カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2015.05.05
タイ中央銀行が発表した2015年2月の重要な経済指標によると、タイの景気は、引き続き緩やかに回復しています。民間支出は横ばいで、家計と企業は依然として支出に慎重になっています。中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)の需要低迷で輸出も落ち込みました。一方で、観光業は成長が持続し、国内経済をけん引しています。
2月の民間消費は前年同月比で2・6%下落しました。コメとゴムの価格低下で農家収入が伸びなかった点や、家計債務負担が高水準であること、消費者信頼感が下落していることなどが背景にあります。非耐久財への消費は縮小し、耐久財の消費も低迷を続けました。
一方、民間投資は1月の前年同月比0・2%減から同0・5%増となり、マイナス成長からややプラス成長に転じました。国内と海外の経済の回復が遅れていることで、過剰設備の状況が発生しています。また、政府部門のインフラ事業の投資も始まったばかりで、企業部門は大型公共事業の状況が明確になるまで様子見の姿勢です。
2月の輸出は、前年同月比6・0%減の170億6900万米ドルとなり、前月から収縮しました。中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の景気減速に加え、中華圏で春節(旧正月)があったことが影響しました。また、一般特恵関税(GSP)の打ち切りを前に欧州向け輸出が加速していた反動もありました。しかしながら、米国とCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)向け輸出は、順調に拡大しています。
商務省が発表した2015年3月の貿易統計によると、タイの輸出額(約188億8640万米ドル)は前年同月と比べ、2月の6・1%減から4・4%減になり、3ヵ月連続でマイナス成長となっています。主要輸出先国の経済回復が予想より遅れたことや、石油や天然ゴムなど農産物の価格が低迷していることなどが、タイの輸出低迷につながっています。
品目別に見ると、農産物・加工品では、天然ゴムが前年同月比27・9%減、コメが同0・9%減となりました。主要工業製品では、自動車・部品が同5・0%増、コンピュータ・部品が5・0%減となったものの、電子回路が同10・5%減少しました。日・欧・中向けの輸出は引き続きマイナス成長となっています。しかしながら、米国向けの輸出は同5・6%増となり、8ヵ月連続で増加しました。
工業生産に関しては、1月の前年同月比1・3%減から同3・6%増となり、マイナス成長からプラス成長に転じました。特に衣料が6・8%、飲料・食品が5・5%と前月比で高い伸びを示しました。事業者がこれより前に大幅に在庫を放出していたことで、在庫投資のための生産が増加しました。
1月にタイを訪れた外国人観光客は268万9000人で、前年同月と比べ29・6%増加し、5ヵ月連続でプラス成長となりました。前年同月の政治デモの影響で比較ベースが低くなっていたことが一因ですが、中国とマレーシアからの観光客が顕著に増加しています。
商務省が発表した2015年3月のヘッドライン・インフレ率は、2015年2月の前年同月比0・52%減から同0・57%減となり、3ヵ月連続で減少し、過去5年6ヵ月で最も低い水準となりました。その主な原因は、原油価格の下落です。しかしながら、原油価格が安定し始めたことおよび干ばつの影響を受けた野菜・果物価格が上昇したことにより、今後のインフレ率はさらに安定化する可能性があります。
品目別にみると、食品・飲料は全体で前年同月比1・25%増となり、4ヵ月連続で鈍化しました。卵・乳製品がマイナス3・04%となったほか、果物・野菜もマイナス0・06%と前年同月を下回りました。非食品では運輸・通信のうち石油燃料がマイナス19・49%となりました。
一方、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比1・31%増となり前月の同1・45%増を下回りました。
バーツ相場の変動については、タイバーツは、2015年3月末には1ドル=32・54バーツの終値をつけ、2015年2月末の終値1ドル=32・32バーツから軟化する傾向を見せました。米国の労働市場の指数が市場の予想を上回ったこと、およびタイ中央銀行が3月11日、政策金利(翌日物レポ金利)を0・25%引き下げ、年1・75%にすると決定したことにより、3月前半のタイバーツはやや軟化しました。
THAIBIZ編集部
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