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カテゴリー: 会計・法務
連載: New*GVA / TNY法律事務所 – タイビジネス法務
公開日 2020.12.31
はじめに
戦後最大の危機と叫ばれ、「3密」という言葉が日本の流行語大賞になるという、新型コロナウイルスの猛威にさらされ続けた2020年が終わり新たに21年を迎えた。
日本でもタイでも、年始の商戦として商品販売において景品等を付与するキャンペーンは多いと思われるが、このようなキャンペーンについては各国に規制が存在する。
そこで今回はタイの商品販売において、企業が懸賞を実施する場合の規制について確認する。
商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供することを「懸賞」という。
日本では事業者が過大な景品を提供することにより、消費者が惑わされて質が良くなかったり割高なものを買わされてしまうことを防ぐため、「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)という法律がルールを与えている。
景品表示法では、一定の類型毎に景品の限度額が定められており、企業が過度な景品を付与することがないように規範を示している。
他方、タイでこのような懸賞を行う場合に最も気を配る必要があるのは「賭博法」である。賭博と聞くと意外に思われるかも知れないが、賭博法第8条は次のようなルールを定める。
いかなる方法であれ、事業又は職務の過程において、偶然を利用して景品や賞品を手配する場合、事前に担当官の許可が得られなければならない。
懸賞は「商品をお買い上げの方から抽選で○○名に」などという形で、景品を取得するために偶然性を利用する場合が多い。そのため、タイにおける多くの懸賞は本条の定めに従って、事前に監督官庁(Department Of Provincial Administration)の許可を得て実施されなければならない。
なお、古い判例(1490/2479)には店舗に来店した顧客全員(商品購入の有無を問わず)に番号を自由に決めてもらい、店舗が事前に決めた番号に合致する数字を言い当てた者に対し店舗が景品を付与する形態の懸賞が、「賭博に該当しない」と判断したものがあるようである。
しかし現在のところ、監督官庁は偶然によって景品を付与する行為を商業目的で行うのであれば、仮に消費者が何らの支出を伴わなくとも事前に許可を要すると回答している。
懸賞を実施する際には、賭博法のみならず「消費者保護法」にも配慮する必要がある。この法律は、日本の景品表示法と同様の趣旨で、消費者にとって公正ではない態様での広告手法を禁止している。
そして、同法に基づいて制定された省令第5号によれば、景品提供を行うには景品提供における方法・条件、キャンペーン期間、景品の種類・価値、景品提供の場所などを表示しなければならないとされている。
以上の通り、タイは景品の付与について事前の許可や詳細な情報提供義務を課すなど、日本とは異なる規律を採用している。懸賞を実施する際には、これらのルールに十分に注意していただきたい。
GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
代表弁護士藤江 大輔
2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所のパートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。
URL : https://gvalaw.jp/global/3361
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THAIBIZ編集部
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