ベトナムにおける外資によるM&Aの注意点 ②

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    ベトナムにおける外資によるM&Aの注意点 ②

    公開日 2020.03.05

    12月号に引き続き、ベトナムのM&Aについて解説します。既存のベトナム企業を買収することで大きく成長している日系企業も多いですが、M&Aにあたっては次の4点を留意しておくべきでしょう。

    1.合弁会社の新規設立も可能

     既存企業をそのまま買収すると、既存の法務・税務上のリスクを引き継ぐことになります。一方で、新規に合弁会社を設立すれば、そのリスクはなくなります。ベトナム側と合弁企業を営みたい場合、新規に合弁会社を設立し、土地や設備などは現物出資するということも可能です。

    2.DDを入念に行い慎重に検討

     ベトナムではローカル企業の管理が杜撰な場合も多いです。それらを日系が買収して外資企業となれば、税務調査やその他の当局側の管理が厳しくなる場面も多く、リスクが顕在化しやすくなります。入念なデュー・デリジェンス(DD)によって法務・会計・税務の調査をしっかり行うべきです。

    3.M&Aが時間短縮とは限らない

     M&Aの方がライセンスを取りやすい、事業の開始が早まるといった話も聞かれます。ライセンスが一地域につき一つに限られる業種で、M&Aでなければライセンスが取れない場合や、工場を買収して建屋の建築期間を短縮したいなら、この理由も合理性があります。

     もっとも、外資ではM&Aも新規設立もライセンスの審査が入るため、取得難易度に大きな違いはありません。また、M&Aは条件交渉やDDを慎重に行う分、新規設立よりも完了までに時間を要することが多いです。

    4.合弁企業との合弁契約の重要性

     M&Aに限らず新規設立でも同様ですが、ベトナム側との合弁企業となる場合、現状の関係性は良好でも将来意見が分かれたり、清算・撤退することもあります。

     また、将来的に技術だけを取得されたり、意思決定できずデッドロックとなったりするケースが散見されるため、合弁契約・定款を初期にしっかり作ることが非常に重要です。

    工藤 拓人プロフィール画像
    CAST LAW VIETNAM 代表
    日本国弁護士・ベトナム外国弁護士
    工藤 拓人

    弁護士法人キャスト・パートナー。日本国弁護士(大阪弁護士会所属)、ベトナム外国弁護士。2011年から弁護士法人キャストに参画し、2013年から中国上海、2014年からベトナムへ赴任。2015年よりホーチミン支店長、2017年より現職。ベトナムを拠点に、在ベトナム日系企業に対して進出法務、M&A、労務、知的財産、税関および不動産などの分野で幅広いサポートを行う。著書に「メコン諸国の不動産法」(共著、大成出版社)、「これからのベトナムビジネス」(共著、東方通信社)など。

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    ICONICグループは「人材サービスでグローバル化する社会を豊かにする」というミッションのもと、2008年にベトナムで創業し、現在は5ヵ国7拠点にてグローバル人材事業を展開しております。メイン事業はASEAN各国現地での人材紹介事業と組織人事コンサルティング事業。そして14年よりベトナムを中心に現地人材および、海外で働きたい日本人向けの転職サイト『iconicJob』を、19年に『iconicHRbase』をスタートいたしました。


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    THAIBIZ編集部

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