THAIBIZ No.151 2024年7月発行スマートシティ構想で日タイ協創なるか
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カテゴリー: ビジネス・経済
連載: Business Topics in Thailand
公開日 2024.07.10
5月25日にタイの東北地方コーンケーン県で開催されたビジネス・カンファレンス「The Secret Sauce Summit 2024 – Khonkaen : Unleashing Hyper-Growth」は、地方都市の持つポテンシャルを改めて浮き彫りにした。同イベントを主催したのは、タイの経営層に支持されているオンラインメディア「ザ・スタンダード(The Standard)」だ。バンコクを拠点とする同メディアが初めて地方都市で開催したことでも注目を集めた。
コーンケーン県に拠点を置くKhon Kaen Fishing Net Factory Co., Ltd. (KKF)は、漁網の世界シェアナンバーワンを誇る企業だが、ColgateやSystemaなど歯ブラシの毛を供給するほか、物流システムの開発、自動化、代替エネルギー、不動産、研究開発サービスなど、多角的な事業内容が紹介された。
また、コーンケーン県最大規模を誇るトンターン市場を開発した地元デベロッパーFary Warasiri Co., Ltd.や、中央政府からの予算に頼らず自ら資金を調達し都市開発を行うKhon Kaen City Development(KKTT)Co., Ltd.などが紹介され、バンコク以外の地方都市にも有力企業が多く存在し、潜在的なビジネスチャンスの新たな可能性を示した。
タイの地方都市におけるビジネスチャンスは、コロナ禍で一層明らかになった。タイ中央銀行(BOT)の報告によると、コロナのパンデミックによりバンコクで職を失った東北地方出身のタイ人約40万人が地元に戻ったという。その後、コロナが収束してバンコクに戻ったのは8万人に過ぎず、残りの32万人は地元で職を見つけ、そのまま地元に残ることを選んだ。このことからも地方都市でのビジネス機会が増加していることは明らかだ。
コーンケーン県では100軒以上の新しいカフェが開業し、ウドーンターニー県では月間で70~80軒の飲食店が新規開業している。さらに、ミシュランガイドに紹介されるようなファインダイニングが地方都市でも流行するなど、地方の需要はいま大きく変化している。
バンコク周辺や主要な工業団地が飽和状態に近い現在、首都だけでなく地方都市への進出が鍵となる。地方都市のポテンシャルを考える際には、観光都市としてではなく、ビジネス視点で捉える必要がある。
例えば、人口100万人以上で地元民の潜在的な需要を持ち、日本企業が比較的進出しやすい産業が存在する都市として、タイ第二の都市ナコーンラーチャシーマー県(人口263万人、通称:コラート)やイサーン地方の最大都市ウボンラーチャターニー県(人口187万人)、東西経済回廊と南北経済回廊の交差点に位置するコーンケーン県(人口178万人)をはじめ、チョンブリー県(人口159万人)、ブリーラム県(人口157万人)、ウドーンターニー県(人口156万人)、ナコーンシータマラート県(人口154万人)などが挙げられる。
地方都市への進出は新たなビジネスチャンスをもたらす可能性がある一方で、地方でのビジネスは一筋縄ではいかない。地方でビジネスを成功させるには、地元の信用や人的ネットワークが必要不可欠であり、それを無視しての成功は難しい。カンペーンペット県に進出した「AJINOMOTO」やランプーン県に進出した「MURATA」は、新たな労働市場を作り、地元民との良好な関係を築きながら、成功した好例といえる。
半世紀以上かけて多くの日本企業や日本人の先人たちがタイで築いてきた信頼は、今もタイでのビジネス展開において大きな資産となっている。欧米や中国企業などの派手さはないが、じっくりと関係性を構築する日本企業や日本人は地方のポテンシャルを活かし、新たなビジネス創出で力を発揮できるのではないだろうか。
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Mediator Co., Ltd.
Chief Executive Officer
ガンタトーン・ワンナワス
在日経験通算10年。埼玉大学工学部卒業後、在京タイ王国大使館工業部へ入館。タイ帰国後の2009年にMediatorを設立。政府機関や日系企業などのプロジェクトを多数手掛けるほか、在タイ日系企業の日本人・タイ人向けに異文化をテーマとしたセミナーを実施(延べ12,000人以上)。2021年6月にタイ日プラットフォームTJRIを立ち上げた。
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