カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2014.09.10
商務省が発表した2014年8月のヘッドライン・インフレ率は、カシコンリサーチセンターが予想した同2.1%増から前年同月比2.09%増となり、7月の同2.16%増を引続き下回り、過去6ヵ月ぶりの最低水準になりました。前月と比べた場合、8月のヘッドライン・インフレ率は0.08%減となり、3ヵ月連続のマイナス成長を示しました。一方、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月に比べ1.83%増となり前月の同1.81%増を小さく上回りました。
インフレ率が3ヵ月連続で減少した主な理由は、生鮮食品と燃料価格が減少したためです。農産物の生産量が増えたことにより、2014年6〜8月の間の野菜・果物の価格が引続き減少しました。国内燃料価格に関しても、過去数ヶ月連続の世界市場における石油価格の減少傾向および一部の国内燃料価格(ガソリン価格)の仕組みが改定された影響で減少しました。国家平和秩序評議会(NCPO)が2014年8月29日に一部の国内燃料価格の仕組みを改定することを発表しました。この改定によって、ガソリン価格は最大で3.89バーツ/リットルの値下げ、最低でも1バーツ/リットルの値下げとなり、改定前の価格と比べ2.9〜8.0%減少しました。一方でディーゼルは0.14バーツ/リットルの値上がりとなりました。
2014年残りのインフレ率の動向に関して、カシコンリサーチセンターでは、政府による一部の国内燃料価格構成の改定、生活必需品の価格統制、電気料金における燃料費調整単価(Ft)の統制などの要因により、以前に予想したインフレ率を下回る可能性があると予想します。2014年第3四半期と第4四半期のインフレ率は前年同期比平均2.0%増になると予想します。この結果、カシコンリサーチセンターは、2014年通年のヘッドライン・インフレ率を以前に予想した前年比2.4〜2.8%増から同2.0〜2.2%増に下方修正しました。このインフレ率の水準により、タイ中央銀行は今後数ヵ月の政策金利を2.0%に据え置くことができる見通しです。このことが2014年残りのタイ経済回復を刺激する一つの要因になると予想します。
タイと国境を接する隣国のうち、カンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM)は、経済が急速な発展を遂げつつあります。その主な要因は、これら諸国の一連の政策が他国からの
投資の促進、奨励を拡大する方向に向かっているためです。タイと国境を接するこれら3ヵ国以外に、ベトナムも、また海外からの投資の誘致に関して優れた潜在能力を持つ国の1つに数えられます。国民の多くが勤労世代であり、労働資金もかなり低いからです。
これらCLMV諸国の経済の飛躍的な成長は、中国南部を含む近隣諸国の市場に参入する企業にとってのビジネス・チャンスになると考えられます。タイはこの地域の中心に位置するという地理的な優位性を持っており、隣国との国境線の総距離は、5000キロメートルを超えます。このため、国境貿易に利便性を有し、輸送コストも低く国内経済の低迷期に事業者が被る打撃を緩和するために、タイの市場で供給過剰となった製品を他の市場
に向けて低コストで分散することができます。この他に、CLMVで実施されている他国からの投資プロジェクトにより、現地では建設資材、その他関連製品の需要が高まっており、これもタイの輸出の支援材料となっています。
国境貿易額がタイの貿易総額に占める比率は、依然としてそれほど大きくはありません。しかし、国境貿易はこれまで一貫して飛躍的な伸びを見せてきており、現在タイの貿易総額の約6.6%となっています。カシコンリサーチセンターは、2014年の国境貿易額が前年比約2.8%増となり、9500億バーツの水準に達すると予測しています。また、2016年までに1兆バーツにまで拡大すると見込みます。特に、マレーシアとの貿易を除くタイとCLM3ヵ国との今年の国境貿易額の伸びは、前年比9%増になる見通しです。
輸出を支える支援要因として、3ヵ国で都市化が進展していることに加え、中間層の成長が挙げられます。また、3ヵ国の市場では依然としてタイ製品の品質が信頼されており、これがタイ製品にとっての強みであり続けています。市場拡大の機会が大きい製品は、これまでと同様に消費財、建設資材、輸送機械部品となっています。
隣国との国境貿易以外に、事業者は国境を越える陸路経由でベトナムや中国南部、シンガポールといった第3国との貿易も可能です。現在、こうした陸路経由での第3国との貿易額は、まだそれほど大きくなく、約1100億バーツ(タイの貿易総額の1%)に過ぎません。しかしながら、将来において交通輸送ルートが開発されASEAN経済共同体(AEC)が発足し、ASEANの統合が進めば、国境越え輸送の拡大を刺激する効果がもたらされ、とりわけタイからラオスを経由してベトナムに至るルートでは相互の貿易額が急速に増大することが予想されます。
■タイ経済最新情報 9月号
2014/9/30 (No.103)
監修:カシコンリサーチセンター
マクロ経済・投資調査部取締役副社長
Dr. ピモンワン マハッチャリヤウォン
マクロ経済調査主任研究者
ルチパン アッサラット
ハタイワン トュンカティラクン
THAIBIZ編集部
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