カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2015.07.26
タイ中央銀行が発表した2015年4月の重要な経済指標によると、国内経済の回復ペースは依然として鈍化しています。輸出の不振に加え、消費者、企業とも支出に慎重になっていることが背景にあります。しかしながら、観光業は成長が持続し、国内経済をけん引しています。
タイの景気回復ペースは引き続き緩やか
4月の民間消費は前年同月比で0.2%下落しました。非農業部門の家計の所得が失速し、農産物価格の下落と昨年の干ばつの影響による生産減などを受け、農家収入も下落しました。さらに、景気の先行き不透明感から消費者の信頼感が悪化し続けています。このため、耐久財の支出は減少しました。一方で、非耐久財の消費は横ばいとなっています。
一方、民間投資は3月の前年同月比0.5%減から同0.9%増となり、マイナス成長からややプラス成長に転じました。国内外の需要低迷で、企業の間で生産能力の増強を控える動きが広がったためで、機械・設備の輸入も減少しました。
4月の輸出は、前年同月比1.7%減の167億4900万米ドルとなり、前月から引き続き収縮しました。中国経済の減速の影響が顕著に現れているほか、日本や欧州などの主要貿易相手国の経済の回復も遅れていることが原因です。また、輸出価格は、原油価格に連動して多くの物品で低位にとどまっています。
商務省が発表した2015年5月の貿易統計によると、タイの輸出額(約184億2880万米ドル)は前年同月と比べ、4月の1.7%減から5.0%減になり、5ヵ月連続でマイナス成長となっています。主要輸出先国の経済回復が予想より遅れたことや、干ばつによる収穫量の減少などが、タイの輸出低迷につながっています。
品目別に見ると、農産物・加工品では、天然ゴムが前年同月比14.4%減、コメが同1.9%増となりました。主要工業製品では、自動車・部品が同0.6%増、コンピュータ・部品が1.3%減、電子回路が同3.9%減となりました。
日・欧・中向けの輸出は引き続きマイナス成長となっています。しかしながら、米国向けの輸出は同0.4%増となり、10ヵ月連続で増加しました。
工業生産に関しては、3月の前年同月比1.8%減から同5.3%減となり、2ヵ月連続でマイナス成長となりました。国内外の需要が低下した結果、企業は生産を減らしています。生産品目別では、ハードディスク駆動装置(HDD)が前年同月比26.2%の下落となったのをはじめ、家電製品、セメント・建材、繊維などの生産が落ち込みました。
4月にタイを訪れた外国人観光客は229万人で、前年同月と比べ18.3%増加し、7ヵ月連続でプラス成長となりました。
中国とマレーシアからの観光客の増加により、順調に拡大しています。前月からやや伸びが鈍化したものの、2桁のプラス成長を維持しました。
商務省が発表した2015年5月のヘッドライン・インフレ率は、2015年4月の前年同月比1.04%減から同1.27%減となり、5ヵ月連続で減少しました。その主な原因は、石油価格の下落と電気料金に含まれる燃料費調整単価(Ft)の引き下げなどによります。
品目別にみると、食品・飲料は全体で前年同月比0.11%増となり、6ヵ月連続で鈍化しました。卵・乳製品がマイナス2.98%、肉・魚もマイナス1.18%と前月を下回りました。非食品では運輸・通信のうち石油燃料がマイナス20.54%と前月を上回りました。
一方、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.94%増となり前月の同1.02%増を下回りました。
バーツ相場の変動については、タイバーツは、2015年5月末には1ドル=33.70バーツの終値をつけ、2015年4月末の終値1ドル=32.95バーツから依然として軟化する傾向を見せました。その主な理由は、米国のFRBが年内に短期金利の引き上げを開始する見通しであること、およびタイ中央銀行が4月29日、政策金利(翌日物レポ金利)を0.25%引き下げ、年1.50%にすると決定したことで、タイバーツは引続き軟化しました。バーツの対円為替レートも同様に軟化傾向にあります。5月12日には100円=28.17バーツから、6月17日には100円=27.23バーツまで軟化しました。日本銀行は、2%の物価安定の目標をし、量的金融緩和策を続けています。
THAIBIZ編集部
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