カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2014.09.28
2014年上半期におけるタイ輸出の回復テンポは予想外に鈍かったものの、2014年下半期のタイ輸出は、一部の輸出品目に回復の兆しが見えることにより、緩やかな回復基調を辿る見込みです。しかしながら、7月のタイ輸出が再びマイナス成長に転じたことにより、タイ輸出の回復テンポは依然として不安定な状態となっていると見られます。従って、2014年通年のタイ輸出の見通しは、カシコンリサーチセンターによる現在の予測の前年比3.0%増を下回る可能性が未だ残っています。カシコンリサーチセンターは、今後のタイ輸出の動向を観測し、2014年通年のタイ輸出の予測を見直す可能性があります。
農水産物製品:タイ鶏肉の輸出は、シンガポールや日本などからの需要により拡大傾向にあります。その主な理由は、シンガポールが2013年10月以降に冷蔵・冷凍・生鮮鶏肉の市場を開放し、熱処理済み鶏肉調製品をタイから輸入するようになったためです。それに加え、2013年12月中旬には、日本がタイからの生鮮鶏肉の輸入を再許可したことのプラス影響も受けています。一方で、タピオカの輸出は、中国からの食品とバイオエタノール向けの需要が高まっていることにより拡大傾向にあります。しかしながら、早期死亡症候群(EMS)流行の影響が残り、エビの輸出は引き続き不調となる見通しです。
工業製品:タイの主要な輸出相手国である米国、日本、欧州などの経済の改善が続いていることにより、工業製品、特に自動車・部品、電子回路などの輸出は、拡大傾向にある見込みです。また、タイの近隣諸国であるカンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM)の経済発展とともに、電気・電子製品の需要が高まると考えられます。特に、炊飯器、冷蔵庫などといった白物家電の普及が予想されます。さらに、ハードディスク駆動装置(HDD)の輸出についても、米国や欧州でクラウド・コンピューティングならびにビッグデータの新たな需要が増加していることから、改善傾向にあると予想します。
宝石・ジュエリー製品:これらの製品の注文は、米国と欧州が主導し、香港やアセアン諸国を含む主要貿易相手の経済復興とともに、宝石・ジュエリー製品の需要が拡大することで、上向く見込みです。
今後の注目点としては、中国の経済回復の動向が挙げられます。中国は、タイの重要な輸出先であり、2012年のタイから中国向け輸出額の割合はタイの輸出額全体の11.9%を占めました。タイにおける中国向けの輸出品として、約半分は天然ゴムなどの農産物、および電子回路やプラスチックなどの中流(ミッドストリーム)の製品・部品となっています。今後の中国経済回復は、タイの輸出にとって成長を後押しする一つの要素となると考えられます。
尚、2014年残りのタイ経済見通しに関して、政治状況の安定化を背景に民間消費・投資および輸出が徐々に回復する傾向にあることにより、2014年下半期のタイ経済成長率は前年比4.0%以上増加する見通しです。従って、カシコンリサーチセンターは2014年通年のタイ経済成長率を前年比1.8〜2.6%増(通常ケースで同2.3%増)に据え置きます。しかしながら、タイの輸出と観光業の回復テンポは依然として不安定な状態になっていることから、今後のタイ経済回復に未だ下押し圧力がかかっていると考えられます。
■タイ経済最新情報 8月号
2014/8/29 (No.102)
監修:カシコンリサーチセンター
マクロ経済・投資調査部取締役副社長
Dr. ピモンワン マハッチャリヤウォン
マクロ経済調査主任研究者
ルチパン アッサラット
ハタイワン トュンカティラクン
THAIBIZ編集部
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