【連載】カシコン銀行経済レポート 2016年6月号

【連載】カシコン銀行経済レポート 2016年6月号

公開日 2016.07.26

タイ経済・月間レポート(2016年6月号)

2016年4月のタイ経済情報

タイ中央銀行が発表した2016年4月の重要な経済指標によると、国内経済が緩やかなペースで拡大しました。外国人観光客数の増加によりサービス業が成長しました。一方で、輸出の不調や干ばつによる内需の低迷で製造業の拡大は低い水準にとどまりました。しかしながら、農業所得は農産物価格が反発したことで上向き始めました。

タイ経済は緩やかな回復基調が継続

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4月の民間消費は前年同月比5.5%の上昇で、前月比では0.2%下落しました。非耐久財への支出は改善したものの、消費者は支出に対し慎重な姿勢を示しており、全体では伸び悩みました。農家収入はゴムやパーム椰子などの価格が持ち直したものの、依然として低い水準にとどまりました。

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一方で、民間投資は前年同月比1.4%上昇し、前月からほぼ横ばいとなりました。しかし ながら、4月の政府の予算執行額は、前年同月比の16.8%の2230億バーツとなりまし た。 今後、公共投資の拡大、および政府による民間投資の刺激措置により、民間投資が改善傾向に向かうと見込まれます。
2016年4月の工業生産に関しては、前年同月比1.5%の上昇で、前月の同2.2%増に引き続きプラス成長となりました。生産品目別で見ると、乗用ピックアップトラック(PP V)の需要拡大で自動車が前月の7.3%から9.1%に伸びが加速したほか、価格下落で需 要が伸びた石油製品がマイナス2.5%からプラス5.9%に回復しました。ただし、主要輸 出先の需要低迷で全体的に大きな改善はまだ見られません。

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サービス・セクターは、特に、観光業の成長が引続き拡大しました。外国人旅行者数は前年同月比9.8%増の260万人と好調拡大を維持しました。特に、ロシア、中国、日本などからの外国人旅行者は引続き増加していました。
4月の輸出は、前年同月比7.6%減の155億米ドルとな り、2ヵ月連続でマイナス成長でした。タイの重要な輸出先である米国、ユーロ圏、中国、日本への輸出は減少しました。品目別に見ると、自動車・部品が前年同月比8.0%減、機械・部品 が同12.7%減、電子機器が 同6.8%減、農産加工品が同6.9%減となりました。
商務省が発表した2016年5月の貿易統計によると、タイの輸出額(約176億)は前年同月比4.4%減となり、2ヵ月連続でマイナス成長となりました。中国向けの農産物輸出をはじめ、全体的に低調でした。 品目別に見ると、5月の工業製品の輸出額は、同2.8%減 となりました。乗用車が同51.5%増と拡大したことなどから、車両・部品が同4.6%増加 したほかはおおむね落ち込みました。しかしながら、コンピュータ・部品の輸出額は、同12.4%減でした。一方で、農産物・加工品は、前年同月比7.4%減少しました。

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今後、タイ輸出の回復は遅れる懸念があります。その主な要因は、世界経済の先行きに脆弱性と不透明感が残っているためです。それに加え、イギリスのEU離脱確定により、ポンド安に伴いユーロ安が起こる影響がタイ輸出に下振れ圧力がかかると見込まれます。尚、タイの英国向け輸出は輸出額全体の約1.8%を占めているものの、EU向け輸出は全体の約10.2%となっています。
従って、カシコンリサーチセンターは、2016年通年のタイ輸出額の伸び率見通しを、以前の予測値である前年比0.0%増から、新たな予測値の同2.0%減に下方修正しました。しかしながら、タイ経済全体として、観光業と公共支出に引き続き牽引される見込みです。また、現在、タイは雨季に入り、干ばつの影響が徐々に改善していると見られ、今後の個人消費にもプラス影響を与えると見込まれます。よって、カシコンリサーチセ ンターは、2016通年のタイ 経済成長率の見通しを、従来予測値の同3.0%増を維持しま す。

2016年5月のタイのインフレ率

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商務省が発表した5月のヘッドライン・インフレ率は、4月の前年同月比0.07%増から同0.46%増となり、伸び率がわずかに拡大しました。石油関連製品価格の落ち込み幅が縮小していることに加え、食品価格の上昇が加速しました。
品目別にみると、食品・飲料部門では、前年同月比2.97%の上昇で、一昨年12月以降 で最も高い伸びを記録しました。米・粉製品を除き軒並み上昇しており、特に果物・野菜が同15.7%と高騰しました。非食品部門は同0.94%の下落となり、18ヵ月連続の下落となりました。 一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・ インフレ率は、前年同月比0.78%の上昇で、前月から伸びが横ばいとなりました。

2016年6月のタイバーツの為替レート

6月24日にイギリスのEU離脱が決まり、投資家がリスク回避の姿勢をとり、世界金融市場で円と米ドルを買う動きが強まっています。この結果、バーツ対円の為替レートは6月27日には100円=34.6バ ーツの終値をつけ、6月23日の100円=33.1バーツから円高傾向を見せました。今後も円高傾向が予想されます。

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一方、バーツ対米ドルの為替レートは、6月27日には1米ドル=35.3バーツの終値を つけ、6月23日の1米ドル=35.1バーツから、小幅な米ドル高傾向を見せました。今後、イギリスのEU離脱により、バーツ相場は軟化傾向にあると予想されます。

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4G時代に向けた通信網の設備投資の動向

タイの移動体通信業界は、4G時代に突入することを背景に、ますます競争が激化しています。 同時に、タイ消費者のインターネット需要は、拡大の一途を辿っています。その主な理由は、スマートフォンや、タブレットの価格が低下して、より購入しやすくなっているだけでなく、フェイスブックや、ユーチューブなどソーシャル・ネットワークの存在がタイの消費者のネット需要を刺激しているためです。また、2016年の3G・4Gを通じた無線インターネット通信の利用者は引き続き増加し、3840万〜3970万人に達する見込みで、人口比で単純に見れば60.4〜62.6%に達する人がネ ットを利用することになると予測します。
現在、タイにおける3Gネットワークのサービスエリアは、国土全体のほぼ95%を網羅 していますが、消費者のネット需要の拡大傾向により、移動体通信業者は3G・4G通信網の設備投資を行なう必要があります。バンコク首都圏や地方の大都市、観光地などはネット需要が高く、3G・4Gへの新たな投資拡大が期待されます。また、これらの地域では既存の3Gネットワークを4Gにアップグレードする動きも進展しています。
一方で、その他の地域では依然として2G・3Gの需要が高く、使用している携帯電話の仕様も3G対応が中心と考えられます。それにより、2016年中の早い段階で4Gへの転換に向けた投資が進むとは考えにくいですが、それでも徐々に4Gの導入に向けた動きが進んでいくと見込まれます。
カシコンリサーチセンターは、今後3年間で、新規の4G導入に向けた設備投資と従来の3G設備の4Gへの切替工事などに関する投資を合わせた総投資額が2300億バーツに達すると予測します。特に4G時代元年となる2016年には、3G・4G通信網の設備投資額は1000億バーツに達すると予測します。3年間での全投資額の43.5%に相当する金額です。その主な理由は、初年度の今年が勝負の年になると各企業が考え、できるだけ早い段階で高水準のサービスを提供できる地盤を構築しようとすると見られるためです。 2016年の設備投資において、設備機器の輸入と販売に関わる投資が770〜790億バーツを占めることになります。残りの210〜230億バーツが設備の設置、必要な用地取得に関する費用、既存設備の補修費などに充当されます。従って、無線ネットワークの設置や 敷設に関する事業は、2016年に大きな成長が期待できる分野だと言えます。

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33-34-07

THAIBIZ編集部

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