自動車部品メーカーのタイルンの工場を見学 ~TJRIミッションリポート~

自動車部品メーカーのタイルンの工場を見学 ~TJRIミッションリポート~

公開日 2023.11.21

TJRIは9月27日、タイと日本の企業間の協業・新規事業のチャンス創出を目指す「TJRIビジネスミッション」で、タイ自動車部品メーカーのタイルン・ユニオン・カーのバンコクにある本社および工場を訪問した。同社は自動車部品製造、自動車や産業用機械の組み立て事業を展開するほか、電気自動車(EV)バリューチェーンへの参入、自社ブランド製品の製造や各種サービスなど事業を多角化していく方針で、協業パートナーも募集している。ミッションでは本社内での会社説明会の後、日本企業とのネットワーキングも行われた。

改造車からEVへ、日本企業と協業

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『タイルングループの事業構造』出所: Thai Rung Union Car Public Company Limited

今回のミッションでは工場見学の前にまず、タイルンの経営戦略・管理部長のゴラウット・パオエンチョーク氏がタイルンの事業概要をレクチャーした。

タイルンの経営戦略・管理部長のゴラウット・パオエンチョーク氏
タイルンのゴラウット経営戦略・管理部長

「タイルングループは過去56年間、自動車産業にかかわってきた。特にメーン事業は自動車部品製造と自動車組み立てで、2022年の売上高は約30億バーツだった。タイルンユニオンカーを中核に子会社が幾つかあり、バンコクの本社工場では研究開発、各種金型・治具(JIG)、組み立て、塗装などをやっており、日本との協業では現在、デルタ工業(広島県安芸郡府中町)と合弁で自動車シート生産事業を行っているほか、共和産業(石川県白山市)とは『共和タイルン』というキャビン製品製造販売会社を設立。さらに、トヨタ自動車グループと『タイオートコンバージョン』という車体生産の合弁会社を持っている」と説明。

そして主な事業分野と顧客は次の通りだと説明した。

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『タイルンの製品概要』出所: Thai Rung Union Car Public Company Limited

(1)自動車:製造のあらゆる段階で事業を行っている。自動車の研究開発や世界の有名ブランドのプロトタイプ改造車の製造。金型製造、部品製造とスタンピング、組み立て、電着塗装(EDP)など。例えば、ボルボトラックとは金型の共同開発と製造、ボディー部品、スタンピング事業を行った。さらに、日産自動車の輸出向けのピックアップトラック「ナバラ」のボディーを月間4000台ほど製造。

(2)機械:建設機械の研究開発から組み立て、塗装。例えば、コマツとコベルコの掘削機を製造。

(3)バイク:高付加価値製品であるトライアンフのビックバイク用のガソリンタンクを製造。

(4)電気自動車(EV):日本の小型EV「FOMM」の金型製造と治具、電動トゥクトゥク「MuvMi」を1000台以上製造。

(5)電子:部品の製造とスタンピング。

(6)その他:自社製品のピックアップトラックや電動バス、トヨタ自動車のエンジンとシャシを利用した特種用途自動車「TRトランスフォーマー」などの開発・製造。

専門知識を活用し、事業を多角化

タイルンは今後、次の4つの分野での事業展開を重視するという。

(1)高付加価値製品の強化。パートナーを通じて、社内の技術、ノウハウ、専門知識を最大限に活用する。例えば、産業機械の製品範囲を拡大し、輸出を促進。

(2)EVバリューチェーンに参入し、各種EVの組立・塗装にフォーカス。特に金型と部品の軽量素材の製造能力を強化。

(3)自社製品とサービスを拡充。防弾装甲車やミニバス、ピックアップトラックなどの新製品を開発。また、パートナーとともに顧客の経験を高めるソリューション・サービスを展開。

(4)環境に配慮したリーン(lean)生産方式で製造工程を高度化し、自動化や革新的テクノロジーを活用。

川上から川下まで対応可能

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『タイルンが求めるパートナー企業像』出所:Thai Rung Union Car Public Company Limited

ゴラウット氏はパートナー募集について、「日本企業とのコラボレーションでは、優先分野は次の3つだが、その他の分野でも協業の可能性はある」と強調した。

(1)産業機械や商用車を中心に、タイ国内市場および輸出市場向けで、タイでの生産能力の拡充を希望する企業。

(2)部品の軽量化の製造と組み立てに関するノウハウと技術を持つパートナー。

(3)商用車、オフロード車、電動産業機械関連と、エコシステムに関するノウハウを持つパートナー。

さらに、同氏は「われわれはタイ国内にはすでに幅広いネットワークも持っている。幅広い研究開発、製造、塗装、販売など川上から川下対応ができ、日本企業との提携を歓迎する」と訴えた。

共和タイルンの製造現場も見学

説明会終了後、参加者はタイルンの部品製造工場に移動し、研究開発、金型製造、スタンピング、組み立て、EDPとスプレー塗装、トリミング、「共和タイルン」の産業機械の製造、電動バスの組み立てなどのエリアを見学した。

Thairung-mission
Thairung-mission

工場を案内した営業副部長のサクチャイ・コンオーン氏は「以前、共和産業がわれわれの工場を見学した際に、タイでの製造ポテンシャルと人件費の安さに興味を持ち、提携することになった。産業機械のほか、ヤンマーの農業機械用キャビンの製造や、組み立て行っている」と報告。さらに塗装工場では「われわれはタイではまだ少ない幅2.3メートル、長さ7メートルのバス全体をめっき加工できる電気めっき塗装機を設置している」とアピールした。

生産方式では柔軟性を重視、少量生産も可能

工場見学終了後、タイルンのソムポン・パオエンチョーク社長が参加して、Q&Aセッションが行われた。

会社の特徴と経営理念は

われわれは顧客の利益を優先したビジネスを行っている。また、事業判断では柔軟性を重視し、顧客は少量でも新製品を発売することができる。この強みを生かした協業パートナーを探している。われわれは生産方式を柔軟に対応できるので、投資額についても相談に応じられる。

医療機器も生産可能か

以前はプラスチック製の歯科用テーブルと治療用チェアを生産した経験がある。生産量は多くないが、高い技術を必要とする製品も受注している。

タイルンのソムポン・パオエンチョーク社長
タイルンのソムポン社長

日本企業と中国企業との協業では違いがあるか

日本企業との関係は父の時代から60年以上続いており、さまざまな提携や協業をしてきた。また、私は日本に留学していたので、日本人の考え方を理解し、ビジネスの面でも協力しやすかった。ただ、個人的な意見として日本企業はスピードと柔軟性がより必要だろう。また、タイのパートナーを通じてネットワークを構築し、タイにあるリソースをもっと活用するようアドバイスしたい。

一方、中国とも25年前から取引をしてきた。日本との大きな違いは、鎖国して成長してきた国なので、中国独自の考え方が強く、海外の顧客とは考え方のギャップがある。協業や提携などでも難しい印象を持っている。

▶︎▶︎▶︎タイルンのパートナー募集内容についてはこちら

▶︎▶︎▶︎タイルンのインタビュー記事はこちら

TJRI編集部

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