ArayZ No.84 2018年12月発行「成熟」に向き合う戦略思考とは?
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カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2018.12.25
映像・写真クリエーターの大西弘司氏は、一発撮り(ワンショット撮影)にこだわりを持つ。最近はデジタル技術が進化。撮影後の加工作業で写真をそれなりに仕上げることが可能だが、「オリジナルが良くないと、修正を加えるたびにイラストのような写真となり、自然さが消える」。極力修正を少なくすることで仕上げもきれいになるという、そのプロとしての頑固な一面が評価を上げ、タイ人クライアントのリーピターが少なくないと苦笑する。
撮影機材も、高額でも信頼性の高いメーカーのものを必ず選ぶ。「中国製のストロボを以前使用したが、光量のバランスが不安定でバラツキがでた。その点、作業が几帳面な日本人とドイツ人の製品は信頼できる」と譲らない。
大西氏が設立し、マネージングディレクターを務めるJK Creationは、テレビCMなどの映像制作企業が登録するタイ王国フィルムボードのメンバーで、写真と映像の実制作まで両方を引き受ける唯一の在タイ日系企業。撮影だけでなく、クライアントの要望に沿って、撮影場所の選定・許可申請から加工・編集まで、写真・映像制作の「ワンストップソリューション」を提供する。撮影の対象はタレント、モデルなどの人物から、料理、商品、風景まで、ジャンルを絞らず幅広く引き受け、印刷物に花を添える。
時代の移り変わりに合わせて、新たな技術や機器を採用する柔軟性も持ち合わせており、タイ民間航空局にドローン(空撮機器)使用企業としても登録をされている。「ドローン飛行による映像制作には日本より厳しい規制が課せられている。現在はタイ国家放送通信委員会(NBTC)の認証も取得する必要がある」と説明する。
日本での広告制作会社勤務時代には、JR東海から広告制作の話が舞い込んできた。鉄道写真が大好きだった大西氏は、「絶好のチャンスだった。熱意を伝えたため、受注することができた」と当時を振り返る。その後、主要クライアント企業のタイ工場操業に合わせて、出張ベースでタイを訪問することになった。縁が合ってタイで転職し、その数年後に独立を決意した。
ただ、異国のタイでカメラマンとして登用されることは容易でなかった。「タイ人は地味な仕事を敬遠しがち。ファッション雑誌に出てくるモデルを撮影したいカメラマンは多くいるが、建築インテリアなどの撮影の引き受け手が手薄だった」。タイのファッション雑誌の編集長から日本人の繊細さを期待されて、初仕事が舞い込んできた。外国人として初のインテリア雑誌の表紙も撮影をして徐々に知名度を上げていった大西氏は、日系の有名クライアント広告撮影などを請け負い、大手バイクメーカーの作品では屋外にある広告看板を飾った。
「記憶に残る仕事」を多くのクライアントに提供することをアナログ時代から常に追求。人々の心に訴える写真をレンズに刻んでいきたいという想いを込めて、タイにとどまらず、他のアジア諸国へと撮影可能な範囲をさらに広げている。
今後は「もう一ランク上を目指したい。そして裕福な家庭出身でないタイ人カメラマンを一人前に育て、写真・映像の世界に送り出すことが使命。仕事をさせてもらっているタイに恩返しをしたい」と目を輝かせた。趣味も写真撮影だが、「地方に仕事で行くときに、風景、人々の生活、見たことがない料理に出くわすとワクワクする」と裏方として大西氏を支えるタイ人妻との旅行を楽しむ愛妻家だ。
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THAIBIZ編集部
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