タイの新たな成長産業「バイオテック」最前線

THAIBIZ No.150 2024年6月発行

THAIBIZ No.150 2024年6月発行味の素が向かう究極のバイオサイクル

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タイの新たな成長産業「バイオテック」最前線

公開日 2024.06.07

近年、バイオテックがタイの新たな成長分野として注目を集めている。中国系医療バイオテック企業がタイ証券取引所(SET)に初上場を果たしたほか、複数のタイの大手企業が研究開発や事業拡大に向け積極的に取り組んでいる。

中国バイオテック企業がSETに上場

中国のバイオテック企業、华大基因(BGI)の子会社であるBangkok Geonomics Innovation PCL. (BKGI)が、今年3月にSETに上場を果たし、大きな話題を呼んだ。タイの証券取引市場でバイオテック企業が上場したのは初だったからだ。

BGIは、ヒトの遺伝子と疾患原因の関係究明や、微生物や動植物と環境エネルギーの研究等への応用など、ゲノムシーケンス解析やプロテオミクスサービスを提供するグローバル企業だ。BKGIは今回の上場による資金調達で、今年は30%以上の売上増を見込んでいるという。

さらにタイの病院との提携交渉も積極的に推進し、今後はM&Aも視野に入れた事業拡大を目指している。

タイ大手企業が本格的にバイオテック分野へ進出

タイ石油公社(PTT)は2022年5月17日、デンソーとの農業用ハウスの環境最適化技術を活用したプロジェクトを発表。ステビアと黒ウコンを栽培し、それらを原料とした製品を「Natural Nxt」ブランドとして販売することを目指し、すでに昨年 12月からステビアシロップをPTTグループが運営する「カフェ・アマゾン」で販売を開始。現在もステビアの研究開発を進めているほか、新規開発のパートナーも募集中だ。

一方、エネルギー大手のバンチャック(BCP)は米国のバイオ製品開発会社マナス・バイオとの合弁でタイにバイオ製品の製造工場を建設し、バイオ技術を活用した新規事業に乗り出している。BCPの子会社BBGIは、2020年に8億バーツ以上を投じてマナス・バイオの株式5%を取得し、合弁会社WINイングレディエンツを設立。

マナス・バイオが保有する先端技術を活用し、従来のバイオディーゼル・エタノール製造から、より高付加価値のあるバイオベース製品製造へと事業を拡大したい考えだ。

BCG経済モデルでタイの本来の強みを

タイ政府は2021年1月に「バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデル」を国家戦略として承認。これは、タイの豊富なバイオ資源を高付加価値製品に転換し、新たな産業を創出することを目的とし、自動車産業などの「低コストで安定した製造拠点」から脱却するための戦略だ。

この国家戦略がタイの大手企業のバイオテック分野への進出を後押しし、タイの経済を強化する重要な要素となっている。

バイオテック分野で際立つ日本企業の強み

日本では元来、味噌や酒、醤油など食文化由来の発酵の技術があるため、酵母菌や酵素の研究開発においては世界でも進んでおり、日本企業はバイオテック分野で強みを持っていると言える。

例えば、明治のLB81乳酸菌やハウス食品のクルクミン、グリコのGABA、SK-IIのピテラなど、「有効成分」を製品名などに全面的に押し出したものも多く、「成分 = 目に見えない小さなものの働きに対する研究」は日本人が得意とする分野だ。

互いの強みを活かした日タイのコラボ

タイには研究がほとんど進んでいない植物や、主要な農作物の加工工場から大量に出る副産物が数多く存在している。これらの素材に対する研究と製品開発が今後の課題であり、タイの大手企業が積極的にバイオテック関連の新規事業に参入することで、タイのバイオテック産業は今後ますます成長していくだろう。

また、タイの豊富なバイオ資源と日本企業が持つ先端技術によるコラボレーションは、双方の強みを活かした革新的なバイオテック製品の開発につながる可能性をおおいに秘めており、新たな日タイの成長産業として期待される。

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Mediator Co., Ltd.
Chief Executive Officer

ガンタトーン・ワンナワス

在日経験通算10年。埼玉大学工学部卒業後、在京タイ王国大使館工業部へ入館。タイ帰国後の2009年にMediatorを設立。政府機関や日系企業などのプロジェクトを多数手掛けるほか、在タイ日系企業の日本人・タイ人向けに異文化をテーマとしたセミナーを実施(延べ12,000人以上)。2021年6月にタイ日プラットフォームTJRIを立ち上げた。

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