【連載】カシコン銀行経済レポート 2017年6月号

【連載】カシコン銀行経済レポート 2017年6月号

公開日 2017.07.31

タイ経済・月間レポート(2017年6月号)

2017年4月のタイ経済情報

4月のタイ景気は引き続き拡大基調

タイ中央銀行が発表した2017年4月の重要な経済指標によると、足元の景気は引き続き拡大しています。前月と同様に輸出と観光業が牽引しています。また、民間消費も上向く兆しが見えています。しかしながら、民間投資は横ばいで、工業生産は収縮に転じています。
4月の民間消費は前年同月比3.6%上昇しました。タイ人および外国人旅行者の増加でサービス指数が推定8.5%上昇したことに加え、乗用車をはじめとする耐久財指数も11.9%上昇しました。とりわけ農家収入の拡大が支出増に貢献した格好でした。非農家収入は横ばいで、本格的な消費回復には至っていません。
一方で、民間投資は前年同月比0.2%下落し、落ち込み幅は前月から縮小しました。設備投資が前年同月比で小幅拡大、前月比でほぼ横ばいとなりました。また、建設投資は減少しました。資本財輸入は、主に輸出関連企業による設備導入を受けて増加しました。また、商用車の販売台数も伸びています。

4月の輸出は、前年同月比5.9%増の165億米ドルとなりました。ゴム製品や砂糖、コメの外需が拡大しました。また、通信機器はスマートフォンの生産拠点が日本からタイに再配置されたことで輸出が伸びました。一方で、自動車や集積回路は先に増加していた反動で落ち込みました。
工業生産に関しては、前年同月比1.7%減となりました。輸出の不振から自動車工業の生産が落ち込んだことが響きました。自動車工業は特に中東向け輸出の減少が生産全体に影響を及ぼしています。食品・飲料の生産も需要減退から減少しました。
観光業では、外国人観光客数が前年同月比7.0%増加しました。季節調整済みの前月比では、0.9%増となりました。世界経済の回復を背景に、欧州、東南アジア諸国連合(ASEAN)などからの観光客数が増加しました。

2017年5月のタイのインフレ率

商務省が発表した2017年5月のヘッドライン・インフレ率は、4月の前年同月比0.38%増から同0.04%の減少で、14ヵ月ぶりに下落しました。前年同期に干ばつの深刻化で生鮮果物・野菜の供給が減少し、価格が高騰した反動が出ました。

品目別にみると、食品・飲料部門では、前年同月比1.4%の減少で、前月の同0.26%減から2ヵ月連続で縮小しました。米・粉製品と卵・乳製品が前月に引き続き落ち込んだことに加え、果物・野菜が同12.9%減と減少幅が大きかったです。一方で、非食品部門で構成品目の2割強を占める住宅部門が前年同月比0.64%上昇しました。そのほかは、運輸・通信が同1.26%上昇するなど、おおむね横ばいでした。
振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は前年同月比0.46%の上昇で、前月から伸びが横ばいでした。

2017年6月の外為相場

6月14日に発表のあった米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げ決定で、金利誘導目標を1%~1.25%のレンジに引き上げました。今後、米国で金融政策の正常化が進むとの見方が改めて強まりました。6月中旬から米長金利が上昇し、日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いの動きが強まると予想されます。

電気自動車に対する消費者の関心度調査

現在、電気自動車(Electric Vehicle:EV)に対するタイの消費者の認知度が高まりつつあります。タイ政府がこうしたタイプの自動車の生産投資を支援する計画を発表したことにより、メーカーとユーザーの双方が具体的な市場イメージを抱き始めるようになりました。そこでカシコンリサーチセンターは、現時点での市場の需要を反映させるべく、EVに対するユーザーの関心度を調査しました。

調査結果で興味深かったのは、EVの市場ではプラグイン・ハイブリッド車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle:PHEV)がユーザーの関心を最も多く集めていたことです。とりわけ、ガソリン車の同型車種との価格差が20万バーツを超えない場合には、多くのユーザーの関心を集める可能性があります。PHEVに対する関心は、この自動車が市場で関心を集める斬新な自動車のように見えることに起因している可能性があり、さらにはガソリンと電気の2種類のエネルギーで駆動できることから、便利だと感じているとも考えられます。

調査対象のうち、2017年中に自動車を購入する計画があると答えた消費者の比率は29.3%です。この中で電気自動車も選択肢の一つとして関心を持つ者が3分の2に上りました。その大部分に当たる74%がPHEVに関心を示し、バッテリー方式電気自動車(Battery Electric Vehicle:BEV)が15%、ハイブリッド車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)が11%でした。

EVを購入する際、支出してもよいと消費者が考えるガソリン車との差額について、EVタイプによって技術水準が高くなるごとに容認できる価格差が拡大することが明らかになりました。HEVの場合には回答者の大部分が容認できる価格差が5万バーツ以下だったのに対して、PHEVの場合では20万バーツ以下の価格差ならば喜んで増加分を支払うと回答しました。BEVの場合になると、一部の消費者は、100万バーツ高くなっても支払う用意があると回答しました。この場合で留意したいのは、差額分を喜んで支払うと答えた回答者は、ほぼ全員、所得水準がかなり高い階層に属するという点です。

また、調査から得られた現在の消費者の行動に応えるため、メーカー側は4つの点を強調したEVのマーケティング戦術を採用する可能性があります。それは、EVによる燃料代節約に関する優れた性能、同型のガソリン車と比較して価格水準に大きな差がないこと、走行時の性能、および環境に対する優しさと言った点です。

しかしながら、消費者にとってEVの購入意欲を減退させる可能性のある懸念もあります。それは、充電サービス施設が依然として不足していること、1回の充電に要する時間と走行距離、および修理とメンテナンスに関する懸念です。

カシコンリサーチセンターは、政府が投資奨励措置を発表した後のEV市場の方向性として、自動車メーカーがそれぞれに異なった形で事業方針の決断を下すと予想します。手持ちの技術を持っているメーカーは、他社に先駆けることで市場シェアを確保したいため、早期に投資を行い、EV市場に参入する決断を下すと考えられます。これに対し、EVの存在が広く知られ、市場がある程度成長した時期に参入するメーカーもあると思われます。

本資料は情報提供を唯一の目的としており、ビジネスの判断材料とするものではありません。掲載されている分析・予測等は、資料制作時点のものであり、今後予告なしに変更されることがあります。また、予測の妥当性や正確性が保証されるものでもありませんし、商業ないし何らかの行動の為に採用することから発生した損害の責任を取れるものでもありません。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自でご判断ください。

THAIBIZ編集部

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