【連載】カシコン銀行によるタイ経済・月間レポート 2015年7月号

【連載】カシコン銀行によるタイ経済・月間レポート 2015年7月号

公開日 2015.08.22

通関の規則・手続きの一元化が拡大メコン川流域の交通・運輸連結の成功の鍵

タイ政府と中国政府は、2014年にノンカイ・ゲンコイ・マプタプット間と、バンコク・ゲンコイ間に複線鉄道新線を建設する了解覚書(MOU)を締結しました。また、タイ政府は、2015年5月に日本政府ともバンコク・チェンマイ間、およびバンコク・カンチャナブリ、バンコク・チャチュンサオ・アランヤプラテート間の鉄道新線開発に関する協力覚書(MOC)を締結しました。すなわち、これらのインフラ投資開発は、タイ、ラオス、カンボジア、ミャンマー、ベトナム、および中国南部により構成される拡大メコン川流域(GMS)の交通・運輸面の迅速な連結と輸送網の拡大をより一層後押ししています。
南北経済回廊、東西経済回廊、および南部経済回廊という3本の経済回廊ルートは、GMS加盟国間の交通・運輸面の連結に重要な役割を果しています。これをうけて、タイと近隣諸国との国境・通過貿易も大幅に拡大し、2010年の合計2900億バーツから2014年の5700億バーツに増加し、2倍近い伸びを見せています。カシコンリサーチセンターは、2015年のタイと近隣諸国との国境・通過貿易金額が約6500億バーツに達し、前年比13.8%増となると予測します。
交通・運輸インフラへの投資は、GMS地域の連結性向上に寄与する1つの材料に過ぎません。実際には、域内の輸送活動をより円滑、迅速に行なえるようにするため、加盟各国が通関の規則・手続きを一元化して調和させることも、もう一つの重要な材料です。通関の規則・手続きの一元化に向けた取り組みに関しては、ASEANとGMS地域の両方をカバーする枠組み協定である国際輸送の円滑化に関するASEAN枠組み協定(ASEAN Framework Agreement on the Facilitation of Inter-State Transport: AFAFIST)、物品輸送の円滑化に関するASEAN枠組み協定 (ASEAN Framework Agreement on the Facilitation on Goods in Transit : AFAFGT)、およびGMS内の国境越え輸送に関する協定 (GMS Cross-border Transport Agreement: GMS CBTA)がありますが、目標達成に向けた調整はあまり進んでいません。加盟国がいまだに各協定の添付書類や議定書の調印を行なっていないことが一因となっています。
このため、域内諸国間の貨物輸送は、依然として制約を抱えたままであり、タイからカンボジアに乗り入れる貨物輸送車の台数割当や、ラオスでの非公式な通行代金の支払いなどにより、本来は不要である追加コストが発生しています。
このほかに、通関システムの基準や各種規則なども各国で異なっています。例えば、国境ゲートの開閉時刻の設定も一致していないこと や、隣国の法令では、依然としてタイの税関職員が隣国側の国境ゲートの内部まで立ち入って、職務を遂行することが許されていないことなどです。こうした制約の結果、域内の通関システムの開発は、依然として統一に向けた流れを作り出すことができず、とりわけ1箇所で全ての検(Single Stop Inspection: SSI)を実施するためのエリア開発の大きな障害となっています。SSIエリアが設定されば、国境越えの貨物検査に要するコストの削減と時間の短縮が可能となります。

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このような状況から、近隣諸国向けの国境越えの貨物輸送コストは、かなり高くなっています。トラックの運行に必要な経費以外に、ほかの種々の経費が付加されるからです。それに加え、各国とも、依然としてタイのトラックの国内乗り入れを規制しています。カンボジアは、国境ゲートを通過して国内に乗り入れることができるトラックの台数を制限しています。ミャンマーでは、国境ゲートから15〜20キロメートルの乗り入れしか認めていません。一方で、ラオス政府は、一部のルートでタイのトラックが国を横断して、第3国に乗り入れることをまだ許可していません。
こうした規制のいずれもが、GMS域内の貨物輸送の障害となっており、輸送に追加のコストを発生させています。従って、GMS加盟各国は、国境越えの貨物輸送の便宜を図るため、交通輸送に関連した協力枠組みに基づく取り組みを急ぐとともに、通関手続きを一元化 し、早急に実践面でも成果が現れるようにする必要があります。

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■タイ経済最新情報 7月号 2015/6/30 (No.113)
監修:カシコンリサーチセンター
マクロ経済・投資調査部取締役副社長
Dr. ピモンワン マハッチャリヤウォン
マクロ経済調査主任研究者
ルチパン アッサラット
ハタイワン トュンカティラクン

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THAIBIZ編集部

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