アジア6ヵ国における消費実態 ~際立つインドの旺盛~

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アジア6ヵ国における消費実態 ~際立つインドの旺盛~

公開日 2026.01.19

「インドの経済成長が目覚ましい」「タイの次はインドだ」といった声を耳にする機会が増えている。インド統計・計画実施省(MOSPI)によれば、同国の2024年度(2024年4月~2025年3月)の国内総生産(GDP)成長率は前年度比6.5%、年間GDP総額は約562兆1,586億円と過去最高を記録した(インド、2024年度のGDP成長率は6.5%/ジェトロ ビジネス短信)。

こうした中、Kadence International (Thailand) Co., Ltd.は2025年7月15~28日に、日本、インド、タイを含むアジア6ヵ国において、20~69歳の有職者男女1,200人を対象に「アジア6ヵ国における消費実態・生活意識調査(2025年)」を実施した。調査結果からは、経済低迷が指摘されるタイとは対照的に、インドの旺盛な消費意欲と成長の勢いが浮き彫りとなっている。

本記事では、同調査の結果の一部を紹介しながら、インド経済が具体的にどのような側面で勢いを増しているのかを読み解いていく。

タイの月給平均額はアジア4ヵ国平均を上回る

この調査は、日本、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピン、インドの6ヵ国において、20~69歳の有職者男女(各国200人、男女均等割付)を対象に実施された。調査対象者の職業は、いずれの国でも過半数がフルタイムワーカーで、自営業・フリーランス、役員・経営者、専門職、無職・リタイア層も含まれている。

タイの200人の内訳を見ると、フルタイムワーカーが59.5%と最も多く、自営業・フリーランスが18.0%、無職・リタイアが13.5%、役員・経営者が8.0%を占めた。

調査で「1ヵ月あたりの収入」について尋ねたところ、タイでは「10~19万円」と回答した人が39.5%と最も多く、「10万円未満」が38.5%、「20~39万円」が19.0%、「40万円以上」は3.0%だった。月給平均額は15万9,250円となり、アジア4ヵ国(タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン)の平均額12万563円を上回った。一方で、インドの平均額は18万8,875円と、タイをさらに上回る結果となっている。

アジア5ヵ国で外食・フードデリバリー・テイクアウトの利用率が高水準

「食事分野において、1ヵ月あたり平均でどの程度の金額を支出しているか」との設問に対し、タイでは外食・フードデリバリー・テイクアウトの利用率が98.5%に達し、日本の75.5%を大きく上回った。

また、インドネシアは100%、ベトナム、フィリピン、インドも98%以上と、日本を除くアジア5ヵ国では総じて利用率が非常に高いことが分かる。

外食・フードデリバリー・テイクアウトにかける月あたりの全体平均支出額を見ると、タイは2万4,246円と、調査対象国の中で最も高い水準となった。

出所:「アジア6ヵ国における消費実態・生活意識調査(2025年)」/Kadence International (Thailand) Co., Ltd.

衣類(ファッション)分野では、タイの利用者のうち「3,000~4,999円」と回答した人が最も多く、27.0%を占めた。月あたりの全体平均支出額は1万24円だったが、20代に限定すると1万2,083円となり、インドを除くアジア5ヵ国の中で最も高い水準に。タイでは同分野における若者の購買意欲が高いことがわかった。なお、インドの全体平均支出額は1万9,005円と、タイのほぼ倍だった。

出所:「アジア6ヵ国における消費実態・生活意識調査(2025年)」/Kadence International (Thailand) Co., Ltd.

美容分野も衣類(ファッション)分野と同様の傾向が見られた。タイ全体の平均支出額は8,763円と突出した数字ではなかったが、20代に限ると平均支出額は1万277円と、インドを除くアジア5ヵ国の中で最高水準だった。インドの全体平均支出額は1万1,508円、20代の平均支出額は1万2,151円だった。

車・バイク分野で特に際立つインドの高い購買力

車やバイク(ローン返済等を含む)分野では、タイの利用率は64.5%と突出して高い水準ではないものの、月あたりの全体平均支出額は2万円を超え、インドを除くアジア5ヵ国の中で最も高い結果となった。

一方、調査対象国の中で唯一インドは全体平均支出額が2万6,000円を超え、さらに20代に限定すると3万3,190円に達した。若年層においても高額な支出が確認され、インド市場の旺盛な購買力がより一層際立つ結果となっている。

特に20代で高い支出額が確認されたことは、将来的な買い替え需要や上位モデルへの移行余地の大きさを示唆しており、自動車関連産業にとっては中長期的な成長市場としての魅力をある程度裏付ける結果といえるのではないか。

出所:「アジア6ヵ国における消費実態・生活意識調査(2025年)」/Kadence International (Thailand) Co., Ltd.

タイとインドにみられる強いハングリー精神

調査では、対象者のキャリアにおける価値観についても質問している。「経済的に豊かになれるようキャリアアップしたい」と回答した人(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計)は、日本が45.0%にとどまったのに対し、ベトナムは89.5%、インドネシア、タイ、フィリピン、インドの4ヵ国はいずれも90%を超えた。

また、「社会的ステータスを高めることは自分にとって重要である」と回答した人(同上の合計)を見ると、日本は40.5%と低水準だった一方、フィリピンは69.0%、ベトナムは71.5%、インドネシアは78.5%と高い数値を示した。中でも、タイは82.0%、インドは84.5%と、他国と比べても際立つ結果となっている。

出所:「アジア6ヵ国における消費実態・生活意識調査(2025年)」/Kadence International (Thailand) Co., Ltd.

日本との差は歴然だが、アジア諸国の中で見ても、タイとインドでは経済的成功や社会的上昇を強く志向する、いわゆる「ハングリー精神」が特に強いことがうかがえる。

「景気が良いと感じる」タイは36%、インドは86%

「現在、景気が良いと感じる」と回答した人(同上の合計)の割合を見ると、日本は11.0%と最も低く、次いでタイも36.0%と低水準にとどまった。これに対し、インドは86.0%と突出して高く、他の5ヵ国と大きくかけ離れた結果となっている。

出所:「アジア6ヵ国における消費実態・生活意識調査(2025年)」/Kadence International (Thailand) Co., Ltd.

「経済的な理由から、結婚や家庭を持つことに不安を感じる」と回答した人(同上の合計)の割合は、タイが76.0%と調査対象国の中で最も高かった。将来への不安の強さがうかがえ、この傾向は少子化という社会課題とも無関係ではないだろう。ちなみに、インドは55.5%にとどまっている。

こうした結果から、「意欲は高いが景況感は低いタイ/意欲も景況感も高いインド」という対比が、より立体的に見えてくる。

「有望国・地域ランキング」インドが4年連続で首位

同調査の対象人数は各国200人と規模が大きいものではないが、インドの旺盛さを数値で示すデータは、他にもある。株式会社国際協力銀行(以下、JBIC)が1989年から毎年実施している日本企業向けの「海外直接投資アンケート調査結果」によれば、「有望国・地域ランキング(製造業)」においてインドは4年連続で首位を維持している。

2025年度の同調査では、「今後3年程度の有望な事業展開先」として、インドが60%を超える製造業企業から支持を集め、引き続きトップの座を守った。次いで、米国(投票率:28.1%)、ベトナム(同:25.1%)、インドネシア(同:22.2%)、中国(同:16.6%)、タイ(同:15.1%)と続いた。

JBICは「これまで有望国として票を集めていたASEAN主要国は、経済の落ち込みや他国企業との競争激化も背景に中期的に得票率が低下傾向にある」と分析している(わが国企業の海外事業展開に関する調査報告/JBIC)。

インド市場を戦略に組み込むことが鍵

今回の調査からは、消費支出、キャリア観、景況感のいずれにおいても、インドの勢いが数値として明確に浮かび上がった。一方、タイは依然として消費水準や支出額では一定の存在感を保つものの、景況感や将来不安の強さが足かせとなり、勢いという点では陰りが見える。

消費者マインドと企業の投資先評価の双方でインドが高く評価されている現状は、インド市場が「期待」から「現実的な成長市場」へと移行しつつあることを示している。今後は、タイ市場をどう深掘りするかと同時に、インドを中長期戦略にどう組み込むかが、日系企業にとって重要な検討課題となりそうだ。

THAIBIZ編集部
白井恵里子

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