カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2015.12.20
タイ中央銀行が発表した2015年9月の重要な経済指標によると、タイ経済は緩やかなペースで回復しています。民間の消費と投資の改善や、継続的な政府の予算執行が経済を押し上げています。一方で、観光業の伸びが減速し、輸出も不振でした。
タイ景気は緩やかに回復
9月の民間消費は前年同月比で0.4%上昇しました。生活必需品など非耐久財やサービスへの支出は拡大したものの、耐久財はマイナス成長となりました。ゴムをはじめとする農作物価格の下落や非農家収入の伸び悩み、銀行のクレジット審査の厳格化などを背景に支出面で慎重な姿勢が広まりました。
一方、民間投資は前月比で0.4%増、前年同月比で1.1%増、緩やかな改善となりました。その主な牽引役は、機械・設備の投資でした。しかしながら、国内外の需要の伸び悩みから全体的な投資水準は依然として低迷しています。
9月の輸出は、前年同月比5.4%減の185億2400万米ドルとなり、引き続き収縮しました。自動車など一部の品目は好調だったものの、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の景気減速や原油価格の下落などが響きました。
商務省が発表した2015年10月の貿易統計によると、タイの輸出額(約185億6600万米ドル)は前年同月と比べ、9月の5.5%減から8.1%減になりました。比較ベースとなる前年同月の輸出が高水準を記録していたハイベース効果に加え、原油価格と農産物価格の下落が全体を押し下げました。これらの要因は11、12月の輸出にもマイナス影響を与えると見込まれます。従って、2015年通年のタイの物品輸出は前年比5.0%以上の収縮になる可能性があります。
品目別に見ると、主要工業製品のうち、自動車・部品が前年同月比0.2%増、コンピュータ・部品が同1.4%増となった一方で、精製油、化学品、合成樹脂など石油関連製品の輸出額は、原油安にともなう輸出価格の下落から収縮しました。一方で、農産物・加工品は同9.1%減でした。砂糖が同5.4%増となったほかは、コメと天然ゴムがそれぞれ17.6%減、7.6%減となるなど軒並み不振でした。
工業生産に関しては、8月の前年同月比8.3%減から同3.6%減となり、落ち込み幅が縮小しました。ハードディスク駆動装置(HDD)の生産は、11ヵ月連続で収縮しています。衣料も米国や日本からの引き合いの減少により、生産が収縮しました。食品・飲料では、冷凍エビの生産が減速しました。また、ビールの生産は、前年のハイベース効果から収縮しました。
9月にタイを訪れた外国人観光客は8.7%増の203万1000人で、前月から伸びは鈍化しました。その主な要因は、8月にバンコクで発生した爆弾テロ事件の影響です。尚、爆弾テロ事件は、観光業に短期的なマイナス影響を与えると見込まれます。しかし、観光シーズンである第4四半期の前に改善する見通しです。同様な事件が再び発生しなかったことと、犯人の早期逮捕により、今回の事件の影響は狭い範囲にとどまると予想します。
2015年第3四半期のタイ経済成長率は、前年同期比2.9%増となりました。第3四半期の景気は、前四半期から緩やかに回復しています。サプライサイドでは、農業所得は減少しましたが、工業生産が前四半期から上向いたことに加え、サービス業も伸びました。デマンドサイドでは、消費者の信頼感は低い水準にとどまったものの、石油価格をはじめ物価の下落により、消費支出は総じて拡大しました。特にサービスの支出が伸びましたが、半耐久財と非耐久財の消費は鈍化し、耐久財消費は引き続き収縮しました。
カシコンリサーチセンターでは、第4四半期のタイ経済は、景気回復のモメンタムを維持することができると予想します。その主な牽引役は、農家を含む低所得層および中小企業の支援策や、小規模開発事業などの政府支出と、観光シーズンによる観光業の拡大によります。従って、2015年通年のタイGDP伸び率の見通しは従来予測である前年比2.8%増を維持しています。
商務省が発表した10月のヘッドライン・インフレ率は、9月の前年同月比1.07%減から同0.77%減となり、10ヵ月連続で減少しました。品目別にみると、食品・飲料は前年同月比1.75%上昇し、5ヵ月連続で上昇幅が拡大しました。卵・乳製品と調味料を除く全ての項目が上昇しており、特に果物・野菜のうち、生鮮野菜が同13.46%、生鮮果物も同5.72%上がり、全体を押し上げました。一方で、非食品は同2.12%下落しました。また、運輸・通信のうち石油が21.90%と大きく落ち込みました。そのほかは概ね上昇しました。
振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.95%上昇しました。
バーツ相場の変動については、タイバーツは、2015年11月18日には1米ドル=36.01バーツの終値をつけ、10月20日の1米ドル=35.42バーツから再び軟調傾向を見せました。その原因は、米連邦準備制度理事会(FRB)による12月の利上げ期待を織り込む動きが進み、ドル買いの動きに一服感が生じているためです。一方で、バーツ対円の変動について、11月18日には100円=29.20バーツの終値をつけ、10月20日の100円=29.57から小幅な上昇傾向を見せました。日銀は11月の金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和策を維持することを決めました。その要因で円安傾向の継続が見込まれます。
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THAIBIZ編集部
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