カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2016.01.22
タイのプラスチック産業は、ポテンシャルを有する産業の1つとなっています。上流、中流、下流の各分野で生産工程が揃っています。また、国内消費に加え、日本、米国、オーストラリア、マレーシア、インドネシア、中国など主要貿易相手国への輸出も行われています。カシコンリサーチセンターは、貿易相手国向け輸出におけるプラスチック製品事業のビジネス・チャンスについて、短期的及び長期的の2つの要素から見た主要プラスチック製品・市場を下記にまとめました。
短期的な基礎プラスチックの主要輸出市場はCLMV市場
現在、タイは主にビニール袋のようなプラスチック製容器、または各種のケースや容器などの消費材を中心とした基礎プラスチック製品を生産、輸出しています。生産工程または成型技術がさほど複雑ではないからです。
多くの企業は中小企業です。
これら基礎プラスチック製品の単価はさほど高くありませんが、ビジネス・チャンスはまだ十分にあります。
カシコンリサーチセンターは、基礎プラスチック製品はとりわけCLMV諸国向けの輸出生産が今後も成長の可能性が高いと考えています。これら諸国は、ポテンシャルを有する市場であり、日常生活で基礎プラスチックの需要が高いからです。
これら諸国におけるプラスチック製品の輸入額は、2008〜2013年に年間平均19.2%のペースで増加し続けています。それに加え、タイ製プラスチック製品は品質が高く、色彩や模様が美しく、一般的な消費者が購入可能な価格帯であるため、これら近隣諸国で人気の商品となっています。タイがCLMV向けに輸出したプラスチック製品は、2010〜2014年に年間平均13.6%増加しました。他国と比べて最も高い伸び率です。
プラスチック工業は、国境の特別経済区の中でも、ミャンマーとカンボジアに接しているターク県とサケーオ県での投資のチャンスがあり、両県はCLMV向け輸出のためのプラスチック製品の生産拠点としての潜在力が高くなっています。
長期的にはスーパークラスターを利用した生分解性プラスチック生産が重要な推進力
現在、世界中で生分解性プラスチックの需要が高まり続けています。カシコンリサーチセンターでは、世界市場における生分解性プラスチックの需要は2020年までに年間平均27%のペースで増加し続けると予測します。しかしながら、タイでは生分解性プラスチックは、まださほど生産、輸出されていません。生産・輸出の割合は、タイのプラスチック製品生産と輸出額全体の1%にも達していません。また、生分解性プラスチックは、タイの消費者にまだ広く知られていません。価格面でも一般的なプラスチックで作られた製品に比べて2倍程度高くなっています。
この結果、現在、生分解性プラスチック製品の多くは、特定のグループ向け、または、社会・環境に対する企業の社会的責任(CSR)活動の一環として企業イメージ向上のために、一部の事業者が求める商品を受注に応じて生産・販売するスタイルを取っています。
しかし、カシコンリサーチセンターは、生分解性プラスチックこそがタイにとって将来的なビジネス・チャンスになると考えています。その主な理由は、タイが下記のような生分解性プラスチック工業の集積を成功させることができる多くの支援要素を備えているためです。
(1)生分解性プラスチック生産のバイオマス原料が揃っている
タイは、キャッサバ、サトウキビなどのバイオマス原料が豊富にある国です。このことがタイにおける生分解性プラスチックのペレット生産への投資に大手企業を引き付ける一因となります。タイで生産・販売される生分解性プラスチックのペレットが将来的に増えれば、原料が入手しやすくなり、また価格も下がることから、プラスチック製品生産企業、特に中小企業が生分解性プラスチック製品生産に目を向ける重要な誘因となると考えら
れます。
(2)石油化学工業の人材が育成されている
域内の他国と比べると、タイは特に石油化学産業において熟練した人材、スキルの高い労働者が多くいます。また、石油化学産業の成長を支えるために、国内の多くの大学で学士レベルまたはそれ以上のレベルの石油化学工業に関する教育・研究機関が整備されています。
(3)上流から下流までの石油化学分野の産業集積がある
タイは、石油化学産業における関連製品の生産が、川上から川中、川下まで全て揃っているため、生分解性プラスチック工業に応用することはさほど難しくありません。
カシコンリサーチセンターは、生分解性プラスチック工業は、多くの方面からの協力、とりわけ政府による投資奨励に依拠することで、成功する可能性があると見ています。現在、政府は、環境にやさしい石油化学・化学製品工業における投資奨励の重要性を認識しており、特別経済区の形態でスーパークラスター方式の投資奨励を決定しています。8年間の法人所得税免除とその後5年間の50%控除に加え、将来的な重要度が高い事業の場合は、最長で10〜15年間、法人所得税を免除する投資優遇が用意されています。それに加え、ターゲット地域で働く専門的知識を持つタイ人、外国人の専門家のための個人所
得税の免除など各種の投資優遇が付与されることもあります。
■タイ経済最新情報 12月号 2015/12/30 (No.118)
監修:カシコンリサーチセンター
マクロ経済・投資調査部取締役副社長
Dr. ピモンワン マハッチャリヤウォン
マクロ経済調査主任研究者
ルチパン アッサラット
ハタイワン トュンカティラクン
THAIBIZ編集部
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