愛の告白と役所への申請の共通点

カテゴリー： ビジネス・経済

連載： BizWings - 中小企業経営論

公開日 2025.07.09

タイでビジネスをするにあたって、日系企業の皆さまにぜひ知っていただきたい考え方があります。それは、「愛の告白と役所への申請は、実はとてもよく似ている」ということです。つまり、「あれこれ悩むより、まずはやってみないと分からない」という姿勢が、とても大切だということです。

コンサルタントという立場上、私はよく日系企業の方から「この申請、通りますか」「通る確率はどのくらいですか」といったご相談を受けます。

内容はさまざまで、税務の還付申告、BOI申請、外国人事業ライセンス（FBL）の取得などが代表例です。特にFBLに関しては、申請前どころか、申請を検討するかなり手前の段階でお問い合わせをいただくことがよくあります。

例えば、「外国人事業ライセンスを取って行いたい事業がある」「その事業について、ある顧客と契約を結ぶ予定がある」「その契約のドラフトをこれから作成し、条件を話し合う予定である」「その前にFBLが取れるか知りたい」という流れです。

つまり、まだ取引相手が誰であるかも、契約も確定しておらず、さらには取引条件も固まっていない状態で「この内容でFBLは取得できますか」と聞かれることがあるのです。さらに一歩進んで、「この状況で、役所にどう思うか聞いてきてほしい」といったリクエストをいただくこともあります。

しかし、タイにおいて申請とは、あくまで「実際に提出されたものに対して審査される」ものです。たとえどれほど具体的に構想が練られていても、それが「予定」である限り、役所は真剣に取り合ってはくれません。

そして、われわれコンサルタントができることは、せいぜい「過去の傾向からすれば」「似たようなケースではこうだった」といった参考情報をお伝えすることだけです。誠実であろうとするほど、「絶対に通ります」とは言えないのです。

これは、愛の告白ととてもよく似ています。例えば、あなたがある女性に想いを寄せているとします。そして、彼女と知り合いである私に、「僕は彼女と付き合えると思うか」と聞いてくる。私が彼女の好みを知っていたとしても、「絶対に付き合える」とは言えません。

そう伝えると、今度は「では彼女に、私のようなタイプの男性と付き合えるか聞いてほしい」と頼まれます。ですが、それもまた違います。彼女が「そのタイプの男性と付き合うか」と、「あなたと付き合うか」はまったく別の話だからです。

つまり、告白も申請も、「実際に本人が本気で行動に移して初めて、相手はそれを真剣に考える」のです。書類を出すこと、言葉を伝えること、そして何より自ら動くことが、すべての出発点です。もちろん、すべてが一回でうまくいくわけではありません。

申請が通らないこともあれば、告白がうまくいかないこともあります。しかし、行動に移してみて初めて分かることも多く、一度目で通らなくても二度目には通ることもあるかもしれません。

タイでのビジネスは、柔軟性と行動力が成功のカギになります。「予定」の段階でただ悩み続けるのではなく、しっかり準備をしたうえで、ぜひ「実際の行動」に踏み出してみてください。それが、告白でも申請でも、一番大事なことだと私は信じています。

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