カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2016.04.29
目次
タイ中央銀行が発表した2016年1月の重要な経済指標によると、タイ経済はやや減退
しました。輸出や生産、個人消費が低迷し、好調を維持する観光業が国内経済をけん引しています。様々な経済活動が中断する事態は、2016年第1四半期のタイ経済の回復テンポに影響を与える可能性があります。
世界景気後退の兆しが1月のタイ経済成長の落ち込みの要因
1月の民間消費は前年同月比1.2%の上昇で、6ヵ月連続で改善したものの、伸び率は前月から2.7ポイント縮小しました。自動車物品税の改正により新車の駆け込み需要の反動が出たほか、気温の低下により家庭の電力消費量が減少しました。干ばつと国際経済に対する懸念から、消費者信頼感も悪化しました。ただし、非農家収入は堅調でした。耐久消費財への支出は6.3%減となったものの、非耐久消費財とサービスへの支出はプラスを維持しました。
一方、民間投資指数は前年同月比2.3%上昇したものの、生産能力が十分な水準にあることなどから、投資は依然として低い水準にとどまりました。
特に、再生可能エネルギーや通信への投資が縮小しました。
1月の輸出は、前年同月比9.3%減の155億6000万米ドルとなり、引き続き収縮しました。昨年12月から落ち込み幅が0.2ポイント拡大し、大洪水で11.6%減と急落した2011年11月以降の最低水準を記録しました。世界経済の先行き不透明感が高いことを背景に、米国、ユーロ圏、日本、中国およびASEANなどの主要輸出先への輸出額が減少しました。また、CLMVへの輸出額も落ち込みました。コメと自動車・部品がプラスを維持したほかは、一般に低調でした。中でも石油関連製品や農産物の価格下落などが引き続きマイナスの要因となりました。
商務省が発表した貿易統計によると、2016年2月のタイの輸出額は、前年同月比10.3%増の189億9360万米ドルとなりました。金価格の上昇で金の輸出が11.5倍に急伸し、全体を押し上げました。
輸出が前年同月を上回るのは14ヵ月ぶりです。
2月の品目別に見ると、全体の8割強を占める主要工業製品は前年比13.8%増となりました。金・宝飾品は3.1倍と主要品目で唯一プラスでした。
車両・部品は0.9%減少しました。乗用車が2.0倍に急伸したものの、ほかはマイナスでした。電子製品・部品は3.3%減少しました。また、電気製品・部品は全品目でマイナスとなり、6.9%減でした。一方で、農産物・加工品は0.4%増となり、ほぼ横ばいでした。
2016年1月の工業生産に関しては、2015年12月の前年同月比1.4%増から同3.3%減に転じました。昨年末の駆け込み需要の反動で自動車がマイナス12.2%となったほか、集積回路・半導体も13.4%落ち込みました。一方、対照的に家電は外需の拡大で10.6%上昇しました。
サービス・セクターは、国内需要と観光業の回復に伴い、前月から引き続き拡大していました。外国人旅行者数は前年同月比15.0%増の300万人と好調拡大を維持しました。また、ホテル稼働率は67.0%に上昇しました。
商務省が発表した2月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比0.5%減となり、14ヵ月連続で減少したものの、マイナス幅は3ヵ月連続で縮小しました。2月の春節(旧正月)による果物・野菜の高騰などを受け、食品・飲料部門は1.3%に上昇幅が拡大しました。一方で、非食品部門の上昇率はマイナス1.5%でした。品目別で全体に占めるシェアの大きい住宅と運輸・通信がそれぞれ0.4%、4.8%下落しました。
振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.7%の上昇で、前月から伸びが加速しました。
バーツ相場の変動については、タイバーツは、2016年3月14日には1米ドル=35.12バーツの終値をつけ、2016年2月15日の1米ドル=35.65バーツからのバーツ高ドル安傾向が先月に引き続き継続しました。その原因は、米利上げ回数の見通しが下方修正されると予想され、ドルを売る動きが強まったためです。
一方、バーツ対円の変動について、2016年3月14日には100円=30.87バーツの終値をつけ、2016年2月15日の100円=31.11からバーツ高円安傾向へ転換しました。その原因は、日銀が現状の量的・質的金融緩和政策を維持すると発表したためです。発表直前に追加緩和期待で円が上昇する局面がありましたが、日銀の発表をきっかけに円を売る動きが強まりました。
AECの実現によりASEAN経済の持続的な繁栄成長を可能とする重要な要因の一つは、単一市場と共通の生産拠点への統合に向けた目標の達成です。それには域内のサプライチェーンの連結により、貿易と投資の拡大を生み出すため、関税障壁と非関税障壁を含む貿易障壁を削減する必要があります。過去の取り組みにより、ASEANは、AFTAの枠組みに基づく関税障壁の相互削減に成功を収めており、2015年末までに品目ベースで96.0%に達する輸入関税の撤廃を実現しました。
そのうち、原加盟6ヵ国(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ブルネイ)は、2010年以来徐々に輸入関税の撤廃を進め、2015末までに品目ベースで99.2%の物品の輸入関税を撤廃しました。一方で、CLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)は、2015年1月1日以来、撤廃を義務付けられている品目の90.8%に相当する物品の輸入関税を撤廃していま す。ただし、CLMV諸国における一部の品目の関税撤廃期限は、2018年まで延期されています。例えば、ベトナムでは自動車・自動二輪車の輸入関税率を2018年までに0%に削減することになっています。
しかしながら、原加盟6ヵ国が0%への関税削減に着手した2010年以来、各国は非関税障壁や各種の貿易規則・ルールの導入を進めるようになりました。非関税障壁の設定は、国内の産業の保護や国民の健康を守ることを目的に行なうことが認められていますが、実際にはこうした措置がしばしば貿易障壁として利用されています。こうした措置に直面する事業者にとっては、結果として生産コストや原材料の輸入、製品の輸出などに要する時間が増えています。
現在、用いられている非関税障壁には多くの形態がありま す。例えば、残留物質が輸入国側が定める比率を超える製品の輸入を禁じるなどの衛生植物検疫(SPS: Sanitary and Phytosanitary)措置、特定の表示や製品ラベルの使用を義務付けるなどの貿易の技術的障害(TBT: Technical Barriers to Trade)措置、特定品目の輸入急増にともなう国内産業保護を目的として発令される緊急輸入規制(セーフガード)、環境関連の措置などが挙げられます。
従って、AECが正式発足した後には、ASEAN加盟各国はこの問題の解決に向けた協議に本腰を入れる必要があります。解決策の一つは、ASEAN規格を生み出すことです。それには、加盟各国が自国の規格や技術的規則・ルールを統一規格に一致させ、相互認証できる態勢を整える必要があります。さらには、時間と経費を節約するため、輸出側の加盟国機関により実施される検査と認証の結果に基づき、受け入れ側の条件を設定することで、輸入国側による再検査の必要性をなくすことも重要です。
ASEANも、生じている問題を認識しており、基準と品質に関するASEAN顧問委員会(ACCSQ: ASEAN Consultative Committee for Standards and Quality)の設立など多くの方面で取り組みに着手するようになりました。しかし、ASEANの真の経済共同体建設に向けた加盟10ヵ国の統合には、より深く広範な次元での具体的な非関税障壁削減の進展が必要です。
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THAIBIZ編集部
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