公開日 2024.01.22
TJRIは昨年11月21日、タイと日本の企業間の協業・新規事業のチャンス創出を目指す「TJRIビジネスミッション」で、公共部門や民間部門の生産性向上に取り組んでいるタイ生産性研究所(FTPI)を訪問した。FTPIは組織の競争力向上を促進するための表彰制度である「タイ経営品質賞(Thailand Quality Award:TQA)」の主要な運営機関の一つで、今回のミッションでは、FTPIがその活動内容やTQAについて説明した後、日系企業などからの参加者(18人)間でのネットワーキングも行われた。
目次
今回のミッションではまず、スワンチャイ・ローハワタナクン所長がFTPIについてレクチャーした。FTPIは工業省傘下の機関として1994年7月1日に発足、今年がちょうど創設30周年となる。タイの公的機関や外資系も含む民間企業、教育機関など、すべての分野の組織の生産性を高め、持続的な成長につなげるために、さまざまなサービスを提供。同所長は「品質」「生産性」「持続可能性」「グローバル化」の4つの課題の向上を目指すとした上でFTPIのミッションとして、①人と組織の能力向上②企業の生産性向上③イノベーションの強化④品質改善によるタイ製品とサービスの信頼構築⑤生産性向上を通じてタイの持続可能な社会経済発展への貢献−の5つを挙げた。
スワンチャイ所長は続いて、FTPIのサービスについて次の通りだと紹介した。
(1)コンサルティングサービス:幅広い専門知識を持つ経験豊富なコンサルタントによるコンサルティング、コーチング、トレーニング、組織アセスメントのサービスを提供している。組織は以下の4部門に分かれている
・生産性向上部:生産管理のコンサルティングサービス
・経営管理とサステナビリティ部:ISOやGMP/HACCP、RDIMS などの国際規格を対象とするコンサルティングサービス
・人材育成部:チームビルディングなどの人材に関するサービス
・経営支援課:インハウス研修、「タイ首相産業賞」の募集(生産性向上分野と、新Sカーブなどの未来のサービス産業や製造業分野)
(2)研修サービス:経験豊富なスペシャリストによる製造業とサービス産業の両分野のトレーニングサービス
(3)セミナーと視察研修:海外研修など
(4)研究サービス:民間組織向けのプロセス・ベンチマーキングなどの調査研究。さらに、工業省の政策に貢献するプロジェクト、例えば、「インダストリー4.0」のロールモデルを構築するプロジェクトなど。インダストリー4.0を考案したドイツのフレームワークに基づき、タイに適応させたもの。また、FTPIのプラットフォーム(https://piu.ftpi.or.th/)には、タイの生産性に関する情報を網羅したデータベースもある
タイ経営品質賞(TQA)は、優れた経営を行っている組織を表彰する。基準・評価プロセスは、米国のマルコム・ボルドリッジ国家品質賞(MB賞)をモデルに設定したため、国際的な指標になる。リーダーシップ、戦略計画、顧客、情報・分析、人材、オペレーション設計、業績という組織運営に重要な7つの規準を評価する。同賞の目的は国際基準を活用して、組織の経営品質を高めることだ。
TQAには 「TQC」「TQC+」「TQA」、そして最新の賞である「TQA Global」の4つがある。これらを申請した組織は強みと改善すべき点を示した自らの業務を反映したフィードバック・リポートを作成する。このリポートで自らの組織が何を改善すればさらにレベルを高められるかが分かるようになる。TQAは20年の歴史があり、毎年約30の組織が応募。これまでTQAを受賞した組織は9、TQC+は19、TQCは121だという。
FTPIも加盟するアジア生産性機構(APO)は1961年に設立され、日本やタイ、シンガポール、韓国などの20カ国が加盟している国際機関だ。APOは、加盟国間の生産性向上を推進することを目的としており、セミナーの開催や海外視察などの「APOプログラム」や、YouTubeを通じた知識提供する「APO生産性トーク」など、知識の普及と情報の発信に取り組んでいる。
スワンチャイ所長のレクチャーの後、行われたQ&Aセッションは次の通り。
Q:どのような組織がTQCやTQAを受賞したか
A:TQAのフレームワークは民間企業のみならず、教育機関、病院、銀行まですべての組織に活用できる。TQC受賞組織はチェンマイ大学や商業施設運営のMBK社などで、TQC+受賞組織は、PTTの子会社の液化天然ガス(LNG)事業を行うPTTLNG、マヒドン大学、タイ輸出入銀行(EXIM)、パヤタイ2病院などだ。TQA受賞組織はトゥルー・コーポレーションの携帯電話事業やCPオールの子会社のカウンターサービス、バンチャク・コーポレーションなどだ。
Q:タイ人と日本人の両方の社員がいる組織に対し、FTPIはタイ人と日本人の間にギャップを埋め、生産性向上などのトレーニングを提供できるか
A:FTPIはタイ国内におけるすべての組織にトレーニングを提供することができる。さまざまなコースと専門家を持っているので、要望に応じてカスタマイズすることも可能だ。
Q:どのような人をFTPIの研修に送り込むべきか
A:役職を問わず、好奇心を持ち継続的な努力ができる人だろう。短期間タイに駐在する日本人の場合はリーダーシップがある人が良い。タイ人の場合は社内で知識を共有するために、チームとして参加すれば良い。受賞した会社は社員が知識を身につけられるように、毎年社員をFTPIの研修に送り出している。
TJRI編集部
タイのオーガニック農業の現場から ~ハーモニーライフ大賀昌社長インタビュー(上)~
バイオ・BCG・農業 ー 2024.11.18
タイ農業はなぜ生産性が低いのか ~「イサーン」がタイ社会の基底を象徴~
バイオ・BCG・農業 ー 2024.11.18
「レッドブル」を製造するタイ飲料大手TCPグループのミュージアムを視察 〜TJRIミッションレポート〜
食品・小売・サービス ー 2024.11.18
第16回FITフェア、アスエネ、ウエスタン・デジタル
ニュース ー 2024.11.18
法制度改正と理系人材の育成で産業構造改革を ~タイ商業・工業・金融合同常任委員会(JSCCIB)のウィワット氏インタビュー~
対談・インタビュー ー 2024.11.11
海洋プラごみはバンコクの運河から ~ タイはごみの分別回収をできるのか ~
ビジネス・経済 ー 2024.11.11
SHARE