カテゴリー: 自動車・製造業
公開日 2015.03.09
3Dプリンター「Objet500Connex」を囲む、アルテック社の陶山氏(左)と岩本氏(右)
2013年、NASA(米航空宇宙局)は宇宙でピザを出力する3Dプリンターに出資すべく、開発会社に12万5000ドルの資金を提供。また昨年には、国際宇宙ステーション(ISS)へ3Dプリンターを持ち込み、地上から設計図を電送、その場(宇宙)で必要な工具や物品を調達したというニュースも話題になった。ほかにも航空や自動車、医療、食品など、あらゆる業界に関連する3Dプリンターのニューストピックを目にする機会はこの数年で一気に増えた。今年1月には、パーツ付き組み立てマガジンを発行するデアゴスティーニ・ジャパン社から『マイ3Dプリンター』が発売され、プロ仕様の産業用品だけでなく家庭用のものまで、市場の広がりには目を見張るものがある。
3Dプリンターを活用するには、出力元となる3D-CADが入手できる環境と、用途に見合った性能と価格への認識を持つ必要がある・・・
ここまでの知識はなんとなくあっても、出力素材の種類や活用方法については、まだ広く知られていないのが現実だろう。
今回お話を伺ったアルテック社は、欧米を主とする海外から印刷・包装機械をはじめプラスチック・ゴム成形機や食品加工機器、3Dプリンターなどの産業機械商品を輸入し、日本国内、中国、タイ、インドネシアおよびベトナムの拠点で販売を行う輸入商社。
販売する3Dプリンターは、イスラエル・アメリカの大手メーカー・ストラタシス社製のものだ。
同社は2008年よりイスラエルのオブジェット(OBJET)社の代理店として3Dプリンター事業を開始。12年、オブジェット社がアメリカのストラタシス社と合併後は、新生ストラタシス社の「Fortus 」シリーズをはじめとするFDM(※)方式製品と、「Connex」シリーズなどのPolyjet(インクジェット紫外線硬化(以下、インクジェット))方式製品を販売している。ストラタシス社の特許実績は600件以上、15年2月の時点で納品実績は10万台以上にのぼる。
「Objet500Connex 」の内側。異なる種類の樹脂素材がカートリッジ形式で入れ替えられる
3Dプリンターの基本構造は〝レイヤーバイレイヤー〞と呼ばれる積層技術にある。これまで、〝もの〞を作るために用いられてきた「切削・掘削」という形成方法から、積み上げる「積層」に方法にシフトすることで、加工形状への制限がなくなった。これにより、従来不可能だった中空形状、複雑な内部サポート形状、アセンブリされた形状といった「一体」造形が可能になり、設計プロセスの飛躍的な改善が期待できるようになったのだ。
Polyjet(インクジェット)方式では複数の素材が混合できるようになり、カラーや物性の選択肢が広がった。また、FDM方式では通称〝エンプラ(エンジニアリング・プラスチック)〞と呼ばれるABS樹脂、ナイロン、ポリカーボネートなどの、強度に優れ、耐熱性のある素材が出力できるようになったことから、3D-CADデータから実製品用のマテリアルで、高精度なプロトタイプ(試作品)が素早く出力できるようになった。さらにはプロトタイプを越え、最終製品を直接製作するDDM(Direct Digital Manufacturing)という用法も小ロット、多品種製品に広く実用されている。
「3Dプリンターは製造業の開発現場で、試作金型をはじめ、シリコーン注型や鋳造型のマスターモデルの製作にも用いられています。しかし、3Dプリンターが金型に100%勝る、取って変わるということではなく、それぞれの良い点を生かし、適材適所に導入していくことで、作業効率の向上だけでなく、新たなアイディアを素早く形にしていけるのです」(岩本氏)。
(※)FDMはストラタシス社の商標登録
FDM方式
FDM(Fused Deposition Modeling/熱溶解積層法)は、ABSやポリカーボネートなど実際の製品と同じ素材を使用した造形ができるため、機械的、熱的、化学的に実製品レベルの物性をもったパーツを使った高精度なテストが行える。型や治具の最終製品を直接製造するDDMも可能。
【造形の仕組み】
ヒーター部で半液状に溶かした材料素材を、CNC制御された3次元座標上に出力し積層していく。化学薬品や粉末状物質を使わないため、環境にやさしくオフィスでも使いやす
い。
<長所>
強度、耐久性、柔軟性、耐熱性
<用途>
・試作だけでなく、実製品も製作可能
・強度、耐久性、柔軟性、耐熱性が必要な試作
Polyjet方式
Polyjet(インクジェット)方式なら、積層厚16ミクロン(0.016mm)の高精度なモデルの造形が可能。複数の素材を任意の配合率で混合することにより、カラーや物性の選択肢が飛躍的に増加。滑らかな表面をもった最終製品に限りなく迫るリアルなプロトタイプが実現できる。1,000種類以上の物性とカラーを再現できるモデルもあり、デザイン検証に最適。
【造形の仕組み】
インクジェットプリンターに似た構造を持つ。
ノズルから光硬化性の液体フォトポリマーを噴出し、即座にUVライトで硬化させモデルを造形。
噴出する粒子が非常に細かいため、表面の質感が滑らかで、小さく複雑な形状を得意とする。
<長所>
精度、ラバー系材料、多色造形
<用途>
・機械部品の設計確認
・勘合確認
・意匠、デザイン確認
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