カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2016.05.31
目次
タイ中央銀行が発表した2016年2月の重要な経済指標によると、タイの国内経済は前月よりも安定しました。公共支出が堅調に推移したことに加え、 非農家収入が増加したことで耐久財を除く支出が拡大し、民間消費が相対的に安定しました。しかし、物品輸出は金の輸出額を取り除くと2月も収縮していました。また、現在の干ばつ問題も農業生産と工業生産に悪影響を与えました。
不安定な輸出と干ばつ問題が今後のタイ経済成長のリスク要因
2月の民間消費は前年同月比3.1%の上昇で、前月の同1.2%増から伸びが加速しました。自動車物品税の変更が影響し耐久財は前年同月比11.5%減となったものの、非農家 収入の増加で非耐久財とサービスに対する消費は、それぞれ同4.3%、9.8%上昇しまし た。ただ、干ばつの影響で農家収入は減少しました。農作物価格の低迷と高水準の家計債務が、 依然として民間消費の伸びを押し下げていました。
公共支出では、中央政府の予算執行はやや減速しましたが、政府機関の投資や公務員の給 与引き上げなどで堅調に拡大し、タイ経済を下支えしました。
一方で、民間投資は前年同月比2.0%上昇しました。ただ、伸び率は前月から1.1ポイン ト縮小しています。設備稼働率が6割台にとどまる中で、通信と再生可能エネルギーを除くほとんどの分野で設備の増強を必要としない状況となりました。
2月の輸出は、前年同月比6.2%増の181億2000万米ドルとなり、過去13ヵ月連続のマイナス成長からプラス成長に転じました。しかしながら、過去最高水準で拡大した金の 輸出額を除くと、輸出額は収縮しました。品目別に見ると、石油関連製品と農産物の価格下落が依然としてマイナスの要因で、石油価格が同36.5%減、化学製品が同16.5%減、コメも同25.7%減となりました。しかし、乗用車などの主な輸出品は同98.5%増加しま した。
商務省が発表した貿易統計によると、2016年3月のタイの輸出額は、前年同月比1.3%増の191億2500万米ドルとなりました。しかしながら、金の輸出額を除くと、3月の輸出が同1.1%収縮しました。3月の工業製品輸出、特に自動車、機械、金地金が伸びました。また、農産物の輸出も数量ベースで見ると、多くの品目で改善する兆しが出ています。 ただし、世界市場の原油価格が依然として低水準で推移しているため、大半の農産物の輸出価格も低迷しています。
3月の品目別に見ると、主要工業製品は前年同月比3.4%増となりました。金地金が相場 の反発により262.5%増となったことが寄与しています。物品輸出全体の7.6%を占めている精製油、化学品、合成樹脂の輸出額は22.7%減となりました。3月の世界市場にお ける原油価格が1バレル当たり 35.2米ドルと低い水準にとどまっていることが主因です。一方で、農産物・加工品の輸出額は1.5%減となりました。
2016年2月の工業生産に関しては、1月の前年同月比3.5%減から同1.6%減になりました。下落幅は前月から1.9ポイント縮小したものの、マイナス成長を継続しました。ハードディスク駆動装置(HDD)と繊維・衣料はともに2割近く落ち込みました。
サービス・セクターは、観光業の成長加速にともない前月から拡大しました。外国人旅行者数は前年同月比16.0%増の309万人と好調拡大を維持しました。特に、中国、ユーロ圏やロシアなどからの外国人旅行者が引続き増加している傾向があります。また、観光客からの収益は前年同月比22.9%増の1610億ドルとなりました。
商務省が発表した3月のヘッドライン・インフレ率は、2月の前年同月比0.52%減から同0.46%減となり、15ヵ月連続で減少したものの、マイナス幅は4ヵ月連続で縮小しました。食品・飲料部門は前年比で引き続きプラス傾向にあるものの、品目別で全体の22%強を占める運輸・通信がマイナスで推移していることで前年を下回りました。
今年上半期の経済成長率は 前年同期比2.8%増と予測されます。その主な要因は、干ばつ と農産物価格の低迷が農業所得にマイナス影響を及ぼしているほか、物品輸出も依然として収縮を続けているためです。しかしながら、下半期に入ると政府の大規模インフラ開発が本格化する見込みで、タイ景気にプラス影響を与えると予想します。このプラスとマイナスの影響を受け、2016年通年のGDP伸び率の見通しは従来通りの前年比3.0%増を維持すると予測されます。
バーツ相場の変動については、 バーツは、2016年4月20日には1米ドル=34.87バーツの終値をつけ、2016年3月23日の1米ドル=35.20バーツからドル安傾向が継続しました。その原因は、米利上げ回数の見通しが4回から2回へ修正され、ドルを売る動きが強まったためです。
一方、バーツ対円の変動につい て、2016年4月20日には100円=31.97バーツの終値をつけ、2016年3月23日の100円=31.31から円高傾向が継続しました。その原因は、世界経済の回復が遅れたことから、投資家がリスク回避の姿勢をとり円を買う動きが強まったためです。
現在、日本食レストラン事業、飲料、ベーカリーなどの飲食チェーン事業と食品の小売・卸売事業は、経済構造、社会、消費者のライフスタイルの変化にともない、急成長を遂げています。これら飲食業は、店舗網を拡張し、地方や新しい消費者グループへと浸透を続けています。従って、数多くの店舗に向けて品質基準を満たす商品・原料を納入することが、この時代の飲食業者にとって重要な課題になっています。輸送品質保証のある商品 在庫管理・温度管理輸送であるコールド・チェーン・マネジメントは、飲食事業の物流をスムーズにし、また経営効率性を向上させるため、事業のポテンシャル向上を支援することになります。
コールド・チェーン・マネジメント事業は温度管理商品の保管・輸送事業の1形態ですが、 温度管理商品の保管・輸送サー ビス市場全体と比べると依然として規模が小さいです。しかしながら、食品事業は成長トレンドが続いており、温度管理商品の保管・輸送事業もそれにともなって成長のチャンスがあります。カシコンリサーチセンターは、コールド・チェーン・マネジメント事業の市場規模を、2015年の68億バーツから2018年には100億バーツ規模に増えると予測しています。
コールド・チェーン・マネジメント事業の現在のプレーヤーの多くは、大手企業または外資系企業です。以下の通り区分されます。
本社の需要に応えるために設立された系列会社向け物流会社:支店または顧客向けの商品輸送工程を管理します。すべてのコールド・チェーン・マネジメント市場のうち26%を 占めます。
他の事業者向けサービスを提供する物流会社:顧客に対し適切なソリューションを提供し ます。このグループは、すべてのコールド・チェーン・マネジメント市場のうち74%を占め、その規模は約50億バーツです。
コールド・チェーン・マネジメント事業は、食品事業の成長による追い風のみならず、伝統的な温度管理商品の輸送受託・請負サービス事業と差別化される事業の優位性から、将来的にさらに成長する可能性を有していることが分かります。すなわち、コールド・チェーン・マネジメント事業は、サービス利用者の事業コストの低減に役立ちます。とりわけ、日本食レストラン、カフェ・ベーカリーなどプレミアムな食品事業は、味や品質を維持しなければならないため、商品のロスを減らし、サービス提供の品質基準を維持する必要があります。
今後のコールド・チェーン・マネジメント事業市場の競争構造を見ると、タイや海外の大手企業の参入が予測されます。また、コールド・チェーン・マネジメントシステムを有するメーカーである大手企業が他の事業者に対するサービス提供の市場にも参入する可能性もあります。
それに加え、アセアン経済共同体(AEC)の発足により、地域における貿易・投資の結びつきが強化され、それにともない相互のサプライチェーンが構築されるため、コールド・チェーン・マネジメントも当該地域における成長が見込まれる分野の1つになっています。また、物流の自由化が進められていることも、海外の大手企業にとってタイ国内やASEAN地域でこの事業に参入する魅力となると見込まれます。
THAIBIZ編集部
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