と指摘する。

省エネや太陽光発電の適切な運用は今後、電気代の削減だけでなく、脱炭素への対応や企業競争力の面でも、ますます重要になっていくだろう。

※2 タイ天然資源・環境省 気候変動・環境局(DCCE)

【セミナー開催】政策と実務から考える、これからの脱炭素

では、タイの政策が今後どう動き、企業は今ある設備やエネルギーの使い方をどう見直していけばいいのか。

10月30日に開催されるエネテク主催のセミナーでは、本記事に登場したEECOのアンストーン氏とエネテクの松尾氏に加え、GHG排出量の算定・可視化を手がけるZeroboard(Thailand)の鈴木慎太郎社長が登壇する。

タイ政府の脱炭素政策や今後の方向性から、太陽光発電のO&M、企業が実際に取り組む際のポイントまで、政策と実務の両面から解説する。自社の取り組みは十分か、次に何をすべきか。一度立ち止まってエネルギー経営を考える機会となりそうだ。

セミナー開催概要

名称 カーボンニュートラル実現に向けたタイ最新動向と実践事例
~タイ政府の政策動向、再エネO&M、企業の脱炭素経営の進め方~
開催日時 2026年10月30日(金)16:00~19:00 / 15:30開場 ※タイ時間
プログラム
第1部 16:00~18:00
  1. 東部経済回廊事務局(EECO)バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済推進部
    アンストーン・ワスサン 部長
  2. Zeroboard (Thailand) Co., Ltd.
    鈴木 慎太郎 社長
  3. 株式会社エネテク O&M事業本部
    松尾 茂則 本部長
第2部 18:00~19:00
登壇者・参加者による名刺交換会および懇親会(軽食あり)
開催形式 オフライン
開催場所 タイ国日本人会 会議室  【詳しい行き方はこちら】
定員 50名(先着順/要事前申込)
参加費 無料
対象 在タイ日系製造業、物流業など
言語 日本語

ENETECH(THAILAND)Co., Ltd.

2007年創業の電気設備・エネルギーソリューション企業「エネテク」のタイ法人。2025年設立。自家消費型太陽光発電をはじめ、電気設備工事、省エネ対策、再生可能エネルギー導入などのサービスを提供する。日本国内10拠点での施工・保守実績を有し、O&M(運用管理・保守点検)では高い技術とノウハウを誇る。

HP :  https://www.enetech.co.jp/
お問い合わせ:[email protected](担当:奥谷)※英語・タイ語も対応可

THAIBIZ編集部
和島美緒

Recommend オススメ記事

Recent 新着記事

Ranking ランキング

TOP